「いやぁー、一時は修羅場かとヒヤヒヤしたぜ」 「見せつけてくれるねぇーおふたりさん」 「洋平の食べかけだけどあんず飴うまいよ!」 「あ、忘れてた…エトセトラ」 そうだった、コイツ等がいたのすっかり忘れてた。もちろんの如く私たちの一部始終を見ていやエトセトラは、ニヤニヤとした顔でこちらへとやってくる。まあ私たちのラブラブっぷりをいつも見せているだけあって、そこまで羞恥もなければ向こうも驚きはなかった。ただ、ウザイ。 「てか洋平が勝ったんだね!さっすが私の洋平!」 「あとちょっとだったんだよチクショー!でも名前ちゃん、俺はコレ取ったぜ!どうよ!」 「あ、かわいー!この子もいいなーって思ってたの!くれるのチュウ?」 「おうともよ!」 どうやら射的勝負は洋平の勝利のようだけど、チュウは下の段にあったお猿さんより一回り小さいうさぎのぬいぐるみを取れたみたいだ。一気に私の手の周りが賑やかになり、結局持ち切れないということでうさぎは洋平が持ってくれることに。普段の洋平を思うと、その片手に持たれたふわふわのウサギがあまりにミスマッチでそれはそれは逆に可愛かった。 「あ、お面!夏祭りって言ったらこーゆーのも悪くないよねー」 再び祭りを満喫していると、お面屋の屋台に出くわした。今を時めく魔女っ娘やキャラクターのお面が並んでいて、私は思わず足を止める。 「あ、この戦隊もののヤツとか皆でつけたら?かわいいよー」 「おっいいねぇ!これだと顔がバレねぇから何してもOKだな!」 「なにする気なの大楠…変なことはしないでよね」 様々なお面の中に戦隊もののお面があり、レッドやブルー、イエローなど丁度皆の分の色が並んでいた。 「じゃあ名前はピンクだな」 「洋平はレッドね!んで大楠がブルーで、チュウがグリーンでしょ、たかみんは大食いだからイエローだね!」 なんかこういうの楽しいね!いいね!なんて言って、皆でお面をつけることにした。といっても顔面につけていたら息苦しいしあんず飴舐めれないので、みんな好き好きな場所につける。花道が居たら花道にレッド付けてあげたんだけどなぁー。だとしたら洋平はブラックとかかな。颯爽と現れて颯爽と去って行くレアキャラね。 「あ、あれ花道じゃねーか!?」 「え!どこどこたかみん!?」 「ホラあそこ!!…なんか泣いてねーか?」 たかみんの指さす方向を見てみれば、屋台が並ぶ賑やかな道にふよふよと動く赤頭を見つけた。本当だ花道だ!と思うのも束の間で、何故か花道の目からは涙が流れていた。 「晴子ちゃんもいねーし、なんだぁ?フラれたのかー?」 「つーか俺ら花道に小遣い持ってかれたんだった!追いかけねーと!」 「そうだ!金があればもっと食いもん食えたのに!!」 「え、あんた達また花道にタカられたの?かわいそうに…」 大楠とチュウとたかみんがぷんすかと怒りすかさず私たちは花道の方へと向かった。…が、泣いていた花道が一瞬だけ立ち止まり、ものの数秒で何かハッと気づいたのか、今まで来た道を猛ダッシュで逆走しだした。 「山の方行ったね?なんかあったのかな…」 「まてーーー!花道ーー!!!」 「仕方ねぇ…俺らも行くか」 「うん、そだねっ」 食べ終わったあんず飴の棒をゴミ箱に捨て、私は洋平に手を取られて花道の後を追った。下駄だから走りづらいんだよなぁ…。それに気づいてか、先を走る大楠達よりも少し速度を落としてくれる洋平に、私は今日何度目か分からないトキメキに駆られるのでした。 「「「「正義の味方戦隊参上!!」」」」 山の上までたどり着くと、神社から少し離れた森の中で花道と晴子ちゃんたちが居た。でも様子が違うのは…晴子ちゃんたちの周りには見知らぬ男たちが囲んでいる。 どうやら質の悪いナンパにあっているらしい。そこに般若のお面をつけた花道が立ち向かおうとしていて、すかさず洋平たちが飛び出ていった。こんなところで花道のバスケット人生を揺るがすことはしてはいけないからね。いいやつらだよ本当。 こうしてナンパ男たちを退治した洋平たちに私は盛大な拍手を送り、皆で近くのベンチでパーっと盛り上がることとなった。たかみんはずっと背負っていたリュックからスイカまるまる一個とジュースのビンを取り出してきて、ずっとひそかに気になっていたあのリュックはそういうことだったのかと私は一人頷く。どうやら安西先生の差し入れらしい。 「顔がはんにゃになってるよ」 「うるせーおじゃま虫が!」 「はいはい、諦めて皆で楽しく過ごしましょーねー」 「うわっぷ!?やめろ名前!!なんだコレ!?」 「花道のお友達だよー仲良くしてね」 皆がスイカを分け合って楽しくしている中、私はふてくされた顔の花道の方へと行った。ベンチに座ってジロリと私を見上げてきて、私は手に持っていた赤いお猿さんのぬいぐるみを花道に押し付ける。うん、やっぱり似てる! 「花道、楽しい?」 「楽しいわけあるかチクショー!!俺と晴子さんの邪魔をしやがってぇ…!!」 「あはは!そっか!楽しそうでよかったよ!」 「オイ!話聞いてるのか名前!!」 「あ、スイカ切れた?たべるたべるー!」 「名前ーーーー!!」 本当、楽しそうでよかった。 私の人生って、花道がいてこそって気がするんだよね、最近。花道が楽しそうに、がむしゃらに、そんな成長が見れるだけで…私本当に嬉しい。なんかお母さんみたいだけど、もうそんな感じだと思う。いきなりどうしたんだって心の中読まれたら言われそうだけど、なんだか今はそんな気分。 「あ、花火!」 「お、ホントだな」 ヒューー……ドンッ!! そんな夏の音が聞こえて、私たちは空を見上げた。 「今年も洋平と一緒に花火が観れた!えへへ」 「嬉しそうな顔しやがって、可愛いなお前は」 「洋平もかっこいいよ、大好き」 隣にはいつの間にか洋平がいて、花火を見上げる皆の背中を見ながら私たちはそっと手を繋いだ。 「来年も、見れる?」 「見れないと思ってんのか?」 「ううん!これっぽっちも!」 「だろーな」 来年も…洋平とこうして花火を見たい。 本当は少しだけ、ほんのちょっとだけ不安にも思ったりする。恋に不安はつきものだ。それでも洋平のその顔を見ると、来年にも再来年にも私がいるんだって教えてくれる。 「名前、こっち向け」 「ん?」 そう言われて洋平に顔を向ければ、ふわりと唇が奪われた。 私たちの顔の横に添えられた赤いお面は、きっと隠しきれていないだろう。大きな花火の音と共にあった、一瞬のキスだった。 「たーーーまやーーー!!」 「うお!!?名前ちゃんいきなりどうしたんだ!?」 「幸せ噛みしめてる!!!!!」 夏の思い出。 |