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思っていたよりも元気そうだ
あの強気な目が気に入っていたが
状況が状況なだけに仕方がないことかもしれない
今までの自信もプライドもずたずたにされたのだ

あの母親は、幼いころから才女と言われ将来を期待されていた。ところが弱りつつある綴木の家では邪険にされ、20になるころには椿の家に嫁ぐことになった。嫁ぎ先でも彼女の力は増々強くなっていき、その力の強さは長女へと受け継がれた。

椿は頭首に女性を立てることはなかった。
分家を持たず、力のある家に娘を嫁に出し家同士で助け合う形を取っていた。本家が力尽きても、その末裔が犠牲にならないことを期待して。

男系にも関わらず、妖が見える男子は第一子のみ。2番目3番目に生まれた男子には妖を見ることも、気配を感じ取ることすらできなかった。彼らは他家から力のある娘を嫁とし、大切な跡継ぎとなる長兄を守るための娘を育てた。
もし第一子が命を落としたとなれば、力は弟たちに引き継がれていく。不思議なサイクルの中、椿の家が残ったのは奇跡に近い。姉妹と、力ある椿に来る嫁の力がなければ存続できなかっただろう。

近年もとより少数だった椿も人が減り、おそらく力も弱りつつあったのだろう。あの年寄りが現役だったのが最後だったのかもしれない。繋がりのある家の者を護衛として置く慣わしも気づけばなくなっていた。
もしかしたら、家を終わらせるつもりだったのかもしれない。跡継ぎになるだろう長兄を外へ出したのだ、そう言う考えになってもおかしくはないはずだ。
今時、珍しい話ではない


椿の家が落ちた話は、今後同じような家が出てきてもおかしくないからか、度々話題に上がる。防げることは未然に対策をとりたいのだろう。わからなくもない。

仮に終わろうとしていたのだとすれば、綴木の娘を嫁としたことで椿は力を持ちすぎた。
名家故、周囲には言えないくだらないプライドでもあったんだろうか
もし綴木でなかったとすれば、
明翠のような力を持つ娘も生まれなかったかもしれない
当時頭首だった明翠の父親の姉妹が家を助ける可能性もあっただろう

あの姉妹は、明翠が妖の血を被って以来、関わりを持とうとしなかった

『七瀬さん』

「どうした?」

『雪が来ているので、庭に降りてもいいですか?』

「あぁ、構わないが。的場はそこまで制限してたのか?」

『はい』

「まったく、うちのボスは何をやってるんだよ」

『普段は、結界やら式で固められてて力技じゃないと出れなかったりしますよ』

そう言って、庭へ向かった明翠の後姿を見送る
まるで、妖のようじゃないか


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