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小学校4年の時、同じクラスの隣の席に座る男の子と仲良くなった。きっかけは些細なもので、気づけば女の子の友達よりもずっと一緒にいる時間は長くなっていた。休み時間も学校が終わった後も、よく遊んでいた。そのころは、その子のことを好きだとは思っておらず、ただの友達だった。女の子の友達は、何度も同じことを聞いてきたけれど私の返事は変わらなかった。
中学に入って、私服だった小学校とは違い、指定の制服は男女の違いをはっきりさせた。それと同時に、少しずつ大人になっていくのだなぁという、まったく見当違いな思いや、どこか浮ついた空気が流れ始めた。それでも私の1番の友達は、彼だった。女子の友達もいたけれど、彼といる時間が一番楽しくて、心地が良かった。
いつからかは、はっきり覚えていない。けれども、自分の中に訪れた心境の変化に戸惑いと焦燥を感じるようになった。気づけば、彼のことをかっこいいと思うようになっていた。彼が誰かに取られてしまうかもしれないという不安、みっともない独占欲。このまま友達でいたら、いつか彼に彼女ができてしまう。自分の変化、身の回りの変化、彼の変化。その時初めて、自分は彼のことが好きだったんだと気づいた。一緒にいるとドキドキして、苦しくて、また不安になって。
中学1年のバレンタインの時、本命という言葉が恥ずかしくて、緊張して、いつものように渡せなかった。それが彼に伝わるように、向こうもどこかぎこちなくて、不安になって黙って俯いたとき、「来年は手作りがいいな」と恥ずかしそうに頬をかきながら、そう言ってきた。
その言葉が嬉しくて、私は自惚れて、調子に乗って、中学2年の5月。私は、彼に好きだと言ってしまった。その時の彼は、ひどく悲しそうな顔をしていた。
「新零のことは好きだよ。でも、付き合えない」
どうして?という私の問いかけに彼は“釣り合わないから”という類の理由を並べた
それから何度も、彼に会いに行った。納得ができなかった。好きなのに付き合えないなんて、そんなのおかしい。また前みたいに戻りたい。友達でもいいから、少し経てば彼の気持ちも変わるかもしれないって、そんな期待をしていた。
けれども、それは叶わなかった。会いに行けば目も合わさずに通りすぎ、問いかけどころか、挨拶にすら何も返してくれなかった。友達に心配されて、光太郎にも心配されて、お姉ちゃんにまで「最近、おかしいんじゃない?」と言われ、泣き腫れた顔を見た親にまで心配をかけた。無視されるたびに、どこかが痛くて仕方がなかった。息ができなくなるような、そんな感覚。
「もう話しかけてこないで」
「・・・・・・」
「椿が、いけないんだよ」
「・・・・・・」
それが最後。もう何も言えなかった
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