アイツの声が聞こえた。
第10032次実験の途中で、訳の分からない男が乱入してきた。どうやらこの実験のことを知っているみてーで、しかもソイツは”実験をやめろ”と言ってきた。この学園都市最強と謂われるオレに対してのソイツの口ぶりは、面白いくらい何も考えてねェバカな野郎だった。うぜェから軽くブチのめしてやったが……なンか違う。今までオレに向かってくるヤツは、ちょっと腕の一本でも弾いてやれば泣いて詫びるヤツ等ばっかだったが…、コイツの眼は変わらずオレを睨みつけていた。
オレはいつの間にか血を流し、このわけの分からない男に殴られていた。考えても、考えても、理解できない。何故オレが、このオレが――、コイツに殴られてンだァ?

「もう一人も…殺させはしないッ!!」

やっとあの野郎をぶっ殺してやったと思えば、今度はオリジナルの登場だ。だがそんなヤツはもうどォーっだってイイ。あのクソ三下と戦ったことによって、オレの力は新たな可能性を見つけた。この力さえあれば、絶対的な能力はすぐ近くにある。そしたらこのくだらねェ世界だって、オレという存在だって……アイツも――。

「もうやめて!!!一方通行ッ!!!!!」

聞こえた声は、オレのよく知る声だった。


ア?

何で…オマエの声が聞こえンだ…?

何でそンな……必死な声してンだよ…

なに…………泣いてンだよ……


「歯を食い縛れよ……最強………俺の最弱は……ちっとばっか響くぞ……ッ」


この力はいつか、世界そのものを敵に回し、本当に全てを滅ぼしてしまうかもしれない――。
力が争いを生むのなら…戦う気も起きなくなるほどの、絶対的な存在になればいい。
オレから大事なモンを奪わせねェ…ような……

そうすれば、いつか……また………

そうすれば、もう………

もう―――誰も…………


ホント―――――……

なにやってンだ……

オレ



*

*

*




―――温かい。
それに……ポタポタと、生暖かい何かが顔に落ちてくる。顔に添えられた手には覚えがあった。それにさっきから聞こえてくる――胸糞悪ィすすり泣く声…。

「オイ……ヒトの顔面の上で泣いてんじゃ…ねェよ……名前」
「だっ…て……っ…うっ…ううッ……ぐずっ…」

目を開ければ、きったねェ顔でオレを見下ろすアイツの顔があった。どうやら全て…終わっちまったみてーだ。アイツ越しに見えた空には変わらず三日月が上っていて、夜だってーのに明るく眩しいくらいだった。

「なさけねェな……なにが…最強だ………オレは…オマエ一人、救えねェ…」
「っ……ごめ…ごめんっ…なさい……ッ!」

涙でぐずぐずになってるアイツの頬の感触は…前より少し、肉が少なかった。
こんなハズじゃなかった。いつもみてェに、指一本動かすくらいで全てを終わらせるつもりだった。なのにこのザマだ。それでも今、こうして穏やかでいられるのは……この状況を、悪くねェと思っている自分がいる。こんな結果、どれだけ演算しようとも出てこないこの現状に、オレは心底……安心していた。

「ピーピーいつまでも…泣いてンじゃねェーよ……」
「でもっ……だってぇ……っ…」

コイツには色々聞きてェコトや、言ってやりてェコトが沢山あるが……今は……とりあえず、

「無事で……良かった…………」





絶対的な力


 

Noise


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