40 何の話かと思えば、誕生日を忘れていたという話だった 正直なところ、実は知ってんじゃないかとか思ってソワソワしてたなんて言えるわけもなく。しゅんとしている椿に、気にすることじゃないと言いたかっただけだったのだが・・・どうしてこうなった。 俺が好きだって言ってんのに変な心配ばっかするわ、泣き始めるわで、攻略難易度がどんどんと上がって行き、照れて遠回しな言葉使ってる余裕もなくなった。全部正直に話さねぇとまた溝ができるかもしれないと思った結果である。 「ボール持って誘いに行ったら、いっつも嬉しそうに笑って行くって返事してんの見て。こう、なんつうの?ガキながらにドキっとしてヨ。男みたいな恰好してるっつってもハッキリ理由言うし、バレーやってるときの真剣な目とか、誰かのこと好きになってる新零チャンも嫌いじゃねぇし、スタイル良くてセンスいいのもお前らしくて・・・・・・・あぁっくっそ、もういーい?俺死にそうなんだけどォ」 ここまで言って、顔は熱いわ、今日の部活より疲れるわ、心臓はうるせぇし、椿はだんまりだし、これ以上どうしろってんだよ。顔の熱が全然引かねぇ・・・・・・ 『荒北・・・』 「なぁに」 『そんなに好き?』 「好き」 『私、荒北のこと好きになりたい』 「・・・おう」 『荒北のこともっと知りたい』 「ん」 『靖友』 「・・・・っおう」 『早く、私のこと“好き”に、させてよ』 何かが落ちる音と共に背中に手が回されて首の傍に頭を埋められる。最後の言葉がどこか苦しそうに聞こえた。椿の中で何かしらの葛藤があるのかもしれない・・・、抱きこんで頭に頬寄せて返事をすれば背中の手に力が入った。急に名前を呼ばれると、心臓をぎゅっと握られたような衝撃と共に好きだという気持ちが強くなるので不思議だ なんで、こいつこんな可愛いこと平気で言えんだよ 「今年は、同じクラスだといーね」 『うん』 首筋に触れるだけのキスを落として、身体を離せば すっきりした顔の椿が、こちらを見上げていた 「荷物、落ちたけどォ?」 『あ、そうだった』 「?」 『荒北、これっ』 「は?」 『誕生日おめでとう・・・まだ、友達としてだけど』 「・・・・お前、今日気づいたって」 『電車の中で気づいて、戻った』 「・・・ありがとネ」 『うん・・・その顔が見たかった』 「・・・・・・・・」 急に、どうしたのこの子、え?逆じゃねぇの?なんで、落としに来てんの? 大き目の横長の紙袋の中にラッピングされた何かが入っているが・・・結構でかい 「開けていい?」 『だめ、部屋戻ってからにして』 「驚いた顔見たくねぇの?」 『・・・だめ、見たいけど』 「・・・・ま、いいけどォ。部屋戻ったら開ける」 『うん・・・・じゃぁ、私も部屋に戻るね』 駆け足に去っていった椿を見送って、紙袋の中を覗いて少し触ってみたが何かわからない・・・柔らかい? 「靖友、それ、どうしたんだ?」 「新零チャンにもらった」 「・・・あれ、椿さん、おめさんの誕生日知らねぇんじゃなかったのか」 「今日、気づいたんだと」 「しかし、靖友にぬいぐるみを贈るなんて、すごいことするな」 「それ、どーいう意味だヨ」 「特に深い意味はないぞ」 「新零チャンらしいだろ」 「・・・・それも、もらったのか?」 「おう」 部屋に戻って袋を開ければ、黒い猫のぬいぐるみが出てきて、あいつらしい選択に思わず笑ってしまった。男にぬいぐるみ贈ろうなんて思うところといい、しかもそれなりの存在感のある大きさがあることといい、あいつらしいと思える。これ、自分が欲しかったんだろうなと少しだけ思った 「?」 持ち上げて見れば首元に、何かかけてあり ぬいぐるみから外して自分の首にかけてみたところで、新開がノックもなしに部屋の戸を開けた 「靖友は、椿さんの誕生日知ってるのか?」 「当然」 「絶対?」 「間違いねぇよ」 さて、お返しは何にしようか ←→ 目次 |