1 新零と名付けた少女と暮らし始めて数年経った 彼女の身長は10pほど伸びた ・・・伸びる要素がどこにあったのか、全くわからないが それでも140cm弱 やはり、小さい そして、肉がない 片手で持ちあがる 少しは現代人になった デジタル機器の扱いも覚えてきたのだ・・・ 言葉は前よりもずっと流暢になり 色相も変わらず濁らない 「お宅の子猫は、元気ですか?」 「・・・元気だよ。今頃ソファーに転がって本でも読んでいるんじゃないかな」 「相変わらず、可愛がっていますね。初めて見たときは、違う意味で犯罪者かと思いました。」 「・・・僕が、そういう趣味に見えるのか。チェ・グソン」 「見えたんですよ・・・貴方は気づいていないかもしれませんけど。 あの子猫の話をするときは優しそうな顔をしてますよ」 「彼女は、僕を飽きさせないんだ。見ていて楽しいよ・・・そういう君にも懐いているようだったが?」 「最初は、かなり威嚇されましたけど。慣れたら、懐いてくれましたよ」 「・・・餌付けでもしたのかい?」 「よくわかりましたね」 「僕の時もそうだ。シュークリームに釣られてくれた」 「本当に、動物的ですね。彼女」 「そこが妙に癖になるよ。君もきっとわかるようになる」 「そうですね。・・・女性としての魅力も十分だと思いますよ」 「・・・君こそ、そういう趣味だったのか?驚きだな」 「譲ってくれるんですか?」 「まさか。新零は、誰にも渡さないよ」 「小柄ですが、あの美しさはなかなかいない。悩ましげな表情も、貴方に似た鋭い表情も色気があると思いますが」 「それは、ただ眠たいか、目が疲れているだけだと思うけどな。君には、そう見えるのか」 「えぇ」 「彼女の機嫌を損ねさせるのはやめた方がいい。力はないが知識は有り余っている」 「引きこもりなのが、もったいない」 「たまには連れ出しているんだが」 「貴方も随分と過保護ですねぇ」 「そうかな」 「しかし、彼女の本当の父親が潜在犯落ちし、 厚生省の研究員として働いていると聞いたときは驚きましたね。 その研究に、彼女を使おうとしたのか、はたまた別の理由か・・・彼女には言ったんですか?」 「言ったよ。新零は、特に気にする様子もなかったが。 自分に何の用があったのか、それは知りたいらしい。昔ほど、親に固執しなくなった」 「ダンナが居ればそれでいいと?」 「それは、どうかな・・・ 新零の場合は、自分を見てくれる人間と本を読む場所さえあればいいように感じる」 「学校には行かせないんですか?戸籍だって作ることもできたはずでしょう?」 「彼女には学校なんてものは向いていない、本を読ませた方がずっと有意義な時間になる。 戸籍も・・・必要ないね。新零の寿命も、もってあと数年だろうしね」 「・・・?」 「心臓を患っていてね。体も弱いんだ。彼女を連れ出した頃に1度病院に連れて行ったが もって後10年。心臓発作の回数と重さで、前後はするそうだが」 「今の医療なら治りますよ」 「もともと死ぬつもりだった。そこまでして生きようと思っていない、寿命を全うしたいそうだ」 「寂しそうですね」 「そうかな」 「ロリコンというより、シスコンですかね」 「・・・・・・・・・・・・。」 「彼女、元は知りませんが、貴方に似ていますよ」 槙島聖護という人間は、彼女の話をするときは優しげな表情になる 一体どんな女性かと思えば まだ学生の区分に当てはまる少女だった 彼と似た白い髪に 人形とも見間違う美しさを持ち合わせ その知識は、偏りはあるものの賞賛に値するものだった 初対面では、それはもう威嚇された いや、怯えられたが正しいのかもしれない まるで小さな白い子猫 体の割に態度や口調は大人びており不思議な存在感を放っていた 2度目の機会には手土産にお菓子を持っていた その時の目の輝きは、年齢相当いや、下かというほどで 思わず笑ってしまった 彼の可愛がりようには驚いたが それを気にせずに本を読む彼女にも驚いた 不思議な関係だ 男女の関係もなく 兄妹でもなく 面白いからという理由で家に置いている彼と 人のいる空間と本があればいいという彼女 彼は、彼女をペットのようだというが その目は、決してペットを見る目ではない 本当に変な関係だ ←→ 目次 |