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木兎さんの自主練に付き合って、ふと道場の方を見れば、まだ灯りがついていた。それに木兎さんも気づいて、様子を確認することになった。残っているのが椿なら、時間を忘れているのだろう。
「お前、いい加減呼ばれたら気づけよなー!!何回呼んだと思ってんだよ」
「ごめん、光太郎。でも、夏の間は頼んでない」
「いつもはこんな暗くなる時間までやってねぇだろ」
「確かに」
「今、赤葦が戸締り確認してるから、こっちも早く締めて一緒に鍵返しに行こうぜ」
「・・・うん。戸締り確認って光太郎の仕事じゃないの?」
「・・・・そうなのか?」
「そうでしょ。私は、部長から預かってるけど」
「2人とも早くしてください。守衛さんに怒られたんで」
「嘘、そんな時間?!」
「ほらほら、新零早く着替えないと置いてくぞ」
「ま、待ってすぐ着替えてくる」
「早くしないと、くらーい学校に1人ぼっちになっちまうぞ」
「やだやだ、勘弁してよ」
「あんたら本当に従兄妹ですか?」
「あれ、赤葦聞いたの?俺らが従兄妹だって」
「はい、椿から」
「良かったぁ・・まじでそろそろ限界だったからよー。やっぱかわいい従妹いたら自慢したいじゃん?」
「そうですか」
「俺ら中学も同じだったからさぁ、自慢しまくったら、あいつにすっげぇ怒られたんだよ。俺、なんか悪いことしたか?自分の従妹がかわいいって自慢しただけじゃん」
「・・・・・椿は、無駄に目立ちたくなかったんだと思いますよ」
「目立つ?いいじゃん、文句なしでかわいいし」
「・・・・・・」
「だってよー、あいつ大失恋して元気なかったから、新しい恋に目覚めれば元気になるかと思ったんだよ」
「大失恋?」
「そうそう、小学校のころから仲良かった男子に中2のときに告ったら振られたんだよ。俺のかわいい妹、泣かせやがってさー・・・」
「どうしたんですか、急にしょぼくれて」
「あの時の新零、思い出したら悲しくなった」
「・・・・・」
「あんなに仲良かったのに、何度もあいつが声かけに行ってもそれ以来全部無視って、ひでぇよなぁ」
「・・・・・」
「本当、あの時の新零は見てられなかったっつーかさー、それまでのあいつを知ってるから余計かもしれないけど、すっげぇそいつのこと好きなんだなって伝わってきて、なんかこっちまでドキドキしてくる感じ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「お待たせ・・・って何、2人でしんみりしてるの?」
「何でもない、木兎さん、いつまでもしょぼくれてないで帰りますよ」
「この数分で何があったの?」
「お前の大失恋の話」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・え、何?」
「光太郎の馬鹿。先帰る。赤葦ごめん、鍵ついでに返しといて」
「え」
「あ、え・・・・あれ、新零、怒った?」
「木兎さん、さすがに無神経すぎます」
「え」
「俺も少しは聞いてましたけど、全部は聞いてませんでした」
「・・・・・」
「それって、それ以上先は俺に話したくなかったか、思い出したくなかったことなんじゃないんですか?」
「・・・・・」
走っていった椿と、うろたえ始めた木兎さんに、思ったよりこの2人はお互いのことを理解していないことに気付いた・・・というよりは、木兎さんが女心を一切理解していないのだろう。人のことは言えないけれど。良くも悪くも彼の性格が裏目に出ているとしか言えなかった。
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