いつから、私はここにいるのだろう―。
私の脳波を使うことによって妹達の性能を上げることに成功して、私の役割は果たされたのだと思った。けれど、実験は変わりなく続けられる。最初は自分の部屋が用意されて、研究室とその部屋を行き来していた。けれど次第に研究室に行くことが増え……そして、そして………あまり思い出せない。
今はまるで、夢を見ているようだった。
ぼんやりと見える世界では、ちゃんと音も聞こえる。研究者たちが周りには居て、何かを話している。何を言っているのかあまり聞き取れなかったが、時間を増すごとにその音はどんどんと大きく、鮮明になってきた。そしてそれを聞いているのは私ではなく――”彼女”たちなのだということに気づいた。

『音響操作と妹達の脳波リンクのシンクロ率――只今76%』
『ここまでくれば、第二プランの可動も可能そうだな』

”第二プラン”
それがどういうものなのか、私は知っている。研究者達はそれを私にも伝えず極秘で進めていたようだが、私にはそれを読み取る力があった。私の能力の全ては”音”――その音は1つの波となっていて、普通の人間ならば確認できないその波を私は感知することが出来る。とある学科の研究で”音波によるハッキング”なんてものがあり、この能力があればそれも可能なことだ。だから視覚を奪われていたとしても、私にはそれが音として”読む”ことが出来る。これが出来るようになったのは――私が研究所を抜け出す少し前のことだった。

『まさか、こんな手であの一方通行が言うことを聞くなんてね、彼女は本当に使える子だよ――』

そして私は知ってしまった。
第一プランと呼ばれるこのバカげた計画―”絶対能力進化計画”をどうして一方通行が承諾したのか。
それは―――私だ。
この話を一方通行に持ちかけた当時、まだ第二プランは未完成に過ぎなかった。だがヤツ等はそれを今すぐにでも遂行可能だと嘘を吐き、私を人質に一方通行へと交渉を仕掛けた。きっと彼等も私なんかが人質になるかと半信半疑だっただろう。だが結果一方通行は…その首を縦に振った。

ごめんなさい
ごめんなさい…

なんて自分は愚かなのだろう。
誰かの為になることだから、これが未来の世界を助けることだから――、そんなこと言って、私は誰一人助けられていない。結局私はモルモットで、この学園の闇に飲み込まれていく。
…なんとかしたい。けれど、どうやってしたらいい?今更私に何が出来るっていうの?こんな…もう指一つも動けない状況で、一体私に何が――…

『なにかお困りですか?お姉さま』

(え――――?)

『お姉さまの声が聞こえましたので…とミサカは頭に聞こえた声に返事をしてみます』

(私の声が…聞こえるの?)

『はい、お姉―さ――が…その装置を――付け――によって――、会話―を―…ること―可能になっ――たいです。とミサカは―――ます』

私の脳波に似せたことにより、彼女たちのミサカネットワークに干渉することが可能になった私の脳だが、それも自力では難しいことだった。けれどいま頭に付けているこの装置があれば、彼女たちと意思疎通を測れるようにまで…実験は進んでいた。けれどまさか、会話が出来るほどにまでだとは……。けれどどうやら、それもまだ完全というわけではなさそうだ。少し意識を外せば、そのリンクは薄れてしまう。そして私が強く思うことで……彼女たちに伝わる。

(アナタ達に…たった一つだけ、お願いがあるの)

『なんでしょうか?…とミサカはお姉さまのお願いがどんなものかによりますが聞くだけタダだろうと思い聞き入れます』

(たった一度だけでいい…それだけでいいから……もし今後私があなた達に救いを求めたら―……その時は、助けてくれる?)

たった一度だけでいい。
今すぐにとは言わない。
たった一度、

その時が来たら―――





姉の願い


 

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