”演算補助デバイス”は通常モードで48時間ほどバッテリーが続くのだが、その充電を怠ると彼は思考も喋ることも歩くこともできなくなってしまう。そしてそのバッテリーを交換する際、必ず一瞬だけ使えなくなる時間が出来てしまう。その一瞬のあいだ彼の全ての動きはストップしてしまうため、バッテリー交換は私や打ち止めの役目だった。基本的に私が定期的にしている超音波治療の時に交換することになっていて、今日もその時間がやってきた。

「これ外しちゃったら、ほんとに何もできなくなっちゃうんだ?」
「あァ…情けねェことにな」
「じゃあこれが無くなっちゃったら、一方通行はずっと動けなくなるんだね」

こんな小さな機械1つで、彼の人生の全てを奪ってしまうのだから…科学というものは時に素晴らしく、怖ろしい。私たちはそんな科学に翻弄され、そして助けられている。皮肉なものだ。

「でももし一方通行が動けなくなっても、私が一生お世話するからね。そして、絶対にどうにかして助けてあげる!」
「…バカなこと言ってねーで、さっさと取り替えろ」

せっかく一生を捧げるって言っているのに、彼は相変わらずの憎まれ口だ。まあ甘い返事がくるなんて思ってもいなかったので、私は彼の首元にあるバッテリーをカチリと取り外した。瞬間、ピクリと一方通行の動きが止まる。

「…………」
「…………」

しばらく見つめ合うと、一方通行が”さっさとバッテリーを交換しろ”という目線を向けていた。きっと今の状態はさっき言ったように思考や会話、体を動かすこともできないのであろう。思考…というけれど、目は見えているみたいなので、私の動きは理解できているのだろうか?どこまでが機能停止しているのか、そういえばあまり聞いたことがなかった。

「この状態だと手も足も出せないんだよねぇー…」
「ッ………」

耳は聞こえてはいるけど、言語機能に障害があるとかできっと言っていることは理解できないだろう。すぐに充電したバッテリーを取りつけない私に、一方通行の目が物凄く怖くなっていくのが分かった。さすがにこのままの状態を長引かせるのは悪いか…。

「ごめんね」
「っ……!」

ちゅっ…と、私は最後に彼の唇へと自分の唇を軽く合わせた。なにせこんな状況にもならなきゃ、彼に不意打ちでキスするなんて絶対できない。私は手に持っていたバッテリーを、カチッと彼の首のデバイスにはめ込んだ。

「名前テメェ…」
「あ、何されたか分かっちゃった?」
「オレが動けねェのをイイコトに何してンだテメェは…」
「えー、いやだった?」
「あのなァ…」

おどけて見せるようにもう一度ちゅっとジェスチャーしてみせれば、一方通行の顔はイライラ度MAXに湧き上がっていった。どうやら私がキスしたことは理解していたみたいで、停止するといっても言語機能とそれを組み立てる思考が機能しなくなってしまうらしい。感情は残っている…といったところだろうか。

「まあでも無抵抗の人間をどうこうするのはやっぱツマラナイかなぁ…好き放題させてくれない一方通行だから、私はドキドキするし、好きってなるのかな」
「……………」
「どうかした?」
「ハァーー………、なンか飯でも食いに行くぞ」
「うん!」

何故そんなに頭を抱えているのか分からなかったけど、分からないからもっと一緒に居て彼を知りたいって、そう思うことにした。





手も足も出せない瞬間


 

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