夏だ!海だ!バイトだ!



 夏休みがやってきた!
 追試の結果は、見事全員無事合格。なんとかインターハイへ出場出来ることとなった赤点組は、夏休みに入ってからも練習の日々。なにやら数日後には静岡へ合宿に行くらしい。
 そんな輝かしい花道を応援するため、洋平たちはもちろん広島で行われる全国大会まで応援に行くつもりだ。けれども神奈川から広島まで行くのにはそれなりに金銭がかかる。この不良高校生どもにそんなお金があるわけもなく、彼らは全員でバイトをすることに決めた。友達の応援に行くためにバイトで交通費を稼ぐ…だなんて、泣けるじゃないの。

「私も手伝う!」
「ダメだ」

 ハイ!ハイ!と元気よく挙手するものの、洋平にバッサリと却下されてしまった。「なんで!?」と、そりゃもう食い気味で返すと「ぜってーダメだ!」と理由を言わず一刀両断。私はせっかく洋平たちのためになればと思って言ったのに…なんでなんだー!!

「洋平は、名前ちゃんがバイトして変な男に捕まんないか心配なんだって」
「湘南の海はナンパの宝庫だからな〜」

 大楠とチュウにそう言われて、私はそれでも納得がいかないという顔をする。確かに、ここら辺の海はチャラいで有名だけど、それを言ったら…

「ハイ!ハイ!それなら私にも意見があります!湘南の海はギャルが多いので洋平が逆ナンされないか心配です!洋平こそバイト禁止すべきです!」
「お前なぁ…このナリじゃ誰もよってこねぇよ」
「うそだ!去年の海ではぐれた時に洋平、ギャルのお姉さんにナンパされてた!!」
「お前は5人ぐらい男引き連れて来ただろ!!」
「だってついてくるんだもんー!!」

 そう、それは去年の夏…。
 もちろん学生の夏休みでここら辺に住んでいるとあれば、海水浴へ行くのは当たり前。新しく買った水着でルンルンと洋平と海デートしていたら、ドリンクを買いに行った時にはぐれてしまってしばらく海岸を彷徨った。そしたら途中で何人かの男に声をかけられ、とりあえず無視して歩いていると、黒ビキニのお姉さんにナンパされている洋平を見つけたのだ。地味にショックすぎて立ち尽くしていると、いつの間にか男たちに手を掴まれてずるずると引きずられていて、それを見つけた洋平が激怒して阻止してくれた。
 ああ、そんなこともあったなー…なんて。

「あーまあ…洋平、このままじゃ名前ちゃん絶対、バイトしなくても一人で覗きにくるぜ」
「そっちのほうが絶対あぶないな」
「そーだな、確実にな」
「………」

 大楠が呆れたように洋平にそう言うと、続いてたかみんとチュウも声を揃えて言った。
 そう、わたしはバイトに出られないとあれば洋平との時間が減るということになり、そしたら海の家でバイトをする洋平を一人でこっそり見に行くであろう。大楠よくわかってる。

「ハァー…仕方ねぇ、分かったよOKする」
「やったぁーー!!」

 わあーーい!と、それはもう飛び跳ねて喜ぶと、大楠たちもわーいと手をバンザイしてくれた。

「ただし!!俺の目の届く範囲に居ることな!」
「イエッサー!!」

 とにかくこの夏も洋平と一緒に過ごせるとあって、わたしは嬉しくて仕方が無かった。
 夏というのは、何故だか妙にテンションが上がる。特にこの海の街で過ごしてきた私たちにとっての夏は、本来のこの海の姿が見える大切なひとときなのだ。

 こうしてバイトすることが決定し、女子を欲しがっていた海の家のおじさんは喜んでいた。…のだが、大楠とチュウは海の家「竜宮」、洋平とたかみんは海の家「湘南ボーイ」でお世話になる。何故か隣同士の海の家で、しかも両方のオーナーが物凄く仲が悪い。商売敵である隣に負けないようにと、片方に客を取られるくらいなら客を追い払えとまで指導していた。
 そんな海の家で私がどちらで働くのかというと、貴重な女子ということでそれはもう「私のために争わないでぇ!」と言いたくなるほど白熱のバトルが繰り広げられた。結局、時間制で交代して両方の店を手伝うということで、今回は決着がついたのだった。

「名前…その格好……」
「あ、なんかコレ制服だって、結構可愛いよね」

 海の家でのバイト初日、前半は竜宮で働くことになった。働く時の制服はこちらで用意すると言われたので当日はラフな格好で訪れると、配布された制服は水着だった。
 真っ白なビキニ、と竜宮ロゴの入ったパーカー。私はてっきり大楠やチュウのような黄色い竜宮Tシャツを配布されるのかと思ったのだけど、女子は特別と言ってこれに着替えさせられた。まあ、熱いし海の家だし、この格好は別に変でもない。というかむしろ可愛いので、私は普通に働く準備をした。…すると、隣の家から出てきた洋平が目を見開いてこっちを見ている。

「露出…多くねぇか?」
「まあ水着だからね?でもパーカー着てるよ」
「前閉めろ」
「えーそれしたら水着の意味なくない?」

 もちろん一緒に配布されたパーカーの前は全開で、羽織っているという形に近い。そんな私に、洋平はそれはもう低い声で注意を促す。

「まあまあいいじゃん!可愛い姿の名前ちゃん見れて!」
「大楠の言うとおりだよ!可愛い私を見て!」
「………ったく、しょーがねーな(大人になれオレ)」

 去年の海も思ったけど、洋平ってなんでこうも露出をあまり嬉しがらないんだろう。男ってやっぱり露出ある服とか水着とか嬉しくなるものなんじゃないの?私としては洋平に可愛い!セクシー!って思われたいのでこういう格好もするけど、いつもすぐ隠せだの上着着ろだの言われて、私はシュンとしてしまいます。

「名前ちゃんって結構胸でけーんだよな」
「こりゃ絶景だなぁー」
「チュウ、大楠、見すぎだから」
「これが洋平が育て上げた乳…」
「お前らいい加減にしろ!!!」

 チュウと大楠とたかみんは盛大に洋平にハリセンで叩かれていた。どこから出してきたんだろう…。

 そう、胸は意外と、あるんです。






 

hanamichi


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