10 「くれぐれも僕から離れない」 『わかってる・・・それにしても、廃棄区画でも色々売っているのね』 「場所によりけりかな。 粗悪品もある、特に飲食物には気を付けた方がいい変な薬が入っていたりする」 『・・・そこにも貴方が関わっているんでしょう?』 「ふっ・・モノによりけりかな」 『・・・あの人たちも、私と同じなの?』 「無戸籍者という点では、同じかもしれないが君の家は名のある家だ。 両親はシビュラの恩恵を受けている・・・ここにいる者たちは、生まれもここの人間が多い」 『恩恵ね・・・シビュラの下にいないから色相は関係ないと』 「好き放題やっている奴らだ。色相が濁っている者も犯罪係数が高い者もいる」 『・・・・公安の人たちには、見つからないの?』 「この区画には、公安の人間だけじゃぁ裁ききれないくらいの潜在犯がいる」 『黙っているしかないってことね』 「そうだ。・・・・・少しだけ、ここに居てくれるか?」 『・・・離れるなって言ったのは貴方だわ』 「少しね・・・何があっても動かない」 『わかった』 影から目食わせをしてきた知り合いの元へと足を進めた 少しだけ後ろを振り返れば、興味津々と言った様子で辺りを見渡す彼女がおり やや心配になった セーフハウスから少しだけ離れた場所に連れてきてもらった 誘われたので、くっついてきたのだ 『・・・・・?』 「・・・・・」 『?』 「これで、どうだ」 突然声をかけてきた男に値段を尋ねられ いわゆる現金というモノを差し出され 困惑した 『・・・何をするの?』 「そりゃぁ」 にたりと笑った男を見て あぁ、これがいわゆる貞操の危機というやつなのかと 聖護から感じない、野蛮な雄を直感的に感じた 『残念ね、私、売り物じゃないのよ』 「君なら大金が稼げるぜ?」 『運がいいことに財布になってくれる人がいるの、他を当たって頂戴』 「はっ・・・既に買われてるのか。そりゃぁ、相当なロリコンだな」 『ロリコン・・・?』 機嫌が悪そうに去っていた男の背を眺めながら 知らない言葉に、自身の知識と向き合った ? 何かの声?が聞こえる 細かく途切れる声と音 動くなと言われたために、きょろきょろと見渡すが どこも壁だ 壁の向こうから聞こえるのだろうか 『・・・・・・』 自身の背後、やや上に窓があるが 私の身長では、中を見ることができない位置だ 気になるところだが、大人しく待っていた方が身のためだ そう言い聞かせて、待っていた 中々戻ってこない 疲れてきたので、しゃがみ込んだ 声?音?は、まだ聞こえてくる 人の話し声?も聞こえる気がする セーフハウスの周りも綺麗な場所とは言えないが 聖護がいる地下室は、ホロによって綺麗に整っているし 物もシンプルで良い物だと思った 布団の肌触りの良さは、図書館の物に並ぶ気がする 窓の外の景色は、彼のいない間は好きにしていいと言われているので 水槽にしたり、森にしてみたり色々試してみたが 本棚のホロが一番落ち着くので、そうしておくことが多い たまに過ぎていく人たちの服は綺麗とは、お世辞でも言えず 自分の着ている服が異質なのかと思うくらいだ 以前に街中を歩いたときも、着替えさせられたのだから 時代遅れなのだろう・・・ かわいいと思うのだけれど・・・ 『・・・・?』 「・・・・・新零」 視界に見覚えのある靴が入り込み すっと耳を塞がれた 『?』 「・・・・・・・」 少し手間取ったが、問題はなさそうだと、彼女が待っている場所へと足を進めた 体力のない新零のことだから、どうせ座り込んでいるだろうと予想すれば その通りだった 小さく丸まったそれは、髪が白い故か、彼女の雰囲気故か、そこだけ明るく見えた 「・・・・・・・!」 近づいて行くと声が聞こえてきた どう聞いても、情事の声や音だ そんな声が聞こえる中、平然としゃがみ込んでいる新零に近づき耳を塞いだ 「君には、少し早い」 『・・・ねぇ、声聞こえる?』 「・・・・・・・・・ああ」 『何の声?』 「・・・・・・・・・」 『あと、ロリコンって、どういう意味なの?』 「・・・・・・・・・」 自分のいない間に何があった とりあえず、場所を変えようと立ち上がらせ もう少し明るい場所へと移動した 『それで、答えは?』 「・・・官能小説を読んでいてもわからなかったかい?」 『・・・・・・喘ぎ声?どうして、』 「身体を売っている女と買た男がいただけだろう?そういう場所だ」 『言われてみれば、そうね、私も声をかけられたわ』 「・・・は?」 『え?いくらかと聞かれたわ』 「何もされなかったのか?」 『されなかったわ。私なら大金を稼げるだとか、私を買った人はロリコンだとか』 「・・・・・・・・・・」 『意味は?』 「意味か、色々あるが・・・幼女・少女への性的嗜好や恋愛感情持つ者のこと・・かな」 『・・・・・・・・』 「そういう目で僕を見ないでくれるか」 『そういう趣味じゃないって、そういう意味だったのね』 「僕は、君を気に入って側に置いている、何か性的なことをしたか?」 『してないわ、何を思っているかはわからないけれど』 「君は、年齢と見た目が合っていない・・・気を付けた方がいい。君みたいな容姿に欲情する者もいる」 『聖護は、しないのね』 「・・・・・・・しないよ」 『官能小説で思い出したけれど、聖護は持っていないの?本棚に見かけなかったけれど』 「・・・好きなのか」 『・・・未知の世界ね、何を言っているのかさっぱり』 「・・・・・・・」 『それから、貴方は恋人とかいないの?』 「いないよ」 『そう、なら恨みで殺されたりしないわね』 「どうして、そうなる」 『女の嫉妬は怖いと書いてあったわ・・・世間から見たら、同棲していることになるのでしょう?』 「同棲というのは、男女の関係のある2人の話だ。新零は居候、もしくはペット」 『ペットは酷い』 「君は、僕の可愛い子猫だ。ほら、鳴いてみなよ」 『・・・・嫌よ』 顔に触れて、上を向かせる むっとして、少し膨らませた頬をつついてやれば 眉間に皺が寄った 「不機嫌そうだ」 『随分と楽しそうね』 「君が思春期の少女だと言うことを思い出してね。閉鎖空間でも、そう言った感情の発達が見られるとは」 『聖護にもそういう時期があったの?』 「・・・一応、あったんじゃないかな」 『ふーん』 「興味がないのなら、聞かないでくれるか」 『・・・ぅいあい』 両手で頬を両側へ少し引っ張った 「変な顔だ」 思わず笑ってしまう 放せと僕の手を外へと跳ねのけたせいで さらに引っ張られた頬に痛みが走ったらしく 頬をおさえてしゃがみこんだ 「馬鹿だな」 『うるさい・・・・・・・・?』 にゃぁ 「・・・猫か」 『・・・・・・猫?本物初めて見たわ』 しゃがみこんだ彼女の元に来た白い子猫 親猫とはぐれたのだろうか 『本当に、にゃぁと鳴くのね。かわいい・・・』 「触らない方がいい」 『・・・どうして・・・あぁ、病気持ちかもしれないものね』 ごめんね、と愛嬌をふりまく子猫へと声をかける様子を眺めた 泉宮寺宅での発言から、前よりも感情が豊になったように感じる ごめんねと言った、彼女は“しゅん”という効果音が似合いそうだ すっと立ちが上がった新零を連れて 別のセーフハウスへ物を取りに行った ←→ 目次 |