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聖護が正しいと思ったことはない
死人が出る行為が良いと思っているわけではない
ただすべてを否定するのも間違っている

公安の人間が正しいのか
それも何か違う
彼女を見る限りは、そう感じた


私にとっての善と悪は、なんだろうか





「新零」

『?』

階段を下り終わった少し先で聖護が振り返っていた

『何?』

「・・・・・」

カンカンと音を立てて、こちらへ戻ってくる
一体どうしたというのか


『!』

「自覚がないか」

額を合わせ、至近距離で視線を合わせた
まだ私が階段にいるせいか、変な感じがする

「熱があるわけでもない」

『えぇ』

「僕なりに、君と歩くときは、少し速度を緩めているつもりだ」

『?』

「今日は、なぜ後ろばかり歩く」

『・・・・・』

「熱もないのに、息が荒い」

『・・・!』

「考え事をして、気を逸らし。気づかないようにしていた」

『・・・・・・・・そうね』

体力の低下
・・・前よりも疲れやすくなっているのだろう
聖護の歩くスピードが、前より早くなることはきっとない
と、すれば
私が追いつけなくなったのだ

『狡噛慎也は、死んだの?』

「いや、止めは刺さなかった」

『まだ楽しめると?』

微笑
肯定ということか

「新零」

『?』

「一応、追われている身だ。大人しくしていてくれるか?」

『?・・っちょっと』

ふわっと身体が浮き肩に担がれる
カンカンと音を立てて、歩く聖護の背中に
わざとらしく手をぶつけた

「それは、抵抗しているのかな。何が不満だ?」

『レディとして少し不満よ』

「横抱きにすると両手が塞がるから、少し我慢しなよ」

『・・・・・』

「・・・・・・浮かない顔だったが、彼女に同情でもしたのか?」

『同情?・・・してないわ。ただ・・・・私ももうすぐ死ぬのかと思っただけよ』

「・・・・・・・・」

『それと、』

「・・・・・」

『少しだけ、羨ましいと思った。
 彼女には、常守朱の様に彼女の死を嘆いてくれる人がいる。
 きっと両親や親戚に弔われるのよ』

「君は、随分と淋しがり屋だな」

『昔からでしょう?淋しかったから、あの場所で死んでしまおうと思った。
 孤独は人を殺せるなんて、よく言ったものだわ』

「孤独か」

『聖護は、孤独なの?』

「シビュラが浸透した世界には、孤独でない人間なんていない」

『・・・なんだか寂しい世界ね。本の中の方がずっと暖かいわ』

「・・・・・・新零の言っていた、暖かい場所はここではないと言いたいのか」

『私は、今、孤独だなんていってない。聖護がいるもの、あの場所よりずっと暖かい
 でも、外から見たこの世界は少し寒いと思った。それだけよ・・・っ』

「・・・・・・・」

『っ・・・・気持ち、悪い』

「?」

『・・・・降ろし・・て』

「もう少し我慢しなよ」

『気持ち悪いのよ・・・乗り物酔い』

「僕を乗り物扱いするのか」

『・・・・・・・・っ』

「・・・・・・・・」



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