33 実家にある小さいころのアルバムを見れば、確かに荒北と写ってる写真が何枚かあった。他の子に比べて枚数も多い・・・あんまり覚えてないけども。写真を携帯で写真に撮って荒北に送りつけた、荒北も覚えていないらしい あぁ、今年は受験に向けて勉強しなきゃいけないのかと思うと憂鬱になる。まだどこを受けるかも、どのくらいの学力がいるのかもわからない・・・そもそも、成りたいものも学びたいことも浮かばない。けれどもやっぱり、大学生にはなりたくて、どうしようかなぁと考える。考えたところで何もまとまらない・・・そもそも勉強したくない。とりあえず、千昭兄のところから使えそうな参考書を持って来たものの見る気にもならず、そのままにしてある。学内テストでは、だいたい中の上くらい・・・国語と歴史が足を引っ張るせいか中々伸びない。・・・・参考書をちらりと見てまたほかった。塾とかも行った方がいいのかな・・・学校の近くにどこかあるはずだ。 上3人が大学まで進学して千昭兄も無事に卒業する。地元の公立に行かずに、わざわざ私立の高校に行って、寮生活なんてさせてもらっていて、私立の大学になんて行かせてもらえるのだろうかと父に相談したけれど、子供はお金の心配なんてしなくていいと笑っていた。本当に困っていたら、ちゃんと言うからいいと言ってくれた。 兄3人が一足先に戻って行って、私も学校の始まる1日前に寮に戻って来た。百合や夏葵と年末年始の話しをしている間に、その1日も使い切って。微妙に残っていた課題を終わらせた頃には日付が変わっていた。もう3学期か・・・なんて思いながらベッドにもぐった。 教室に行って思ったのは、そういえば進学校だったということ。教室で参考書を広げる生徒がいた・・・この時期から勉強するのか、そうだよなぁ・・・やりたくない。と、そっと目をそらした。先生もやれ進路だ、やれ受験だと急に関連資料を配布し始めた。3年からは文理でクラスが別れるため、百合や夏葵とは同じクラスになることはありえないのかと思うと文系にすれば良かったかなぁなんて思ってしまう。でも、苦しむのは自分だと言い聞かせて理系を選んだのが遠い昔に感じる。あれはたしか、夏休み明けぐらいだったなぁ・・・。 ちょうど廊下を通りかかった荒北が足を止めて口を開いた 「椿」 『荒北だ』 「急に写真送ってきやがって」 『お兄ちゃんたちが、やけに荒北について詳しいからさアルバム漁ってたら、私と荒北が写ってる写真何枚もあってさ。覚えてたりするのかと思って』 「覚えてねぇよ。遊んだつーのは、なんとなく覚えてるかもしンね」 『私も、そんな感じ』 「じゃ、次移動教室」 『あと2分。ふぁいと』 「まじかよ」 荒北は、まっすぐ立てないのか。せっかくスラリとしているのだから、姿勢さえ直せばイメージも変わると言うのに、あの元ヤンもどき。 ふとドア付近の席の子がにやにやと楽しそうにこちらを見ていた。トイレ掃除の時に一緒だった子だ 「最近、椿ちゃんって、荒北くんと仲いいよね」 『そう?』 「うん、そう見える」 『あぁ・・・なんていうのかな、昔した喧嘩の仲直りをしてですね』 「昔?」 『小学校のころの喧嘩なんだけどね』 「椿ちゃんって荒北くんと小学校から一緒なの?」 『正確にいえば幼稚園』 「え?!長いね。私も幼馴染の子は中学まで一緒だったけど、高校は別れちゃって」 『私も、荒北と高校が一緒なんて思ってなかったんだけどね』 「そうなの?でも、なんか2人とも背が高くてすらっとしてるから、並んでるとかっこいいね」 『あ、ありがとう?』 「もしかして、付き合ってる?」 『・・・・・・・』 「・・・・え、本当に?」 『さぁ、どうでしょう?』 「えー意地悪!!教えてくれてもいいのに」 そう言って笑っているけれど、腹の奥に何を抱えているのか女子はわからないので怖い。チャイムが鳴ったので、あいまいに笑ってその場を後にしたけれど、そういえば、荒北ってモテるのか?・・・いや、そうは見えないけど。自転車部の東堂、新開は、ファンクラブができるほど人気ではあるけれど、自転車をやっているからモテるということもないだろう。 見えないけどって、仮にも彼氏に向かって失礼なこと言ってるかもしれない 「なるほど、それで、荒北くんがモテるのかどうか?」 『そう』 「・・・どうだろう。私の周りにはいないけど。夏葵は?」 「うーん、1年の時のイメージが強烈すぎるからなぁ。わかんない」 「新零は、荒北くんのどこがいいわけ?私らはさ、全然絡んでないし正直に言えばさ」 『言いたいことはわかるから、ストップ』 「それで、どこがいいのよ新零ちゃんよ」 『性格。口が悪くても、態度が悪くてもさ、面倒見はいいし、困ってる人はほっとけないタイプだし。なんだかんだ優しいし。やるときは、ちゃんとやるし』 「なるほどねぇ。それで、新零ちゃんは、そんな荒北くんが他の子に優しくしてたら嫌だって」 『そうじゃない、誰にでもそうなんだよ。あんな態度だから周りが避けるだけでさ』 「百合さんや」 「なんでしょう、夏葵さん」 「新零さんは、確実に荒北くんに惹かれてますね。これは、告白秒読みかもしれませんよ」 「そうですね。ここまで荒北くんが耐えてきたのを褒めてあげたいですね」 『・・・・・・・もうっ、2人して』 「新零、顔真っ赤」 「新零ちゃんが女の子の顔してるぅ」 夏葵の部屋から戻って、進路の紙を適当に埋める。特に現時点で決まっていることなんてないので、進学希望ということだけ書いておいた。・・・・うん?何だろう、隣から音?が聞こえる気がしてプリントを片付ける手を止めた。寮の壁なんて対して分厚くはないので、確かに隣の音が聞こえてくることはある。だから消灯時間前にはおしゃべりもやめて部屋に戻るようにしているのだけれど・・・・ 興味本位で音が聞こえる側の壁に耳を付けたのが間違いだった 『・・・・・・・・』 免疫がないわけじゃない、兄のせいで色々と見てしまったことはあるけれど・・・これは、なんとも生々しくて、私がすごくいけないことをしているような気分になる。いやでも、これ、相手は男か女か・・・・。どっちでもいいけど、声をもう少し押えてほしい・・・これ本当かな。声大きすぎない?・・・・どうだろう、未経験だしわからないけど。変にドキドキとしてしまう。壁から耳を離しても、聞こえてくる・・・ いや、私は何も聞いていない。隣の子?の喘ぎ声なんて聞いてないと頭を振った時、ぶーんぶーんとマナーにしたままだった携帯が音を立て、びっくりした。 慌てて携帯を手に取り相手を確認すれば荒北だった 『も、もしもし』 「起きてたか?」 『うん、起きて・・・・た、けど』 「どうかしたァ?なぁに、今の間」 隣の声が大きくなりましたとは言えずに、適当に誤魔化す 『それで?』 「そーいや、お前、理系って言ってたよな」 『うん』 「大学行くのか?」 『行くよ。どこ受けるとか学部は何も決めてないけど』 「ま、俺もそうだけどヨ」 『うん・・・』 「・・・・なんかあったのか?」 『えっ?いや、何もないけど』 不味い声が上ずった。返事のない無音は勘弁してほしい、隣の声が余計に聞こえてくる・・・聞こえてないと思ってるんだろうか。 「・・・・・誰かいんの?」 『いないけど?』 「・・・・・・・・」 『荒北?』 「・・・・」 『荒北・・・無言はつらい』 「なんでェ?」 『・・・・・・と・・・隣の声がデスネ』 「何で片言なんだヨ。隠し事すんな、言え」 『・・・・・男子寮でもある?その・・あ・・・・喘ぎ声聞こえるとか』 「・・・・・・・・・・」 『ちょっと黙んないでって』 「聞こえんの?」 『・・・・うん』 「どっちかつーと、こっちに女連れ込む奴の方が多いけどな」 『・・・・・・・・』 「相手が男かどうかわかんねぇけどォ」 『・・・・・・・・』 「新零チャン?聞いてんの?」 『・・・聞いてる』 「厭らしいこと考えんのか」 『考えてないっ!!馬鹿なこと言わないでよっ。荒北こそ』 「別に俺は聞こえねぇし、ナァニ新零チャン感じてんの?」 『最低。もういい、切るよ・・・・っ!』 妙に甘ったるくて、先ほどより大きな声にびくりとして携帯を握りしめてしまった。 「・・・・・・・・・・」 『・・・・・・・・荒北、ちょっと黙んないでよ』 「・・・・・・・・・・」 『あれ、絶対わざとだって。あんなに声出ないって、多分』 「お前、自分が処女って言ってるようなもんだヨ。それ」 『うるさいっ、今の聞こえたでしょ?!』 「聞こえた」 『・・・荒北、用件って進路の話しで終わり?』 「あー・・・一応、言っとくけどヨ」 『うん?』 「東堂ンとこのファンかなんかしんねぇけど、ちょっと揉めたらしぃから巻き込まれんなよっつう忠告」 『めんどくさそうだね』 「だから、巻き込まれんなって言ってんだよ」 『・・・わかった。わかっ・・・・・・・・・・・・』 「今度はどうしたァ」 『い・・いま、カーテンの向こうに誰かいた』 「見に行くなよ」 『うっ・・え、でも』 「そのまま隠れとけヨ、変なことには首を突っ込むな」 『・・・・了解。東堂ファンの件も了解です。』 「じゃぁ、切るからな」 『うん』 「おやすみぃ」 『おやすみ』 隣が静かになったということは、さっきカーテンに移った影は隣にいた人ってことだろうか。ドアから出ないということは男子ということで、なんか嫌だな。気持ち悪い 『・・・・・・・・』 電話のせいか、なんとなく荒北の声が近かったなと思いながら携帯を充電器に置いてベッドに入る。 ・・・・・・・するかもしれないのか 誰と、誰が、何をっ・・・・ ばっと浮かんだ場面を掻き消して、何も考えてない何も・・何も そう思えば思うほど、顔と耳が熱くなっていくのがわかる こんな初心なつもりはなかったのにな 馬鹿兄貴のせいで、何度かリビングで見せられ だから、もう何も思い出すなっ。寝ろ、私っ!! ←→ 目次 |