天使のほほえみ


あんなにレシーブが上手いなら、皆が天才!と褒めるもの分かる。放課後の部活の時間に現れたって事は今日から正式復帰なのかな…。嬉しさも有るけど、突然の知らない人の乱入でそわそわしてしまう。そんな時にひーくんが隣に立ったので、此処ぞとばかりに彼の背中に隠れた。挨拶しなきゃいけないのは分かるけど、やっぱり知らない人は怖い。ギュッとひーくんの服を掴む。今のところひーくんから小言が来ないから、隠れてても許してくれるらしい、良かった。
ひーくんの背中から覗いて見ていると、翔くんが守護神さんに向かって、「おれより小さい…!?」と言っていた。あ、それ、地雷なんじゃ……と思っていると、

「あ゛あ゛!?。てめえ、今なんつったァゴラァ!」

やっぱりな反応。
まぁ確かに翔くんは私より大きいけど、男の子として見たら低い方の部類だろう。部活の中でも背は1番低い。そんな中に自分より低い人が現れたら、そんな反応になるのも頷けるけど、初対面の、しかも先輩には言ってはいけない言葉だったんじゃ…。

「あっ…ごめんなさっ…。あのっ」
「ア゛!?」
「身長…何センチ……ですか…」
「159cmだ!!!」

159……10cmも差がある。男の人と張り合うのもって思うけど、此処でも1番身長低い…。にぃもににも身長高いのに!、自動販売機くらいあるのに!。
やっぱり沢山食べて、沢山寝るのが良いのかな。中学生の時から身長はうんともすんとも伸びてない気がするけど、成長期ってまだこれからだよね?終わってなんかないよね!?。
むむっと悔しがっている私とは裏腹に翔くんはうおお!っと叫んで嬉しそうにしている。

「高校の部活入って、初めて人を見下ろしましたっ」
「大して見下ろしてもねえだろ!泣いて喜ぶな!」
「……………翔くんきらい」
「うぇ!?沙智ちゃんなんで!?!?」

ポツリと呟いた言葉は翔くんに届いていたみたいで、なんで〜!としょんぼりした顔で私に近づいてきた。その顔が何だがカヴァスみたいでズルい。許してしまいそうになるけど、

「背が低いこと、泣いて喜ばれるのや」
「う゛っ」
「だから、今日はもう翔くんとお話しないの」
「えっ!?それは嫌だ〜〜!ごめん、沙智ちゃ〜ん!」
「許さなーい!」
「沙智ちゃんは背が低くても可愛いけど、おれは男として身長が高い事が嬉しかっただけだから!。沙智ちゃんに勝って嬉しいなんて思ったことないから〜!」

追いかけて来る翔くんをひーくんを中心としてくるくる逃げ回る。だけど、流石に煩わしかったのか、ひーくんは「邪魔だボケェ!」と翔くんの顔を掴んだ。思いっ切り掴んでて、ちょっと可哀想な事になってる。

「むぎゅ!?」
「沙智の地雷を踏んだお前が悪い、ボケ」
「ふにゅやま、はにゃしぇ〜〜!!」
「あ゛?なんて言ってンのか分かんねェよ!!」
「ひーくん、流石に翔くんが可哀想だから離してあげて!」
「お前ら先輩の前でイチャイチャすんな!!!」
「「「はっ!」」」

3人で騒いでいたら、いつの間にか守護神さん以外に澤村先輩、菅原先輩に田中先輩まで揃っていた。部活の時間だから、先輩たちが来るのは当たり前だけど恥ずかしいところ見られた…!。再びひーくんの背中に隠れると、何故か守護神さんと目が合った。何か私に用があるのかなと首を傾げると、

「っ!!!!!。オイ、龍!!!」
「ノヤっさん!!」
「か、彼女は………!!」
「フフッ。彼女は潔子さんの後輩である…」

2人の話からどう考えても私の事を言っているのは分かるけど、何で田中先輩は含み笑いをしているんだろうか。少なくとも何か公開処刑のようなことをされそうで、部活の時間っても忘れてひーくんの手を握った。

「白崎沙智ちゃんです!!。沙智ちゃんのおかげで潔子さんの笑顔が増えてンだよ、ノヤっさん!」
「ぴっ!」

ひーくんの手を握ってたのに、田中先輩に肩を掴まれて、引き離される。そして、グイッと守護神さんの前に立たされた。あわわっ、どうしようどうしよう!。潔子先輩の笑顔が増えたって褒められた(?)としても、何故か守護神さんは無表情で私を見てる。何、なにか私しちゃったのだろうか。誤った方が、いやでも、何が悪かったのか分からないし……ふぇ。
パニックのあまり泣きそうになっていると、急に守護神さんが私の両手を握った。小さいけれど硬い手。例え身長が低くとも、ちゃんと男の人の手だ。

「白崎さん…いや、沙智ちゃん!」
「は、はいっ!」
「ありがとう……潔子さんの笑顔を増やしてくれて。潔子さんが笑って過ごしてくれるなら、俺は!」

感極まって、天を仰ぐ守護神さん。田中先輩もだけど、彼も潔子先輩が大好きなんだろう。だから、こんなにも潔子先輩が笑顔でいてくれるだけで、喜んでいるんだ。潔子先輩も、田中先輩も守護神さんも喜んでくれるのは嬉しいけど、

「あの守護神さん」
「…守護神!?」
「田中先輩は優しいから、私が潔子先輩の笑顔を増やしてるって言って下さりますけど、」
「………」
「潔子先輩の笑顔は、私だけじゃなくて守護神さんと田中先輩も引き出していると思いますよ」
「っ!!!」

勿論、このバレー部全員がだけど!。
部活前と終わりに潔子先輩と一緒に着替えると、今日の練習でカッコよかった所とか面白かったこととかお話すると、何時も潔子先輩はにこにこですよって付け足すと、守護神さんだけでなく澤村先輩たちも嬉しそうにしている。やっぱり潔子先輩が笑顔だとみんな、嬉しいんだなぁ。ふふっと笑っていると、突然お腹に腕がまわったと思ったら、

「うにっ!」
「何時まで手、繋いでんだボケ」
「ひ、ひぃくん…くるし…はな、」
「嫌だ」
「影山くん、独占欲高すぎでしょ……」
「あ゛ぁ?」












「おい、龍。アレはもしやそういう」
「あぁ、そうだぜノヤっさん。沙智ちゃんと影山はそういう関係だぜ……将来結婚の約束迄してるらしい…」
「!?!?こ、こここ後輩に抜かされたァァァァ!」


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