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「木兎のやつ、今日は一段と調子よくねぇか?」
「そうですか?」
「そういう、お前もだろ」
「そうですか?」
「なんなんだよ、お前ら」
「客席に誰か来てたんじゃない?」

横を通りすがった孤爪が、ボソっと余計な一言を置いて行った。それを黒尾さんが聞き落とすわけもなく、すぐさま客席に目をやった。たしかに木兎さんに、椿が来ることは言ってあったし、誘った手前かっこ悪いところは見せたくないので、自分のモチベーションも違ったと思う。

「どの子?」
「木兎さんは知りませんけど、俺は別にそういうのじゃないですよ」
「そーいうところが怪しいな」
「昼飯のおさまりが良かったんですよ」
「ふーん?」

疑っているというよりは、からかって反応を待っている。黒尾さんのやり口にも、もう慣れてしまった。だから気緩んでいたのかもしれない、その場に木兎さんがいないということに。

「新零見てたか!!俺の超インナースパイク!!」
「見てない!!」
「何!!」

客席に向かって声をかける木兎さんにため息をついた。それに返事をする椿も椿だが返事をしなければ余計しつこくなることをわかっているのだろう。

「新零ちゃんねぇ。赤葦は知り合いなわけ?」
「俺のクラスメイトです」
「じゃぁ2年生ってことか」
「黒尾さんが思ってるような関係じゃないですよ」
「それは、木兎が?それとも赤葦が?」
「どっちでしょうね」
「へぇ〜」

にやにやしている黒尾さんなんていつも通りのため、特に気にすることもなく、いつまでも椿とやり取りをしている木兎さんを回収して、次のゲームのための準備に入った。休憩中、体育館の外で椿と椿の友人が黒尾さんと話しているのが見え、何を話していたのかひどく気になった。どんな顔で椿は話していたんだろうか?そんな考え事は箱にしまって挑んだ第2ゲームを終えた後だった。

「お前、俺のこと新零ちゃんにどういう説明したの?」
「え?」
「すっごい髪型のこと聞かれたんだけど」
「・・・っふ」
「お前、今笑ったな」
「い、いえ、今日の椿は、黒尾さんの寝ぐせを見るために来てたんで」
「・・・・友達とそろって、色々寝ぐせのことだけ聞かれた俺の気持ちわかる?」
「・・・・」
「それに、偶然通りがかったから新零ちゃんって声かけたら、すっげぇ嫌そうな顔されたんだけど」
「そうですか」
「そうですかじゃねぇよ、何、俺どんなやつだと思われてんの?」
「俺は、黒尾さんの髪型は寝ぐせだって話しかしてませんよ」
「むしろ、なんでその話しかしてないんだよ」

黒尾さんには悪いが、大変くだらない話をしていたことに安心した。


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