番外8 『名前からして、クリスマスが誕生日っぽい』 「そう?」 『聖って字が特に』 「なら、その日に何かしてくれるのか?」 『祝う筋合いはないと思うけど』 「君の誕生日にケーキを買ってくる僕は、なんて妹思いなんだろうな」 『貴方の妹になった覚えもないし、買ってきてっておねだりした覚えもないわ』 「なら来年はいらないか」 『欲しいです』 「ふっ・・・正直でよろしい」 初めて私の誕生日を祝ったのは聖護だった “おめでとう”と言われて、何が?と返したのは今でも覚えている ふんわりとしたスポンジに白くて甘い生クリームが塗られ そこにイチゴが乗っているのだ とても、おいしかった 『貴方の誕生日を聞いたところで教えてくれないだろうから 仮にかの人の日を誕生日として 私に何かしてほしいの?』 「本来、プレゼントは相手への気持ちがこもっていれば、何だっていい」 『つまり、自分で考えろと』 「あぁ」 『・・・・・・・難しいことを言うのね』 「そうかな?」 この男の喜ぶことなど 知りたくもない 『・・・私にあげられるものなんて、私しかないわ』 「随分と大胆な発言だ」 『・・・・・?』 「なら、この口で何かできることをお願いしようか」 男の人差し指が、そっと私の口に当てられる 『口?』 「あぁ、色々ある」 『そうね』 口でできること。 やられたらやりかえす と、いうのしか私の頭にはなかった。 難しいのだろうか むしろ噛みついてやろうか 「それで、この状況か」 『難しいのね。貴方、女慣れしてるわ』 「・・・・・」 なんともおもしろい光景なので 合格点というところだろうか 首元でごそごそとしている彼女の頭を撫でてやる 膝にまたがって向かい合う形だ この状況を厭らしく受け取るものもいるだろうが なんとも、生暖かい気持ちになるのはなぜだろうか 首元に当たる、ざらつく感覚から、たまに当たる堅いもの まるで猫か何かがじゃれついているかのようなそれに 自然と笑みがこぼれる あげくできないと、不機嫌そうな息が耳元に感じられる おそらく、腰に手を回そうと彼女にその気はなく 自分もその気はない もしも何かしら面白い反応をしてくれるのなら、その価値はあるのかもしれないが 今は、痕をつけることしか頭にないのだろう 聴こえてくるリップ音が、なんとも厭らしい響きを持ってきた 「・・・・寝たのか」 『・・・・・・・』 動かなくなったので不思議に思えば 人の肩を枕替わりに寝息を立てているではないか かわいらしいと思えるのは 新零だからだろう 起こさないように、そっと横にしてやる 軽いとはいえ長時間人が乗っていた身体を少し解し首元に触れる 「・・・・・・・」 鏡、鏡・・・ 「女遊びですか?」 「?」 襟元から見えるそれを指差せば 「あぁ」と思い出したかのように嬉しそうな顔をした 「痕だけじゃなくて、噛み傷まであるじゃないですか」 「かわいいものだよ」 「・・・・・・・女でも作ったんですか?」 「まさか」 「え、」 なら心当たりは1人しかおらず 結局のところ、この2人は何がどうなっているんだ 「よほど、気に入らなかったんだろうな」 「やり返されたんですか」 「誕生日プレゼントという名目でね」 「・・・・・・・・・・」 「君は、何か勘違いをしている。 前にも言ったが、僕は彼女と何もしていないし、何もない、何をするつもりもない」 「いたいけな少女相手に、何させてるんですか」 「頑張っている姿は、とてもかわいらしかったよ。 それにこれは、彼女からしたことだ」 「大体、どうしてそんな話に」 「僕の名前が、かの人の日に誕生日っぽいからと、勝手に言い始めてね 何かして欲しいことはないのかと聞かれたから、口でできることとお願いをしただけだ」 「旦那。1つ間違えたら犯罪です、セクハラですよ」 「何を今更。実際、保護と言う名で未成年を軟禁しているんだ。 犯罪以外の何物でもないじゃないか」 「・・・・・・・・・もう、何も言いませんよ」 「本当さ、新零って猫みたいなんだよ」 ←→ 目次 |