14 “犯罪係数0.執行対象ではありません・トリガーをロックします” 少し待っても執行されることはなかった 私に向けられたドミネーターは、私を犯罪者と判断しなかったようだ どこかで聞いたような声に視線を前に向ければ 先を歩いていた2人は立ち止まり その声と聖護が会話をしている 工事現場の影から、同じ場所へ出れば 下にいた公安の人間にドミネーターを向けられた こちらを見た常守朱は、先ほどの彼女と同様に どうして、という顔をする “どうして、こんな子供が、この男と共にいるのか” そんなところだろう 「彼女のことも、少しは知っているんだろう?狡噛は、新零のことを知っていたはずだ」 「・・・図書館にいた彼女を外へ出したのは、やはり貴方なのね」 「あぁ、その通りだ」 『私も貴女を知ってるわ』 「こうして会うのは初めてね。ラパンブラン」 『初めましてで、いいのかしらね。常守朱さん』 「・・・あなたたちには複数の犯罪についての重大な嫌疑がかかっています。 市民憲章に基づいて同行を要請します」 市民憲章なんて、戸籍もない私には関係のない話だ 大体、私は誰も殺していない 罰せられるとすれば幇助の罪だろうか ドミネーターが動かないのか、どうすることもできずにいる彼女を見た 私の犯罪係数は、ゼロだと判断された 色相も変わりなければ、おそらくクリアカラー 聖護のいう善良な市民なのだろうか 少しだけ動揺する なら、なぜ? 犯罪係数が高かったのなら 今の状況を理解できた だが、犯罪係数に問題もない 本当は、生まれたときも色相は濁っていなかったのではないか 犯罪係数も高くなかったのではないか あの男は、私の何を異常だとした 何のために・・・ 『!』 悲鳴に、はっとして思考から離脱した 聖護の後に、再びドミネーターを向けられたが やはり変わりないようだ 自分と年齢が近いだろう人間が聖護に切りつけられ悲鳴を上げ 泣いているというのに 痛そうだ、かわいそうにと他人事 助けるという選択肢すらない それがおかしいのだろうか もしも、彼女の変わりに椿菖蒲だったら 学園の2人だったら 私は、助けることができるだろうか 猟銃とドミネーターの両方を手にした姿は、あまりに滑稽で 笑ってしまいそうだった これが、シビュラに従って生きる人間? しかし、改めて考えると シビュラに弾かれるというのは、 色相が濁ることを指すのか それとも濁らないことを指すのか・・・ 以前は前者だと思っていたが この数年で後者ではないかと思うようになった ちらりと聖護がこちらを見た気がした 死ぬのが怖いかと聞かれれば、もちろん怖い その恐怖さえ、生を感じるために必要としてきた 聖護は死ぬことを恐れない 私に殺されても構わないとさえ言っていた 銃声は、錆びれた空間に虚しく響き このステージの終わりを告げていた 「・・・残念だ。とても残念だよ常守監視官」 ←→ 目次 |