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相手の改造された違法マイク、ここ最近出回っていたものよりも性能が上がっている。奮闘した部下を早く安全な場所へ移動させなければならない。医者を呼んで早く処置をしてもらわなければならない。
一刻一刻と状況の変わる中で、たった1つのボロが最悪の結果に繋がる。そんなことは、わかっているはずだった。どこかで下手な手を打ったのは間違いない。だが、こんなバカなことをする人間が上層部にいるということに吐き気がする。忌まわしい。一体誰が配置変えの命令なんてだしやがったんだ。
咳きこんだ時に吐き出した血から、手元を離れてしまったマイクに視線を移す。早く取りに走らなければならないと分かっている。だが、ここで動けば部下に死人が出てもおかしくない。傍にあるマイクを拾えるだろうか。散々自分が叩きのめしたのだ、向こうの人数も減っている。ダメージだって負っている。まだ行ける。

「お兄さんのマイクもーらい」

緊張感の漂っていた空間に、間の抜けた穏やかな声が響いた。
敵側から出て来たのか、奴らと似たパーカーを着て、フードを頭から深くかぶっているため顔は見えない。最悪だ。「はっ、よくやった!」と声を掛けられピースする様子に思わず舌打ちをする。

「それは、てめぇに使いこなせるようなしろもんじゃねぇぞ!!」
「えー?うちのリーダーならばっちり使いこなせちゃうから安心してよ」

軽い足取りで、敵リーダーにマイクを届けようとする様子に思わず暴言を飛ばす。情けない。喉がやられているのか、血でむせ返った。慌てて顔を上げれば、先ほどの奴が自分側に大きく山を描くようにマイクを放り投げていた。

ヒプノシスマイクの起動音がする
フードを被った奴は、自分の方を向いてはいなかった


軽やかなフロウとは裏腹に言葉選びは随分とえげつない。不思議と品があるように聞こえるのは穏やかな声のせいだろうか?しかし、それでいて威力は申し分ないのは見ていてわかる。
彼女から受け取ったマイクを起動させ、膝を付いているやつらにとどめを刺すため、ヒリついている喉に力を込める。椿が随分と良いものをかましてくれたのだ、こちらも負けてはいられない。

穏やかに笑う椿が下した手には、ウサギのマスコットが握られていた。


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