番外13

新零は、孤独を酷く怖がる。現在のシステムの元では少々特殊な育ちのため、そういう感覚が麻痺しているのかと思えば、そうではなかった。幼いころの母親の記憶、本から得た情報と憧れは、彼女を形成する過程で、本人の気づかないうちに淋しいという感情を植え付けた。孤独に気づかない多くの人間の中で、システムからも親からも切り離された彼女は、その孤独を理解していた。

何も言わずに自分に抱き着いた彼女の背を撫で、頭を寄せる。背にまわった手はシャツを強く掴み何かを訴えていた。欠落してしまえば彼女はもっと楽に息ができたのかもしれない。いや欠落してしまっていればただの人形になってしまうだろうか。

「僕の目には君が写ると言ったはずだが?」
『・・・・・・ん?』
「・・・君は、自分を可哀相な子だと思うのか?」
『・・・・かわいそう?』
「あぁ」
『聖護は私のことを、かわいそうな子だと思うの?』
「・・・同情はしない」
『・・・・・・・・思ってるじゃない』
「君がこの時代に生まれてしまった事にね」
『・・・・もし、私の物語があるのだとすれば、きっと可哀相なヒロインとして書かれるわ』
「・・・・・・」
『・・・でも、貴方のところに来たところから、ただのかわいそうなヒロインは、現実を知って本当にかわいそうなのは誰なのかを考え始める』
「ふっ・・・君も十分、自分のことをかわいそうだと思っているじゃないか」
『そうでなければ、私はもっと楽観的でお気楽な子になると思うわ』

自分の方に預けていた頭を傾けて上目づかいでこちらを見上げた。新零が自分と同じ体質だとして、きっと大きく異なるのは彼女がたくさんの負の感情を抱えていることだろう。中でも嫉妬や恨みは犯罪係数を上げやすく、色相を濁らせやすい・・・それでも彼女はシステム上、問題ないと判断されるのだ。近頃になって、あきらめの部分を楽観的に塗り替え始めたが、それでもまだ彼女の中には“どうして”が付きまとう。
だからこそ、今こうして人の体温に頼り、自分が1人でないことを実感しようとする。年齢よりもずっと幼い行動だ。まだ自分にくっついて離れる気のない新零を撫でつつ、この原因を探せば1冊の本が転がっていた。

「・・・・・・苦手なのか」
『・・・・・・・』

あぁ、自分は考えすぎていたのだろうか・・・。いや、考えは近いところを通っているだろう。だが、今回は別に淋しいからでも何でもないのだろう。

「ホラーが怖いなら、序盤で読むのを止めればいい」
『・・・・・・序盤でやめたら、どうして起きたのかわからないまま終わるじゃない』
「なら最後まで読んで、全て解決できたのか?」
『・・・・2点、何も書かれてなかったわ』
「・・・・・・・・」

それに気づいたものが味わえる怖さというものなのだろう
思い出させるなとばかりに低く唸る新零の髪をかき混ぜて、笑ってやった

「新零は漫画を読んだことがあるかい?」
『・・・漫画?ないわ』
「なら僕のとっておきを貸してあげようか」
『とっておき?』
「あぁ」

少し気がそれたのか、こちらを見上げた瞳が興味津々とばかりに訴えた。こういう単純さもきっと彼女の良さなのだろう。そして、この小さな感情の誤差を見抜き切るには自分にはもう少し時間が必要なようだった。

『・・・でも、急にどうして私がかわいそうかという話になったのかしら?』
「・・・・・・・」



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