番外12


『・・・・・』
「・・・・・」

世界を見たいと言った彼女に、今の現状を見せれば画面を見たまま動かなくなった。何も話さず、ただじっと画面を見ていた。本で触れた世界なんて、今はどこにもない。日本の現状を理解し始めた彼女にとって、荒れた世界はもっと衝撃的だろう。
彼女はどちらを正常と思うかはわからない。おかしいのは、どちらなのか。

『・・・・・』
「まだ見ていたのか」
『見てたわ』
「それで?」
『ショックが大きくて言葉にできない』
「ふっ・・・君は色々なものに理想を持ちすぎる」
『だって本に書いてあったもの』
「何年前の本だと思っている」
『・・・でも、残っているものだってあるでしょう?世界の風景は確かに今見ていた通りでも、思想まではわからないわ。形あるものはいつかは壊れるっていうじゃない』
「なら君は、それを確認するために世界に渡るかい?」
『・・・・・・・・』

開きかけた口を閉じて、じっと画面へ目を向けた。何かを考えている顔だ。興味はあるが身体ついてこないのは彼女自身が一番わかっている。手術を受けて健康な身体を手に入れられれば、それが可能であることをわかったうえで、何を優先するかを考えている。・・・じっくりと時間を取ってから首を横に振った。


『それも魅力的だけれど、今はいいわ』
「そうか」
『今は、他にもっと魅力的なものがあるもの』
「それは、それは」
『・・・きっと、世界では人が人として生きているのね。その判断がどうであれ』

話しを終えても幼い子供のように、口を少し開けて食い入る様に画面を見ている様子を眺めた。彼女の目には世界はどう映ったのだろうか。言葉では表しきれない何かが今彼女の中で埋め尽くされているはずだ。もしそれら全てに答えを出すのだとしたら、彼女の今の選択では時間が短すぎた。


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