25 これは現実なのだと言い聞かせて、椿の背に腕を回した 不利な状況のはずで、振られるのだろうと思っていた 椿の中で、何がどう動いたのかわからないが あれだけ嫌いオーラを出されていたというのに・・・この結果とは 顔に熱が集まって、すぐに手を放すことはできなかった 仮かつ制限があるとはいえ、進展があった 練習を終えて部室で着替えていると肩に腕が回され重みを感じた 「靖友、機嫌がいいな」 「るっせ」 「椿さんと仲直りしたのか」 「まぁな」 「・・・・で、どうなった」 「意識したことねぇし、すぐには応えられねぇから制限付きで、付き合うことになった」 「・・・・・・・おめさん、それ守れるのか」 「今更だろ」 「ま、良かったな」 本当にそれだ。 あの絶望的な状態から 「しかし、残念だな。俺も椿さん、いいと思ってたんだ」 「奇遇だな隼人。俺もだ」 「・・・・絶対やらねぇ」 「おっと、荒北、目がマジだぞ」 「落ちつけ、靖友。冗談だ冗談」 「そうだぞ、ちょっとした冗談だ。椿さんは、いい女性だが友人としてでだな」 「そうだ、制限つーのは、何なんだ?キスとか、そーいうことか」 「そーだよ。あと、もしもアイツが別のやつを好きになったら手放す」 「それでいいのか、荒北よ」 「俺だって新零チャンが頷くなんて思ってねぇから、・・・てめぇらにやにやしてんじゃねぇよ!!」 「そうか、新零ちゃんか」 「今度あったら、俺らもそうするか」 「そうだな」 「そーいうのやめろヨ!!」 「靖友にとってはトラウマか」 「では、俺たちは静かに見守ることにするか。なぁ、隼人」 「そうだな、尽八」 「ほっといてくれナァイ!!」 「付き合うの?!」 『うん』 「仲直りしたってこと?」 『うん。今まで、全然意識してなかったから、前向きに考える方向でいるつもり』 「あんたのタイプと全然違うでしょ?」 『そうだけど。高校まで一緒だったのも何かの縁かなって。それにしてもさ、2人が言ってた通り過ぎて、途中から怖かったんだけど』 「そりゃぁねぇ」 「ねぇ」 『また、そうやって私をのけ者にする』 「あーあ、私も彼氏作ろうかな」 『どうした、アイドル命の夏葵ちゃん』 「いや、恋話してたら。やっぱりいいなぁって」 「作っちゃえ作っちゃえ。まぁ、夏葵は顔面レベル求めすぎるから難しいかも」 『でも、この前、告ってきた子イケメンだったじゃんか』 「そーだけど。なんていうの?私を隣に置きたいだけって感じがした」 「女は装飾物じゃないのにねぇ」 「本当それ」 「今日の帰りに告られたんでしょ?」 『私の話しは、もういいよ。相談に乗ってくれてありがとう』 「いえいえ、じゃなくて。もうキスくらいしたんでしょ?どうよ、荒北くん」 『私が好きって言うまで、・・キスとかはしないし、えっちなこともしないって約束した』 「は?あんた本気で言ってんの」 『だから、私まだ荒北のこと嫌いじゃないけど好きじゃないんだって』 「それあんたから条件出したの?」 『向こうから』 「・・・・なんか、荒北くん。尊敬するわ。見た目に反してかなりピュアボーイだよ」 「ここまで来ると不憫だね」 『そんなに?』 「新零、兄貴いっぱいいるんだから電話して1人1人意見もらってみなよ」 『そんなことしたら、荒北殺されるって』 「・・・・・あー。あれだ1番上のお兄さんは、真面目な人なんでしょ?聞いてみたら?そしたら、」 『無理、秋都兄は無理。そんなこと聞けない』 「荒北くん、本当、新零で良かったの?なんかの間違いじゃない?」 『?』 「新零さ、荒北くんの話ししてるときは全然恥ずかしがらないのに。なんで自分の兄貴の話してんのに恥ずかしがってんの」 『うっ・・・だ、だって。私の初恋、秋都兄だし』 「「・・・・・・」・・・新零、兄弟そろってる写真ないの?」 『あるけど』 小さい家族アルバムを2人に見せれば、納得された。 「まぁ、10歳離れたら、憧れのお兄さんって感じか・・・」 「この人が2番目?」 『そう、和希兄。3番目が千昭兄』 「血筋を感じるわ・・みんな背高いし」 『和希兄が一番めんどくさくて、千昭兄が良くも悪くもお兄ちゃんって感じかな』 「その1番目のお兄さんは?」 『秋都兄は、早い段階で1人暮らし始めちゃって家にいなかったからなぁ』 「だから余計に憧れのお兄さんなんだよ」 『そうかもしれない・・・でも、本当にかっこよくて優しくて、勉強ができてさ。部屋に遊びに行くと本がいっぱい並んでてね』 兄貴自慢はもういいからとアルバムを閉じられ、それぞれの家族の話をネタに消灯時間まで話していた。 ←→ 目次 |