| 「洋平とクラス離れたー!!」 入学して早々、私の顔はぐっちゃぐちゃだ。 というのも台詞からして分かると思うが、大好きな洋平とクラスが見事に離れた。中学では3年間同じクラスだったというのに、やはり高校となると人数も増えてクラスの倍率は上がり、同じクラスになれるのはほぼキセキに近い。だというのに、まさかの花道と洋平は同じクラスでムキー!な私だった。 「泣くな泣くな、いつでも会いに行くからよ」 「洋平…っ!大好き!!大丈夫!私が会いにいく!!」 「よーよー相変わらずお熱いねーお二人さん」 泣きつく私の頭を優しく撫でてあやすように言う洋平がまたカッコよくて、私はがばりと抱きついた…ところに、どこかの調子乗った声。視線を向ければそこには3人の男たちがゾロゾロとガラの悪い歩き方でやってきた。 「おーお前ら、数日ぶりだな」 洋平がにっこり笑ってそう言うと、3人は声を揃えて「よう!」と答えた。 先ほどの第一声は大楠雄二と言って花道の次に身長が高い金髪が目立つ男。その隣にいるヒゲを生やした男、野間忠一郎はピカピカの高一には見えない老け顔であだ名はチュウ。そして私より少し高いくらいの低身長で肥満がヤバイ男が高宮望。これが例の桜木軍団”エトセトラ”である。 「たかみん、また幅増えてない?」 「育ち盛りだからかな!」 「縦に育ちなさいよ」 もちろん私もこの”エトセトラ”達とはそれなりに仲がいい。高宮ことたかみんのお腹をぶよぶよとつつくのが私の日課でもある。 こうして桜木軍団が揃い、いつの間にか周りからヒソヒソとされながら私たちは注目されていた。それはそうだ、いかにも不良で、しかもその中心には無駄にデカい赤頭がいるのだから。周りは避けるようにして校舎へと入っていった。 「あ、そろそろ行かなきゃ…じゃあね洋平!また後でね!花道とエトセトラも!」 「「「エトセトラ言うなー!」」」 昔からの友達も大事だが、せっかくの新しい環境なのだから新しい出逢いをするのも悪くない。洋平とクラスが離れたのだけ悲しいけど、それ以外は楽しみでいっぱいだった。 彼らと別れて、私は自分のクラスである1年10組へと向かった。 「…流川楓」 と、隣の彼はそう言った。 担任の先生がやってきて席順に自己紹介をするというお決まりのイベントがあり、生徒達は順々に名前と一言何かを言っていく。そんな私の隣の席には、教室に入ってからずっと頭を伏せて眠っている男がいた。結構ガタイいいなぁなんて思ったのが最初の印象。そして先生が入ってきてからもまだ眠っていた彼は、自己紹介の順番になってやっと目を開けゆっくりと立ち上がる。その時の彼の身長と体格が、自分のよく知る赤頭と似ていたので…少しびっくりした。あまりにシンプルな自己紹介を終え、再び彼は席について頭を伏せるのを、周りの生徒も少し驚くように見ていた。というか結構、イケメンだ。 「ねえねえ、流川くんってかっこいいよね」 「うんうん!しかも前の学校じゃ凄いバスケ選手だったらしいよ!」 入学式当日はあっという間に下校時間となるのだが、生徒たちはさっそく出来た友達とわいわいお喋りをしていた。そんな中、近くの女子の輪からそんな会話が聞こえてきて色恋話が好きな私は耳を傾けてしまう。ちなみに流川楓本人はもう居ない。 どうやら中学のバスケでは相当な名プレイヤーだとかで結構有名らしく、その時からモテモテだったそうな。けれど誰も彼が女の子と歩いている所を見たことがないとかで、かなりの堅物らしい。顔が良いということで、彼は入学早々女子からの注目の的だった。 「苗字さんいいなぁー流川くんの隣の席なんて」 「え?」 ぼーっと話を聞いていたら、いつの間にか私も話の輪に入ってたみたいでいきなり話しかけられた。廊下側の端の席に居る流川くんの隣はたった一つしかなく、それが私の席。ただの席順だが、どうやらここは良物件だったみたい。 「あーまあ確かにかっこいいよね」 「苗字さんもやっぱりそう思う?やっぱ流川くん狙うのは難易度高そう〜」 「でも私は好きにならないから安心して」 「「「え!?」」」 いつの間にか周りに流川くんを狙う女の子の輪ができていて、これでは私も流川くんスキーみたいになっている。けれどもちろん私が流川くんを好きになるはずがないので、そうケロっと言った。 「どうしてそう言い切れるの!?」 「だってあんなにかっこいいのよ!?」 「流川くんのなにを知ってるの!?」 敵が減ったんだから別にいいじゃないかと思うのに、逆に流川楓を否定されたと思った女の子たちはズイと私に圧をかけてくる。女子の団結した圧力はかなり恐ろしい。流川楓のなにを知ってるかって、いや君たちもそこまで知らないでしょうが。 「おーい名前、帰んぞー」 「あ、洋平!」 「「「え?」」」 「あー…てなわけなので、皆さんご安心を。じゃあ、また明日!」 ちょうどいいところに私のダーリンが我が教室に顔を出して、その優しくかっこいい笑みで私の名を呼ぶ。机の上にあった自分のカバンを持って、廊下に居る洋平の腕へと抱きついた。良かった、これで誤解が解けた。 「何が安心なんだ?」 「んー…、人妻は警戒されにくいって話?」 「は?」 流川楓より、私にとっては洋平が誰よりも一番かっこいいよ。 |