「なあ、俺らと遊ぼーや」

 どうしよう、囲まれた。
 バイトの帰り道、人の少なくなる暗い時刻。とある路上で私はスキルアウトに絡まれてしまった。
 ニヤニヤと見下ろしてくる男どもが三人ほど。小柄な私は簡単に彼らの影に隠れてしまった。

「あのー、お家に帰らないと−…」
「まあそう言わねーで、俺らと楽しく遊ぼうじゃねーの」
「いやぁ……」

 あははと苦笑いするも、彼らのニヤニヤは止まらなかった。はぁ、可愛いって罪だ。こんな可愛い顔をしているから、こういうのに絡まれるのはよくあることだった。もう慣れっこってヤツだ。

「ちなみに何して遊ぶの?」
「何って、そりゃあナニだよお嬢ちゃん」
「あー…えっちなこと?じゃあこんなところじゃなくて、ちゃんと綺麗なところがいいかなぁ…」
「なんだよお嬢ちゃんもヤル気じゃねーか」
「へへ、いいぜ、ちゃーんと寝心地いいとこ連れてってやるよ」
「乱暴しないでね?」

 見事な悪党面と台詞だ。とりあえず抗わずに従って隙を見つけて逃げ出そう。そう思い、私は彼らに連れられるがまま歩いた。
 どこへ連れていかれるのだろうか…近場だといいけど、家から遠い学区とかに連れていかれたら帰るのがめんどうだなぁ…はぁ。――なんて考えながら、私は心の中で何度目か分からない溜息を吐く。
 そういえば一方通行は今日も家にいるのだろうか。バイトだから帰るのが遅いとは伝えてるし、もしかしたら今日は来てないかもしれない。そもそも、アイツはいつも私の家で何をしているのだろうか。鍵なんて渡してないのに勝手に家に入られてるし、我が家のようにくつろいでる。あれは立派な不法侵入だ。…と、モヤモヤ考えていたら、いつの間にかそこは見慣れた景色だった。私のマンション近くの道だ。

「(ラッキー、隙を見て家に逃げ込もう)」

 そう思って彼らの様子を見ながら歩いていると、聴きなれた足音が耳に入ってきた。距離的に250m先ぐらいだろう。右手にはビニール袋、その中には5個ほどの缶、銘柄はいつものやつ。そして運のいいことに、それは前方から聞こえてくる。一歩、二歩、三歩……じわじわと次第に大きくなる――その音。どうか目を瞑って、音を遮断していませんように…。

「一方通行…、」
「あ?なんか言ったかお嬢ちゃんよぉ」

 小さく呟いたその名と、ハッキリと見えた純白と二つの赤を、私は確実に捉えた。

「オイオイ、帰りが遅ェと思ったら、どこぞの三下と夜遊びですかァ名前チャンよォ」

 私とそれを囲む男達を見て、彼は口角を上げて笑い飛ばす。相変わらずの憎まれ口に、私はハハっと乾いた笑いを見せた。

「おいテメー、邪魔すんじゃねーぞ」
「これからお楽しみなんだよこっちはよォ」
「はは、そんなモヤシみてーな体じゃなんもできねー……ブッ!!??

 ドンッ
 私の手を掴んでいる男の隣に居た男が、一瞬で消えた。と思ったら、男は壁に思い切り打ち付けられ、壁も同じく破壊されていた。一瞬のことで何も理解できない男たちは、ただその光景に唖然としている。

「ヒィ!なんだよアイツ…能力者か…!!」
「オイオイ楽しむんだろォ?なにシケた面してんだよ、“お楽しみ”は皆で分けあわねーとなァ?」

 凄い怒ってる。多分モヤシって言われたことにカチンときたんだ。私は倒された男に「ご愁傷様」と心の中で呟いた。

「お、オイ!この女がどうなってもいいのか!!」
「アァ…?」
「ちょ、いたっ!乱暴にしないでよ!」

 腕をつかんでいた男が震えながらも私の首にナイフを突き付け、完全に人質にとられてしまう。けれど一方通行はただ面倒くさそうな顔をして、ポキっと首を鳴らした。こんなことしてもコイツには何の意味も成さないことなんて、私も分かっている。だから、全然怖いとも思わなかった。

「動くんじゃねぇぞ、動いたら…」
「動いたらなんだってェ?」
「えっ……ぐわああああ!!

 バリバリバリバリ
 さっきまで目の前にいた一方通行の体はいつの間にか男の背後を捉え、その体に触れた瞬間、男は悲痛な呻き声を上げた。久々に目の当たりにした一方通行の力は、やはり常識から外れすぎている。

「ったく、手間とらせやがって…帰ンぞ」
「あはは、ごめんね」

 もう一人いた男はいつの間にか姿を消していた。倒れている男達のことなんてハナから見えてないというように一方通行は再び歩き出し、そのまま私の横を通り過ぎて進む。私はそれを追いかけて横に並んだ。
 帰るって言ってるけど、私の家だぞというのは今は言わないことにした。どうせ憎まれ口叩かれるだけだ。

「一方通行が来てくれてよかった。もうすぐでえっちなことされるとこだったよ」
「俺が来なかったらドォするつもりだったんだよテメェは」
「隙を見て逃げるつもりだったけど?もう最悪、最中にこう…ギューっとね!」
「ハァ……」
「なんで溜息!?」

 私は何故か一方通行によく呆れられることが多い。けれどその理由がまったくもってわからない。

「あ、それよりお腹減っちゃった!その缶コーヒー冷蔵庫入れたらさ、ファミレス行こうよ」
「…………ハァ」
「だからなんで溜息!?」

 結局、ファミレスには付き合ってくれた。





夜道


 

Noise


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