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「部長の方ですよね」
「え?そうだけど・・・確か、バレー部の」
「匿ってください」
「え?」
「追われてるので、匿ってください」
「・・・いいけど、そんな隠れるような場所ないよ?」
「倉庫とか」
「あぁ、それなら奥のところ」





掃除や委員会で遅くなってしまったこともあって、部活へ顔出せるかわからないまま急ぎ足で来てみれば、まだ部長も部員もいて、参加できそうだった。どちらにしろ光太郎との時間を足せば、それなりの時間はできる。さっさと着替えようと、いつも更衣室にしている倉庫に入った。特に何も考えずに電気をつけて他の部員の着替えを避けて、開いているスペースに荷物をいて制服に手をかけた。

「?!」
「・・・・・」

ガタリと音がして、脱ぎかけた制服から手を放した。ごそごそと音がする。どこからするのかと、奥へと進めば段ボールの箱が突然開いた。開くはずのない箱が開いたことにも驚いたが、そこから人が見えたことに驚いて「わっ・・」と声が出てしまった。びくりと震えた身体が情けないが驚かない方が無理というものだ。

「ごめん、別にその・・」
「・・・なんで、赤葦がここにいるの」
「その・・」
「覗き」
「違っ・・・制服、ちゃんと着て」
「?」

視線を逸らす赤葦を不思議に思えば、脱ぎ途中だった制服は多少の乱れがあった。すぐに出て行く様子はないので、こちらが言葉に従って、部活で使う道具が入っていた大きな箱に入っている赤葦を覗きこんだ

「で、なんで?」
「連携が上手く行かないから頭冷やせって監督に言われて、木兎さんがドロケイするとか言い始めた」
「・・・・かくれんぼじゃなくて?」
「あの人から、逃げ切るとか疲れるし」
「赤葦、刑事じゃなくて泥棒なんだ?」
「・・・・・・」
「スルーしないでよ」
「弓道部の部長さんに頼んで匿ってもらうことにしたんだけど」
「・・・・・・私が着替えはじめたと」
「・・・」
「なら、もっと早く声かけてよ」
「木兎さんかもしれないと思ったら、布がすれる音がするから」
「それ、覗き」
「・・・ごめん」

あまり申し訳ないというのが伝わってこないのは気のせいだろうか。相変わらずのクールさに、私に色気がないのかと複雑な心情になる。もう一度、謝った箱に入ったままの赤葦を許しつつ、着替えるから大人しく箱に入っていてもらおうと近寄れば、遠くから声が聞こえてきた。

「えっ、ちょっと」
「見つかりたくないから頼む」
「なんで、私、着替えてるだけだし」
「あんたがいたら、俺がいるってばれる」
「なんで!!」
「いいから早くっ」

何が何やらわからないまま、引っ張られて箱の中に転がり込んだ。器用に蓋を閉める赤葦が酷く近く、自分の体重を支えるための手は底に付けられず、完全に赤葦の上に乗っかっている形になる。閉まり途中の薄明かりで口を開こうとすれば、黙ってと後頭部に手が回って肩口に押さえつけられ身動きが取れなくなった。

ガラリと開けられた扉から、光太郎の声がした。近くを通り過ぎる足音が往復して出て行くのが分かった。

「誰もいねぇなら、電気消しとけよなー」

箱の隙間から入る光がなくなり、慌てた私は赤葦にしがみついた。




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