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朝練を終えて自分の教室に入れば
席替えで離れたとはいえ通り道にある席で机にだらりと伏せている椿を見つけ声をかけた。
「・・・椿、どうかしたのか?」
「それがね、新零ったら昨日の夜から、こんな感じで」
「?」
「新零、言ってもいいの?」
『うん』
「それがさ、新零のところの1番上の兄貴が結婚するんだってさ」
「そうか、それはめでたいな」
椿の友人が苦笑いをしているのが気になるが、担任が来てしまったので席につくことにした。


「兄貴が結婚するからってアイツ落ち込んでんの」
「あぁ、そうらしいぞ」
学食に向かう途中、誘いに来た荒北が教室を覗きこんで、椿はどうしたのかと聞くので朝聞いた通りに答えた。呆れた様子で教室を離れる荒北に、いいのか?と聞けば、“ブラコン過ぎんだろ”と悪態をついて別にいいという。この2人が交際を始めたとは聞いているが、それ以上はよくわからない。以前の練習後の明らかにおかしい様子はないので、上手く行っているのだろう。

「たしか3人兄がいると言っていたな」
「福ちゃん知ってんの?」
「去年、委員会の時に一緒になってな」
「あぁ、それで・・・結婚すんのって何番目つってた?」
「たしか・・1番目だったな」
「あー・・それでかヨ」
「?」

荒北の話しを聞けば、椿のタイプというのは黒髪メガネの文系真面目系・・?らしい。そのタイプの代表が、その1番目の兄らしい。混み始めた学食で適当に空いている席につき、ふと思ったことを口にした。

「荒北も眼鏡をかければいいんじゃないのか?」
「は・・?」
「お前も黒髪だからな」
「後半明らかにちげぇだろ」

呆けている荒北の隣に東堂が座り「なんだ、荒北も眼鏡男子になるのか。眼鏡はいいぞ、好きな女子は多い」というので、なるほど。と少しだけ思うが自転車に乗るには不便だ。日差しを防ぐためのサングラスはわかるが、雨天でも行われるレースでは視界が悪くなり不利になる

「別に目悪くねぇし」
「世の中には伊達眼鏡というものがあるぞ」
「いらねぇヨ。それで、何か変わるってんなら苦労しねぇっつの!!」
「しかし、荒北よ。眼鏡でその目つきの悪さをカバーできるかもしれんぞ」
「余計なお世話だっての!!!」

いつもの様に昼を終えて、教室に戻れば椿が同じように伏せている

「椿、昼は食べた方がいい」
『・・・・あれ、福富くん』
「・・・・!」
『ん?』
「少し待っていろ」
『?』



「ちょっとナァニ?福ちゃん?」
「いいから来てくれ荒北」
「あ?」
「椿が泣いている」
「は?!」
『?』

顔を上げた椿の目に涙が見えた。俺にはどうすることもできないと判断して、先ほど別れた荒北を引っ張って教室まで連れて来たのだが、戻って見れば、呆けた椿と目が合う

「?」
『?』
「新零チャン、泣いてたのォ?」
『・・・・?』
「?」
『泣いてないよ?』
「!」
「福ちゃん・・?」
『?』

事情を説明すれば、椿は、伏せてる間にそのまま寝てしまい、俺が見たのはあくびの痕ということだった。勘違いだったと謝罪すれば、気にしてないと笑ってくれた。荒北も気にしていないと言う

「なるほどな。寿一の早とちりか」
「ンだよ、なんでお前らまでいんだヨ」
「福が、真剣な顔で荒北を引っ張って行ったから何事かと思ってな」
『なんか紛らわしいことして、ごめんね』
「いや、俺こそすまん」

廊下から覗いていた新開と東堂が教室に戻り、俺も席に戻った
荒北が少し残って椿に何かを言ってチャイムと同時に教室を出て行った








福富くんが、驚いた様子で待っていろなんていうので、何事かと思えば荒北をつれて戻って来た。あくびの痕とはいえ、泣いていると判断されるほど、泣き虫のイメージがついてしまったのだろうか・・・

みんなが各々の場所へ戻る中、残った荒北が机の傍にしゃがみこみ、両腕を机の上にのせ、その上に顔を置いて、私の顔を覗き込んでくる。

「新零チャン、昨日、泣いたろ」
『・・・・・・っ』
「泣き虫チャァン」

そう言って、私の額を指ではじく

「そーいうときは、電話ぐらいしろってのォ」

何か言おうとして口を開きかけたが
チャイムが鳴った
それと同時に荒北も教室を出て行ったので、追いかけることもできなかった



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