34 椿のとんでもないカミングアウトでフリーズしかけたのは上手く誤魔化せただろうか。あいつの慌てた様子から、初心だということと、処女ということまでわかってしまい、俺は何も聞いていないと言い聞かせる。つくづくこういう男の馬鹿なところが嫌になるが、正直なところ誰とは言わないが世話になったことには違いない。 電話を切ってから、部屋を出て裏口側の廊下の窓から下を覗けば、どこのどいつか知らないが戻ってくるのがわかる。逆にしろと言いたいところだが、朝練もあるので大人しく部屋に戻った。 東堂の件は、椿も知らないようだったが面識がないわけでもないし東堂の口ぶりからしても会えば話をするようだった。何事もないならそれでいい・・・つーか、めんどくせぇから巻き込むんじゃねぇよ、あのカチューシャ そう思った3日後 椿が巻き込まれた むしろ、なぜなのかと俺が聞きたい 事の発端は、東堂に彼女がいるらしいという噂話から始まったらしいが、嫉妬が原因だかわからないものの、その彼女を特定しないと気が済まない連中が現れたらしい。すでに何人かが囲まれたと女子が話しているのを聞いていたが、そいつらがどうなったかは知らないし大事になっていないのだから本当に探しているだけなのだろう、ま、付き合っていると判断された場合の状況は変わるだろうが。 で、なんで俺はまた廊下を急がなきゃなンねぇんだよ。疲れんだろうが!! 気をつけろと忠告は受けた、廊下で東堂くんに会った時も特に長話をするわけでもなく挨拶をする程度だった。そんなの私だけじゃない。別に名前で呼ばれるわけでもないので名字で呼ばれている女の子なんてたくさんいるはずだ。なのに、囲まれた理由を私は聞きたいのだが、みなそろって私より背が低いので少し見下ろす形になるので威圧感があまりない。 『だから、私じゃないんだってば』 「私、聞いたの。東堂くんはショートカットの子がいいんだって」 『いや、ショートの子なんて他にもいるし。なんで、私なの』 「じゃぁ、自転車部と仲いいのはどうしてよ」 『委員会だったり、中学が一緒だったりしたから』 「ならどうして、東堂くんは椿さんに挨拶する時は少し違う笑い方するのよ」 『違う笑い方?』 「東堂くんに彼女ができたって噂が立ってから、私、観察してたの」 『・・・それは多分、』 「多分、何よ」 『・・・えっと』 「怪しい。ねぇ、やっぱり椿さんさ東堂くんと付き合ってるんじゃないの?」 『だから、付き合ってないってば。証拠もないのに、勝手に決めつけないでよ。大体、見つけてどうするの?別れさせるの?そんな権限あんたたちにあるとは思えないんだけど。東堂くんが、かわいそう。東堂くんが好きだって言ってるのに、それを受け入れられないわけ?ファンなんでしょ』 「別に別れさせようとか思ってないし!!ただ、抜け駆けなんて許せない!」 『抜け駆けも何も、その子がファンとは限らないじゃない。幼馴染かもしれないし、東堂くんの一目惚れかもしれないし?そもそも、この学校とも限らないし先輩かもしれないじゃん』 「説教垂れないでよ!!椿さんには関係ないことでしょ?そうやって話をすり替えて逃げようとしてるんでしょ!そうはいかないんだよ、ほらっ早く言った方がいいんじゃない?!こっちの方が人数多いんだけど」 『外も中も小さいくせに吠えてるとポメラニアンみたいだよ』 「なっ!!」 「新零チャン、随分元気そうじゃナァイ?心配して損しただろ」 え?と驚いた顔の女の子たちが瞬きをして荒北の方を向いた 『私が、東堂くんといるとこ見た?』 「廊下で」 『挨拶してる女子なんて、たくさんいるでしょう?』 「だから、」 『笑い方がって話?』 「話なげぇんだヨお前。大体、新零チャンは俺と付き合ってんの、あんなウゼェ野郎に渡してたまるかヨ」 『えっ、ちょっと荒北。まだ話終わってない!』 「いいだろンなもん。忠告してやったのに普通巻き込まれるか?」 『仕方ないじゃない、ちょっと来てって言われたんだから』 「女子に対してお人好し過ぎんだよお前は」 ぐいっと腕を引かれて囲まれていたところから引っ張りだされ荒北が来た方向に引きずられる。後ろを振り返れば、ぽかんとしたままの女の子たちが残っている・・・まぁ、そうだろうな。付き合ってるなんて知ってる人、少ないだろうし 「あー・・・そうだ」と立ち止まった荒北が振り返って彼女たちに「俺が知ってるつーことは、わかってンだろうなぁ?」なんて、声をかけて、また腕を引っ張った 『なんで、場所わかったの?』 「反対側の廊下から見えた」 『・・・そうですか。それで、実際、東堂くんって誰かと付き合ってんの?』 「付き合ってねぇヨ」 『やっぱり』 「ま、アイツらもばらされたくねぇだろうから。こんで終わンだろ」 実際、東堂の女探しの話しは収束した ただ、まぁわかってはいたが自分たちが噂になるまでは時間がかからなかった。お互い1年の時に色んな意味で有名だったせいか、ネタにしやすかったのだろう。 『私と荒北って釣りあわない?』 「は?」 『今日、廊下でそう言われたんだけど。なんだろう、やっぱり背が小さい子の方がいいってこと?』 「・・・・・」 『こう、なんていうの、もっと草食系の兎みたいな子とか』 「・・・・・」 『?』 そうじゃねぇだろ 自分のコンプレックス、コンプレックスにしすぎだろ 『でも、この前クラスの子に。2人が並んでるとすらっとしててかっこいいねって言われた』 「・・・・・・」 『ねぇ、なんで。荒北ってさ。私のこと好きなの?』 「今の流れでそれ聞くの?」 『え、だめだった?』 「今更過ぎて覚えてねぇヨ」 『・・・そっか』 眉を下げて、少し顔をそむけた椿を視界に入れておく 機嫌が悪い時と拗ねた時など気分が下がると、この動作をすることが向き合うようになってわかるようになった。あと、気持ち頬が膨らむ 椿の額に自分の額を付きあわせて、好きだと改めて言えば困った顔をして赤くなる。それがどうにも可愛らしくて癖になりそうになる。本当は、もっと笑ってほしいところだが、しかめっ面を向けられなくなっただけでも進歩だと言えるほど遠いところにいたのだ。気持ち悪くなるほどの執着も欲も全部抑え込んで、怖がらせないように・・・ 「ま、返事もらったら教えてやらなくもねぇな」 『なにそれ、』 「信じらんない?俺のこと」 『そんなこともないかもしれないしあるかもしれない』 「ンだよ。それぇ」 『何でもないよ』 ←→ 目次 |