08

「めめが銃兎の部下だったとは思いもしなかった」
「1年半くらい前ですかね、彼女がうちに配属されたのは」
「元気にやっているか?」
「えぇ。少々変わり者とは、思いますが、仕事の手際も良くて助かっていますよ」
「小官が、めめに会ったころは何を選択するか悩んでいたからな。彼女の兄たちは、めめが警察官であることをあまり良くは思っていないようだった。応援はしているが、心配だとよく言っていた。」
「・・・理鶯は、彼女が」
「知っている。・・・・・だが、椿の人たちは、忘れてしまうくらいにどうでもいいことだと言っていた。銃兎も一度行ってみるといい。あそこはいい場所だからな」
「そうですね、一度・・・・・どうした、左馬刻」
「理鶯、わりいな、そろそろ帰るわ」
「左馬刻さん、呼び出しの電話もらったみたいです」
「そうか、ではまた良いものが手に入ったら馳走しよう」
「お、おう」
「え、えぇ、その時は」
「めめも良く来てくれた。感謝する」
「私も、また会えて良かった。また実家の方にも顔出してね。兄も喜ぶから」
「あぁ、そうだな」

帰りの車内は、トランクに入れていた荷物を持ったままの椿が後部座席を陣取った。左馬刻とぽつぽつと会話はしていたが、途中で椿の寝息が聞こえ思わず笑ってしまった。

「口元が緩んでるぞ、左馬刻」
「うるせぇ、そりゃてめぇもだろ」
「昨日、日付が変わるギリギリまで署にいて、今日は4人分のサンドウィッチを作って来たんだ。あんまり寝てないんだろ」
「はぁー・・馬鹿だな」
「あぁ」

多少車体が揺れても椿が起きる気配はない。助手席の男が言いたそうにしていることは、なんとなくわかるが、単細胞なくせに、こういうところは変に気を遣おうとする奴だと思う。自分が彼女に、この男と理鶯のところに行く話をした時点で特別扱いしていることは左馬刻にはわかっていたはずだ。理鶯と知り合いだったのは予想外だったが、同行を許可してしまった以上聞かれるだろうとは思っていた。
上司と部下ではあるが、自分が随分と彼女に気を許しているのは自覚している。けれど、それより進みたいかと言われると、それも違うような気がしてならない。隣の男が深く吸った、おそらく息が終わるころに、切り出してくるだろう。到着する前に、今日言うべきことを言っておかなければならない。

「・・・てめぇの女ってわけじゃなさそうだな」
「まぁな」
「はっ、まぁ話くらいは聞いてやるよ」
「お前に話すことなんかねぇよ。ただ、わかってんだろうな、左馬刻」
「へーへえ」
「必要以上に椿には関わるなよ、それから」
「いちいちうるせぇな、このウサポリ公が」
「もし何かあった時、椿の味方をしてやってくれ」
「・・・・随分過保護じゃねぇか、ついさっき必要以上に関わるなって言わなかったか」
「左馬刻」
「・・・・チッ、んなことわかってんだよ。俺様に指図してんじゃねぇぞ」
「あまり大きい声を出すな、椿が起きるだろ」

その一言で、すっと口を閉じるのだから、心配するまでもなかったのかもしれない。妹と似ていないと言っていたものの左馬刻が彼女に甘いのは女だからという理由だけではなさそうだ。

「言い忘れたが、こいつ、お前とタメだぞ」
「は?」

そんなに驚くことか?と首をかしげたくなるが、椿を何歳だと思っていたのかは聞かなかった。


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