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先生から連絡を受けたとき、結果は2人で聞きに行きますと伝えた。
鑑定結果を目の前に、自分は素直に嬉しいと思った。そして、自分の両親の兄弟に彼女を手放した人間がいることが怖く、申し訳ないと思った。隣で聞いていためめは嬉しそうに先生に渡された報告書を眺めていた。
「独歩さん、このこと身内には内緒にしませんか?」
「・・・でも」
「私も家族に言うつもりはないんです。だから、独歩さんも聞かれない限りは内緒にしておいてください。たぶんお互いのためにも、それがいいと思います。それと、独歩さんは何も悪くないので負い目を感じたりしないでくださいね」
「・・・・・」
「小学生のころに学校で出された血液型の課題を熟すうちに気付いたんです。この家にO型の子供は生まれない。でも物心がつく前に椿の家にいたので、そうだと知っても何も変わらずにいられたし家族と不仲になることもなかったんです。ただ高校に入る前に両親に経緯を教えられて、色々考えてみたら少し寂しく思ったのも事実です。だから、この結果を私は素直に嬉しいと思っています。独歩さんの迷惑でなければ、今後とも仲良くしたいです」
「・・・・こちらこそ、改めてよろしくお願いします」
「なんだか、独歩さんに悪いことしちゃいましたね」
「俺は大丈夫。だから、めめも気にしなくていい。俺も嬉しいから」
「ふふっ、独歩さんが従兄で本当に嬉しいです。銃兎さんにも従兄だといいなぁって言ってたんですよね。そうだ、もう1回写真撮りましょう!」
「え?え?」
「私が撮ろうか?」
「あ、先生ありがとうございます!」
「ほら独歩くん、リラックスリラックス」
「は、はい!!」
「では、撮りますね」
おそらくシャッターが切られてすぐだったと思う。シャっと扉が開く音がしたかと思えば、一二三の威勢のいい声が響いた。
「一二三君、ここは病院だから、もう少し声を抑えて」
「そうだぞ一二三!大体、なんでお前が」
「だって今日だろ?独歩ちんの従妹がぁああああ・・・・・・・・お、おん、おんなっ」
「お前、言ってることとやってることが無茶苦茶だぞ。早く、ジャケット着ろよっ!」
「・・・麻天狼」
「めめ、この前言っていた幼馴染の伊弉冉一二三。あいつ女性恐怖症でジャケット着てないとあんな感じになるんだ・・・驚かせてすまん」
「いえ、大丈夫です。銃兎さんと左馬刻さんも怒鳴り散らすと声が大きいんで慣れてます。あの2人はドスがききますからね」
それを聞いて思わず胃をさすってしまった。
あれ、そういえば呼び方が変わったような気がする。
「先ほどはお見苦しいところを見せてしまい申し訳ありません。改めて、伊弉冉一二三です。よろしく、子猫ちゃん」
「椿めめです、よろしくお願いします」
「ところで、結果はどうだったんですか先生」
「あぁ、2人は従兄妹で間違いないよ」
「それはなんて素晴らしい!!めめちゃん、もっと近くで顔を見せてくれないかな」
「やめろ一二三!!」
「こうしてみると、本当に兄妹みたいじゃないか。先生、従兄妹でもこういったケースはよくあるんでしょうか?」
「従兄妹似という言葉があるくらいだからね、遺伝子の配列次第では十分起こりうることだよ」
「さぁ君たち、申し訳ないんだけど。私もそろそろ会議に出なければならない時間だから」と先生に退室を促され思わず頭を下げた。俺と一二三が部屋を出て、後からめめが出て来た。正面から改めて彼女を見ると、パーツの1つ1つがそっくりというわけじゃないのがわかる。男女の差もあるし、全く同じなわけでもない。それなのに“似ている”と言われるのはなんだか不思議な気分だ。人類の神秘てきなあれか・・・。
「では、めめちゃん、独歩君。僕はこれから仕事に行かなければならないんだ」
「はっ!さすがナンバーワンホストさんですね!お仕事頑張ってください!」
「応援ありがとう!良ければ是非、僕のお店にも顔を出してほしいな!それでは子猫ちゃん、ご来店お待ちしております」
病院を出て早々に分かれた一二三を見送り、彼女を駅まで送るために歩き始めた。
「騒がしい奴ですまん」
「一二三さん、心配して様子を見に来てくれたんですよね」
「・・・うん」
「素敵な人ですね」
「・・・・いい奴だよ一二三は」
「女性恐怖症、私が思っていたよりもすごかったのに、ホストクラブで働いてるなんてすごいです。私が力になれることがあったら、なんでも言ってください」
「ありがとう、一二三にも伝えておくよ」
にこりと穏やかに笑う様子を見ると、肩の力がすっと抜けた
「それにしても、こんなことってあるんですね」
「そうだな、正直、入間さんから突然電話がかかってきた時は心臓飛び出るくらい驚いて1回携帯落としたんだ」
「バチバチしてましたもんね。私も銃兎さんが話を持ち掛けて来るとは思っていなくて驚いたんですよ。本当、面倒見のいい人です。後で報告入れておかないと。あ、今からしてもいいですか?」
「あぁ」
また、あのウサギの付いた携帯電話だ。この前、連絡先を交換した方にはついてなかったから、あれは仕事用か。・・・仕事用にウサギのマスコットか。あの人、何も言わないんだな。少し意外だ。
「そうだ、今度ゆっくり食事でもどう・・かな。俺が都合つけられるかわからないけど」
「是非!!私も大きな案件入っちゃうと難しいので、お互いドタキャンありでも文句なしってことで」
「それだと助かる」
「では、また会いましょうね!」
人混みに紛れていく彼女を見送って、自分もその場を後にした。
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