頭がクラクラする。 合コンとやらは大盛り上がりし、いつの間にか意識がぽわぽわとしてきた。どうやら誰かが酒を持ってきてドリンクに混ぜたらしい。ジュースに混ざっているものだからあまり気づくことができず、酒に慣れていない未成年な私達はあっという間に酔ってしまった。いや、まだ意識はある…なんとか。自分の家に帰れるくらいには意識はある。 「名前ちゃん大丈夫?」 「んー…だいじょーぶ…です…」 「心配だなぁ、家まで送るよ」 合コンはお開きとなって、それぞれ家に帰るのだが…、不健全な高校生たちは夜の街をフラフラと歩いた。お酒を入れたのは3年の先輩らしく、最後はごめんごめんと謝っていたが、女子たちは酔うことにまんざらでもないみたいで楽しそうにしている。いや、本当はだめだからね、君たち。とか注意できるほど、私の頭は回っていない。現に今も上だか中だか下だか分からない例の先輩に肩を持たれ、とりあえず駅まで歩いていた。こんなところ、見られでもしたら最悪だよ本当。 「…名前?」 そんなことを思っていたら、今一番聞きたくない声が、ぼーっとする私の耳に入ってきた。そして次第に、それはもう酔いが一瞬で覚めるかのように、私の背筋が凍りつくように……世界が滅亡する音が、聞こえたように――、 「よ…へ…」 「え?誰?」 「悪いけど、コイツもらって行くんで」 「あ、…っ」 「え?名前ちゃん!?」 見えたその姿は、紛れもなく私の彼氏だった。そして物凄くアッサリと私の手をとり、それまたアッサリと私を連れて行く。私もすぐになにも言うことができず、ずっと体を支えてくれていた3年の先輩は取り残すように置いてきてしまった。でも、今はあの男のことなどどうでもいい。今一番大事なのは、私の手を引いて前を歩く、彼のことだ。 こちらを振り向きもせずにただ歩く洋平に、私は不安で仕方が無かった。だって私は今まで洋平が大好きで、洋平しか見てなくて、洋平以外はみんなじゃがいもだか里芋だか自然薯くらいにしか思っていない。 だから、いつもラブラブで温かい空気に包まれて、こんな……ピリピリした空気、知らない。 「あの、…」 「………」 「えっと、バイト帰り?おつかれさま…」 「………」 やばい、なにこれやばい。 洋平が返事をくれない。どうしよう、怖い。スタスタと歩く洋平に必死についていき、やっと速度が落ち着いてきたと思ったら――そこは小さな公園だった。ああ、ここ、昔よくきたことある。 「………」 「………」 沈黙が、怖い。 「ようへ……、怒ってる?」 まだこちらを振り向いてくれない洋平の背中に、私は恐る恐る声をかけた。 「…ああ、すっげー怒ってる」 「うっ……」 ひーーー!なんて、私の心の中では大パニック大警報サイレンが鳴り響いている。いつもより低い洋平の声に、私はビクリと肩を震わせた。 「でも、俺のせいかもって…ちょっと後悔してる」 「え?」 そういった瞬間、洋平がこちらを向いてその顔を見る間もなく抱きしめられていた。そしてふわりと広がる洋平の匂いに、私はこんな時だっていうのに心底安心してしまった。 「わりぃ、俺が最近バイトばっかで、一緒に居てやれなくて…」 「そ、な…ちが、洋平は悪くない、よ!今日はたまたま、人数合わないからって友達に誘われて…それで…」 「それで、他のヤローにベタベタ触らせたって?」 「ちが!あれは本当、ごめんっ…!」 本当、そんなつもりはなかったんだよ。そう言いたいのに、言う言葉全部が言い訳みたいでうまく弁解できない。 「それに私だって!最初はあんなゲームするとかお酒飲まされるとか聞いてなくて…!」 「は?ゲームってなに?酒飲んだって?」 「あ……」 ヤバイ、言い訳しようとして墓穴掘った!!さすがにそこは言わなくても良かったやつ!むしろ隠さなきゃいけないやつ!! 顔を真っ青にしてぱくぱくとする私に、洋平は、ほう…と言って口元は笑っていたけど目は笑っていなかった。 「ゲームは楽しかったか?で、名前ちゃんはなにしたんだろーなー?」 「あーー…えーっと、なに…も……?」 「ナニ、されたって?」 「い、一瞬だよ?一瞬だけ、こう…ちゅっと、むっ!!」 その瞬間、息する暇もなく口を塞がれた。 ひー!強引な洋平だーー!!なんて逆に喜んでる場合ではない。久々の激しいキスに、私は身をよじらせた。いつもならゆっくりと入ってくる舌だって、もう絡め取られてなんだかよく分からない。とりあえず、めちゃめちゃ気持ちいい…!! 「よっ…、…へぇ…ッ!」 頭抑えられて、もうだめ、酸欠になる。そう思っていると、ゆるりと口が離れていった。すぐ見える洋平の顔に、物凄く恥ずかしくなって目を反らすと、顔を抑えられて「反らすな」と言われてしまう。 「…ごめんね?」 「………」 「……うう、」 「なんで隠してた?」 やっぱり隠していたことに怒っているみたいで、私は伝えるつもりだったけど伝えられなかった今日のことを話す。 「それに、私は洋平以外好きにならないから…どうせ許してくれるだろって思ってた…し…」 「許すよ、許すけど……スッゲー嫉妬するよ」 そう言われて、私は少し驚いた。洋平はいつだって高校生に思えないほど大人で、余裕なんだろうなって思っていたから。 「本当に……ごめんなさい」 「もう、怒ってねーよ」 ポンと、頭に洋平の大きな手が乗せられたのが分かった。 「まあ、名前に触ったヤローにはマジで腹立つけどな」 「もう二度と会わないから安心して」 「絶対だぞ?」 「あたりまえじゃん」 そう言って洋平の両肩に手を回してちゅっと小さくキスをした。 良かった、仲直りできた。 「洋平がこんなに嫉妬してくれるなんて思わなかった」 「はぁ?何言ってんの、当たり前だろ…自分の女に手ぇ出されて怒んねーヤローがいるかっての」 バッカじゃねーの。なんて言われて、私は口元がニヤつくのが抑えられなかった。 ンフフと笑っていると、嬉しいのは分かったから普通に笑え、なんて言われて、私はとびきりの笑顔で洋平に抱きついた。 「わたし、洋平のためなら死ねるよ!」 「バカいえ、そこは俺のために生きる、だろ」 |