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「お前、最近、赤葦と仲いいんだな!!」
「うん」
「赤葦は、かなりいい奴だからな!!俺が保証する!!」
「最初は全然そんな感じなかったけどね」
「何?!そうなのか」
「うん、でも話してみたらそうでもないかもなぁって」
「だろ!!」
光太郎の話は、大体耳半分で聞いていた。うるさいし、抽象的過ぎてその場にいなかった私には、いまいちよくわからなかった。それでも、バレーの話をしているときは少しだけ真面目に聞いていて、1年のセッターがどうのって言っていたのは、なんとなく覚えていた。それが赤葦のことだとは思っていなかったし、苗字なのかあだ名なのかわからないそれを聞き流していた。
「新零」
「何?」
「まだ言っちゃダメなのか?俺、そろそろ限界」
「卒業するまで黙っててよ」
「ダメ、もう無理。赤葦見ると言いそう」
「・・・・」
「赤葦なら問題ないだろー?なぁ、新零」
「ダメ。光太郎の声大きいから、赤葦に言ったら、全員知ってるなんてことになる」
「じゃぁ、お前から言えば」
「別に私は困ってない」
「うううう・・・」
「唸ってもダメ」
「・・・赤葦には言っとけ」
「なんで」
「勘」
「・・・なにそれ」
急に低くなった光太郎の声に、自分の声も少し低くなった。
小学校は別だったが、中学は同じだった。昔からどこにいても目立つ従兄に道ずれにされるように表舞台に立たされた。知らない先輩に「新零ちゃん、おはよう」だとか「新零ちゃん、木兎の従妹なんだってね」と声をかけられた。それが、すごく嫌だった。見ず知らずの人に、いきなり名前を呼ばれたり、先輩数人に話しかけられたり、光太郎に悪気はないとはいえ同じ学校にいる私の話をしないでほしかった。光太郎の従妹というだけで、なぜ馴れ馴れしくされなければいけないのか・・・それが理解できなかった。
中学を卒業したら引っ越すことが決まっていた。元のマンションからそれほど離れた場所ではないが学区は変わってくる。
高校を決めるとき、本当は別の高校を選ぶつもりだった。けれど、電車通学をする気になれず、最寄りの高校から選ぶとなると梟谷を選ぶほかなく、そうなれば光太郎にくぎを刺しておく以外に平和な学校生活を送る方法はなかった。
“新零、俺んとこ来いよ”
“えー、光太郎と同じ学校とか、まじ勘弁”
“んなこと言うなよなぁ、梟谷、いい学校だぜ”
“・・・・・・”
“知り合いのいない学校より、いいんじゃねーの?”
“・・・それは”
“何かあったら、俺がいると思えば安心だろ”
“不安だよ”
“何?!”
“でも、考えてみる”
“おうおう、考えろ考えろ。聞きたいことがあったら何でも聞けよ!”
中学のころ色々なことが起きて、学んで疲れた分、高校に入ったとき随分と自分が落ち着いたことに気付いた。お多感な時期というやつなんだろう、1つ1つのことに悩みすぎていたように思う。今でも悩むことはあれど、他人の目が気になって仕方がなかったころとは違う。
「光太郎」
「ん?」
「私、かわいい?」
「ちょーかわいい」
「光太郎の前でも、ちゃんとかわいい?」
「すっげーかわいい」
「そっか」
「おう・・・って、何、急にどうした?!あ、お前、もしかして好きな奴でもできたのか?!」
「・・・・・・馬鹿じゃないの?」
「え、何、どういうこと?!」
なんだ、気づいてるわけじゃないのかと少しほっとした。光太郎にとっては、男女関係なく仲の良い人間が多いから、私と赤葦が仲が良くても特段気にしないのだろう。赤葦は、どうなんだろう。そんなことを思いながら、木兎家を後にした。
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