11 「マキシマ」という男は実在した あの娘も生きていた 六合塚から受け取った情報には、 あの白髪の娘は、結崎愛華と学園では名乗っていたらしい 登録されている写真は本人のものだが その名前や登録されている情報は同名の別の人間の物だったことがわかった さらに、あの時 娘の隣にいた生徒に見覚えがあり過去の資料を振り返れば 以前調べた、椿の一人娘だとわかった エレベーターから上がった死体 図書館から消えた娘 椿の名前 同級の生徒は、消えた彼女のことを心配していた 椿菖蒲は、何かを隠しているようだったが学園の囲いの中では詳細は聞くことができなかった 教師からの情報の中に心臓発作で倒れていた娘を マキシマが運び、送り届けたというものがあった 前日の夜も一緒だった同級の2人は 彼女が、学園に来る前に男と同居していたこと、今も連絡をとっていたこと そのことを両親は知らず、家出中であったと言っていた この同居していた男がマキシマである可能性がある そして、娘の画像を街中カメラの録画記録 その他すべての検索を行っても何一つ情報が得られなかった 久しぶりの我が家だと思ってしまった自分がなんだか恥ずかしい 戻ってきて数日経ったころ、私を送ってからすぐに出かけた彼が帰ってきた 「少し、雰囲気が変わったな」 『・・・?』 「すっきりした顔をしている。学園生活で得た物は多かったと?」 『そうね、あんなに笑ったのは初めてだったかもしれないわ それに、彼女と会ったことで、あの人と切りを付けようと思う・・・』 「・・・・・」 『聖護?』 「いや・・・」 『・・・・聖護くんは、私がいなくて淋しかったと』 「勝手なことを言ってくれるね」 『そういう顔に見えたからよ』 「・・・・・」 『あの注射器の中身は睡眠薬じゃぁなかったんでしょう?』 「・・・・・」 『これは、勘だけど。・・・私だったら死んでいた、違うかしら?』 「・・・動物だな」 『・・・・・どこまで本気なの?』 「少し、賭けをしてみたくなったんだ」 『・・・聖護の特別も楽じゃないのね』 体を起こして、彼の方へ歩いた 『椿の家には、もう何もしないで』 「これも変化か、君は他人に興味を持たなかったというのに」 『・・・・・』 「いいよ。僕は椿の家に手を出さない・・・彼女や彼女の母親には干渉しない」 『・・・・・・・・うん』 淋しさは感じた 目の前の男は、私が 椿に、母親に固執しないのなら条件を飲むということなのだろう わざとらしい言い方に、息をついた 「公安局刑事課の執行官の名前だが、狡噛慎也というそうだ」 『狡噛慎也・・・』 差し出された画像を見て、確信した。やはり、あの男のことだ 「もとは監視官だったらしいが、藤間の事件の時を境に犯罪係数が上昇したそうだ」 『・・・・・』 「・・・どうした?」 『私、言ったわよね?』 「?」 『図書館で、あの場所に来たのは聖護が2人目だって』 「・・・・あぁ」 『1人目は、この狡噛慎也という男だった』 「狡噛は君の事を知っていたということか・・・学園で接触はしたのか?」 『目があったわ。多分、向こうも気づいていると思う・・・』 「と、すると僕と君に関係があるとも察していることになるか」 『あ、それに、うっかり2人に話しちゃったから、同居していることも知っていると思う』 「椿菖蒲が余計なことを話せば、僕が連れ帰ったことも知られているだろう・・・・っ」 『楽しそうね』 すでに計画が決まっているのか機嫌よく笑っていた 「君も見に来るといい、面白ものを見せられそうだ」 『貴方のいう面白い物ってロクなものがないわ』 「つれないな・・・・あぁ、そういえば」 『・・っちょっと・・・っやめ』 近づいてきた手の動きに見覚えがあり、よけようと後ろに下がろうとしたが 無駄な抵抗だったようだ 「君が、くすぐられるのが苦手だとは思わなかったな」 『・・・・・・・』 先ほどまで笑い転げていた新零の乱れた髪を手櫛で整えた 「笑った方が、かわいいよ新零」 『・・・・余計のお世話よ』 恥ずかしそうに眉間に皺をよせ、そっぽを向いている彼女がなんともおかしい 『だいたい、部屋に盗聴器をつけるなんて何考えているのよ、この変態。ロリコン』 「否定は、しないかな」 『・・・・・』 「全部は聞いていないから安心しなよ」 『・・・・・・・・』 「あぁ、そうだ。君は、そんなにトマトジュースが嫌いなのか」 『・・・しっかり聞いているじゃない』 「談笑の序盤だったと思うが?」 『それ以降は聞いてないのよね』 疑わしげな目を見ながら肯定した 事実、それ以上は聞いていない 『・・・・・・・』 「?」 『・・・なんでもないわ』 「残念ながら、そういったことは僕には効かないよ」 『・・・・・・・・』 不機嫌そうに、こちらをじろじろと見ている どうやったら、仕返しができるかを考えているのだろうか 「ふっ」 『・・・・・手を放して』 「どうして君は、そうなるのか」 『貴方が男だからよ』 「レディとして、それはどうなんだ」 蹴りあげられた足を掴みながら、押し返す 運動神経はお世辞にも良いとは言えないが、身体の柔軟さは窺える 「それに、君は、裸足だということを忘れたのか?」 『?・・・っ!!』 「第2ラウンドと行こうか」 『嫌っ・・・』 床に座り込んでいる新零の頭を撫でれば 手で払われた 少しやりすぎたか それから数時間 彼女の様子を気にすることなく読書をしていた ふと後ろ振り返るが彼女の姿は見当たらなかった だからといって問題があるわけでもなく、次の本を手に取った いつものことだ 自分以外に人がいるとは思えないほどに物音一つしない 「新零?」 もともと1か所に居続ける性格ではないため 別の部屋にいるのだろう あまりの静けさに本をテーブルに置き腰を上げた 「・・・!!」 『・・・・・・・』 どちらか判別がつきにくい 人のベッドを腹いせに使って落ちた または、発作で倒れた 「・・・・・」 『・・・・・』 もう何度目だろうか 彼女の身体を抱えながら思う 『・・・・・驚いた?』 「・・・・・・・・・驚かせるには、中途半端だ」 『それは・・・残念』 「・・・・・・・」 どちらだったのだろうか ベッドに腰掛けさせれば 足をバタバタと動かした 髪が影になり表情は見えないが、誤魔化しているようにも見える よく考えてみれば 最後に検査をしてから5年経っており 自分が見ている限りでも少ないと言えないほど発作は起きている 自分がいない間にも起きているとすれば・・・ 「体調が悪いのなら、何か言ってほしいところだな。同居人として」 『・・・今は、平気よ』 「今は・・・か」 『心配してくれるのね』 「まぁね」 『ありがとう、聖護。・・・でも、今は嘘だから』 「・・・・・・」 『来るのが遅くて寝ちゃったじゃない』 「・・・・・・・・・」 『まだ疑ってる?ベッドの下に置いてある本を見てもっ・・いたっ?!』 「・・・・・」 ベッと舌を出した新零の額を指ではじき、息をつきながらベッドの下を除けば ご丁寧に閉じられ、栞の挟まれた本が置いてあった 「君は、狼少年を知っているかな?」 『もちろん、知ってるわ?』 「・・・・・・」 『・・・怒ってる?』 「いや・・・」 何を考えているのかわからないと言う顔で、自分を見上げている 『?』 「・・・・」 不思議そうな顔をしていたが 急に嫌そうな顔をして慌てて、手にしていた本を奪い取り部屋を出て行った また、くすぐられると思ったのだろう・・・ 「この状況で、その判断か」 自分を異性として見ているとは思えない 少しだけ見せた執着心には気づいたというのに だから、何だというのだ 片思い? 「ふっ・・・お笑い草だな」 姿の見えない彼女を探した なぜか? 心配したからだ なぜ? 「・・・認めるよ」 君がいなくなったら、きっと・・・・・・ 賭けたのは、彼女ではなく、自分だ ←→ 目次 |