「潔子先輩っ。私、合宿参加出来そうです!」
「え、本当?」
朝練の準備をしている最中に昨日お父さんから許可が降りたことを伝えた。まだにぃたちからはダメだからね!と連絡は来てるけど、お父さんから『土産話期待してるね』とも言われてる。りんちゃんもいつの間にかお父さんから聞いていたらしく、旦那様が言うならと合宿に参加してもいいみたい。
唯、私は知らなかったのだけど、本当ならGW中に検査入院する予定だった様で、合宿行く前に1度病院に軽く検査しましょうねと言われた。その時のりんちゃんはにっこり笑顔で言っていたが、長年の付き合いで予定が狂わされて静かに怒ってる事がヒシヒシと伝わっており。……今日お家帰ったら、肩もみとかしたら許してくれるかな…。
合宿参加のことと病院に検査に行くので近々お休みを貰うことを潔子先輩に改めて伝えると、うーんと手を顎に添えて何やら考え出した。
「どうしたんですか?」
「毎年私だけだったから、今年は沙智ちゃんも居るし、合宿施設に泊まろうかなって」
「!。本当ですか!。えへへ、潔子先輩と一緒ならきっともっと楽しくなります!」
「ふふっ。お風呂、一緒に入ろうね」
「はい!。可愛いパジャマ用意しなきゃ…。あ、夜は沢山お話したいです!」
「……恋バナとか?」
「恋バナ…?。恋のお話ですか?」
「そう。沙智ちゃんと影山の話とか聞いてみたい」
「私とひーくんですか?」
潔子先輩にお話する程の何かあるかな…?。うーん。翔くんと何か言い合ってるひーくんを見つめながら、考えてみるが、潔子先輩に話すべきか迷ってしまう。キュンってしたり、ドキドキする事は最近沢山あったけど、ひーくんのかっこいいところは私だけ知ってたい。だって、潔子先輩は綺麗な方だから、ひーくんのこと好きになったら勝ち目無いもの。
「うん。沙智ちゃんは将来影山と結婚する約束をしてるんでしょう?。どういう経緯でそうなったのか気になるの。やっぱりプロポーズって女の子の憧れだし」
「んと、えっと……」
言いたい気持ちもある。私のひーくんはとってもかっこいいのってお話したい。にぃもににもちゃんと聞いてくれないし、お父さんは一緒にかっこいいねって言ってくれるけど、あまりお話出来ない。
でも、さっき考えた通りに潔子先輩もひーくんを好きになられると困ってしまう。どうしようとぐるぐる考えてると、
「沙智」
「!。ひ、ひーくん…」
後ろから名前を呼ばれて振り返る。私が悩んだり、困っていると何時も思考の海から助けてくれてる気がする。心とか頭とか読まれてるのかも。でも、ちっとも怖くないから笑ってしまう。本当に私はひーくんが好きなんだなぁ。
「清水さんに話せたか?」
「う、うん。今、そのお話してたの」
「検査のことは?」
「お話したけど、武田先生と澤村先輩にはまだ…」
「じゃあ、先に澤村さんには言いに行こうぜ」
こくんと頷くと、いい子って呟いて頭を撫でられた。その手が気持ちよくて思わず擦り寄ってしまう。ねこちゃんだったら、気持ちよくて喉がゴロゴロって鳴ってたかもしれない。そんな事を考えていると、クスクスと笑い声が聞こえた。あ。
「ごめんなさい、潔子先輩!。お話中に…!」
お話してる最中だったのに、ひーくんに撫でられることに夢中になってた…!。申し訳なくて勢いよく頭を下げるが、潔子先輩はいいもの見れたからと笑っている。いいものって何?。首を傾げながら、ひーくんを見つめるが、彼も私と同じように首を傾げていた。
「ふふっ。本当2人とも仲良しね。……興味本位なんだけど、どのくらいお互いが好きなの?」
「どのくらい?」
「好きか…ですか?」
あんまり考えたことが無かった。
ひーくんは好きで、私の唯一なのは小さい頃から変わってない。だから、どのくらいと量を聞かれても上手く言語化が出来ない。
そう言えばにぃたちに潔子先輩と同じような質問をした事があった事を思い出した。好き好きと暖かい気持ちをくれる2人をちょっとだけ困らせたくて『私のことどのくらい好きなの?』って。その時2人は、少しびっくりした顔をしてたけど、直ぐにフッと綺麗に微笑んで
『僕は生まれ変わってもちぃちゃんと一緒にいたいくらいだーいすき♡』
『私はこの世の全てが沙智の敵になっても、沙智と一緒に死んであげるくらい好き』
悪戯心で聞いたのに致命傷のような愛を貰ったんだった。ひーくんもにぃたちみたいに致命傷の愛をくれるのかな。ちょっとだけ…嘘、かなり気になる。
でも、その前に私の想いを伝える方が先だよね。
「私の全部、ひーくんにあげれるくらい大好き、です」
ひーくんの小指に指を絡めながら伝える。恥ずかしくて顔を上げれない。耳まで熱い。
でも、コレが本心だから。ひーくんになら何されてもいい。彼と一緒にいないと私は幸せじゃないもの。
私の想いが届いたのか、絡んでた指が解かれて、大きな手が私の手を包み込んだ。そして、
「もう俺は沙智とバレーが無いと駄目なんで、沙智も俺と同じ様に俺無しじゃ生きれなくなればいいのにって思うくらい大好きっス」
「ひぇ………」
「す、凄い……ラブラブね、沙智ちゃん」
何故か拍手している潔子先輩。は、恥ずかしすぎる!。聞きたいなぁと思っていたけど、想像を超えるほどの言葉を貰ってしまった。私の言葉、なんかしょぼくなかったかな、ちゃんと本心を伝えた気でいたんだけど!!。もっと何か違う言い方の方が、でも大好きって気持ちは伝わってるはず。其れに私はとっくに貴方無しでは生きれないくらい好きなのに。うぅ。考えていると耳元にふっと息が掛かった。
「沙智」
「ひゃ、ひゃい!」
「ひゃい?、…全部くれるって本当か?」
内緒話をするように小さな声が耳を擽る。何時もなら笑ってしまうのに、ひーくんの真剣な瞳に撃ち抜かれる。
初めて会って、ひーくんの優しさを知り、救われたあの日から私はひーくんに全部をあげるって決めた。私の唯一。私の星。私の命は全部貴方と一緒にいるためにあるの。そんな重たい想いをひーくんにあげるのは忍びなくて、あまり声に出さないようにしてたけど、
「うん。過去も今も未来も全部、ひーくんにあげる…って思ってるけど、えっと重たかった?」
「いや?。寧ろもっと寄越せ。足りねェ」
「……なら、ひーくんももっと頂戴?。苦しいって思っちゃうくらい、ひーくんで一杯にして」
「………むり」
「んん?」
両手で顔を覆い、天を仰ぎながら、「Aまで、Aまでって男の約束した」とぶつぶついうひーくん。Aって何の話……??。つんつんと突いても微動打にしない。
「き、潔子先輩…ひーくん、壊れちゃいました…何で…」
「んー……沙智ちゃんの所為だね」
「えっ!?」
「それに沙智ちゃんたちって、Aまで進んでるんだね、ふふっ」
にやにやと面白そうに笑う潔子先輩。うぅ、Aって何?アルファベットってだけじゃないの??。Aの意味について頭をぐるぐる回していると、潔子先輩が耳元でこっそり教えてくれた。
「キスって意味よ」
「……………ぴっ!!」
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