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「椿」
『荒北だ』
「あ、もしかして、私達お邪魔?」
「じゃぁ、新零、先に戻ってるね」
『うん』

学校帰りに遊びに行って戻る途中でふいに声をかけられた
自転車に乗っているし、ジャージにヘルメット?をしているので部活中なのだろう

「自主練中」
『寒そう』
「寒いヨ」

グローブを外した手で椿の頬に甲を押し付ければ、冷たいと叩かれた

『ロードバイク、近くで見るの初めて。すごく乗り難そう』
「スピード出す為に、かなり前傾姿勢になっからな。余分なもん一切ねぇし」
『ほんとだ、スタンドもないんだね。・・・かわいい色』
「こーいう色好きィ?」
『うん』
「お前、こーいう色の服あっても着ねぇだろ」
『着ないけど、好き嫌いとは別。私だってピンクとか嫌いなわけじゃない』
「ソーデスカ」
『これ、水色?』
「チェレステ」
『?』
「気になんなら、ビアンキ チェレステで検索してみろ。すぐ出てくる」
『ビアンキ?』
「この自転車のブランド名。ロゴ入ってんだろ」
『本当だ・・・』

わからないことが多すぎて、ハンドルの下についているのは何か、足はどうなってるのかと聞いていると、そーいうのは学校戻ったら教えてやるというので先に戻ることにした。

「椿さんではないか」
『東堂くん。部室ってここであってる?』
「あぁ、だが、荒北なら外周に行ってしまったから今はおらんよ」
『さっき、外で会ったから大丈夫だよ。後で、自転車について教えてもらう約束したから』
「そうだったのか、では、荒北に変わって山神東堂が教えようっ!」
『山神?』

東堂くんの口上を聞きながら、ぽかんとしていると後ろから急に手を引かれて背中に何かぶつかった

「こんなことだろぉと思ったんだヨ」
『荒北』
「早かったではないか」
「っせ、椿に変なこと吹き込むんじゃねぇよ」
「変なこととは、なんだ!待て、まだ途中だっ」

後ろで東堂くんが呼んでいるが、荒北に手を引かれて申し訳ないけれど、あのままにしておこう。

「いつも、あんなだから、気にしなくていい」
『そうなの?でも、』
「ンなことどうでもいいからァ。自転車について聞きてぇんだろ」
『うん』

荒北について知るためには、やはり必要なことだろう
百合や夏葵には、まだ返事していないのかと言われるけれど。やっと友達まで戻れたのだ。まだ、まだきっと時間はかかる
自転車の傍にしゃがんで、荒北の説明を聞く。ちらりと荒北の方を見ては、真剣なまなざしを自転車に向けるので、なんだか嬉しい。中学のころも気にしていないと言っても、怪我であんなに好きだった野球が出来なくなってから、変わっていく荒北を知っていたので良かったと安心する。

「椿なら、このまま乗れっかもな。ためしに跨いでみろよ」
『え、絶対倒れるって』
「持っててやっから」

ほらと促すので、試して見れば
確かに乗れないことはなさそうだが、ハンドルを試しに握って見れば地面が近く怖くて焦げそうにない。しかも、この下ハンドルの位置からして、さらに地面が近くなる走りがあるということだ・・・怖い。

『これで、どれくらいのスピードが出るの?』
「下ってる時で80とか」
『・・・車みたい』

人間、足の力だけでそんなスピードが出るのかと思うと恐ろしいものだ

絶対自転車から手を放すなと言われたので、ハンドルをぐっと握っていたのだが現状を考えれば、身体を完全に荒北に支えられている。話し声もすごく近く、腹部に周っている腕も前のハンドルを支えている手も少しドキリとした。
片足を地面に戻して、もう一方も地面に戻せば“スカート直せよっ!!”とせかされた・・・サドルにスカート引っかかったのかもしれない。まぁ、そう焦らなくても寒さに耐えきれなくてスパッツのようなものを履いているのだけど、視線をずらした荒北を少し笑ってやった

『なんか、自転車の本とかないの?』
「?」
『興味湧いたから勉強したいんだけど』
「・・・部屋にあっから、後で持ってきてやるヨ」
『ん、ありがと』



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