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公園の一言に、驚いたものの
椿が行きたいのなら、それでいいと思った。
カフェやら買い物つっても、ついて行くことしかできないので、むしろ好都合と言えば好都合かもしれない。しかも、俺とならと言ったあたりがなんだか嬉しい。

比較的奥まっている場所のためか人も少なくブランコも空いていた。
そんな短いスカートで乗ったら捲れんだろと思っていれば、抜かりなく下に短パンを履いた椿に感心しつつも、こんな場所でいくら見えないからって履くんじゃねぇよと口は勝手に動いた。久しぶりに乗るという椿が漕ぎ始めたのを見て自分も座って漕ぎ始めた。それから、話していると突然、ブランコから飛び降りた椿がボールがあるとサッカーボールを拾ってきて、日が暮れるまでずっとやっていた。砂まみれのボールだってのに、制服が汚れるのも気にせずにリフティングもするし、俺がボールを持っていれば、必死で捕りに来ていたしバレーに関わらず相変わらずの負けず嫌い。昔から男子の中に混じって遊んでいても女子だって思わせないところがある意味すごいと思っていた。ただそのくせ、転んで血を見ると泣く。遊んでいる間は気にしないくせに、帰る時間になって泣き始めるからイライラすることもあったけれど、ほっておけずに家まで送ったことが何度かある。おそらく、そのせいで椿の兄に顔を覚えられた。

「結局、椿さんと、どこ行ってきたんだ?すげぇ、楽しかったって顔してるぜ」
「・・・向こうにある公園。あいつ結構リフティング上手いのな、やっぱ上が男兄弟だと、そうなんのか?・・・そうでもねぇか、あいつらそうでもねぇし」
「何してたんだ?」
「サッカー」
「椿さんと?」
「そう。他に誰がいんだヨ」
「楽しかったか?」
「たりめぇだろ、新零チャン本当・・・って、ンでてめぇに話さなきゃなんねぇんだよ!!」
「荒北、なぜそんな砂まみれなのだ?!早く風呂に入れ」

風呂に入れとうるさい東堂に悪態をついて部屋に戻れば、椿から受け取った猫が座っている。あいつから貰ったというのもあるが、そうでなかったとしても、このフォルムやデザイン、触り心地はいいものだと思う。ぬいぐるみに付いていたタグを頼りにネットで検索をかければ、それなりに有名なぬいぐるみなようで他にも種類があることを知った。
昔、公園の隅に座り込んでいる椿を見つけて声をかければ、その影に猫がいた。野良猫かと思えば首輪をつけていたので、どこかの家猫の散歩中といったところだった。椿にされるがままになっていた猫を眺めていれば、他からまた猫が来た。その猫には首輪は見えなかったけれど同じように椿の元に擦り寄って来た。またそのあと1匹来た。動物に好かれるのかと思えば、道端ですれ違う犬に吠えられ、触ろうと手を伸ばせば逃げられて、飼い主に苦笑されて肩を落としていた。今日の帰り道も向かいから歩いてきた散歩中の犬を見て、黒柴かわいいとにこにこしていたけれども距離が近づけば大人しいと有名な柴犬でさえ椿に対して吠えた。そういえば、アキちゃんにも吠えられてたな・・・あんま吠えないはずだというのに。なんか憑いてんじゃねぇのと言えば、あからさまにビビっていた。

恋人ごっこがしたいわけじゃない、何気なく椿に触るようになったけれど嫌がるそぶりもないので期待したくなる。見込みありと浅野は言っていたし、小野原にもがんばれと言われ少し調子に乗っている・・・そんな気がしてきた。すぐに返事がもらえるとは思っていなかったし、長期戦は覚悟していた。それでも思ったよりずっと椿との距離が近くて、戸惑うことの方が多かった。ただ、今日を振り返って、これじゃぁただ昔に戻っただけだと思った。一緒に遊んでそれでいい、それでは、ガキの頃と何も変わらない・・・追っかけていたはずの自分が、どこかを基点に逆走し始めた椿とすれ違ったような気がする。少し前はそれで良かった。今は違う、そうじゃない
向こうが意識しているのは、なんとなくわかる
好きになりたいの意味が理解しきれない
椿がどうしたいのか、どうして欲しいのか何もわからない

考えたところで答えが出るような経験者ではない
翌朝、無心にペダルを漕いで、今はそれどころじゃないと言い聞かせる
インハイまで、あと数か月
次のレースも近づいてきている



この時期に転校生なんて、珍しい
俺のクラスではなく、新開のクラスに転校生が来た。こんな3年の中途半端な時にわざわざしなくてもいいじゃないかと思ったが、まぁ家庭の事情はさまざまなので深くは考えないことにした。
問題は、そこじゃない

廊下ですれ違った真新しい制服の匂いに、こいつが新開の言っていた転校生かと思った。・・・咄嗟にロッカーでごそごそと教科書を片付けている椿が顔を上げようとしたのを無意識に押えた。
そんなことは無駄だとわかっている。そのうち、同じように廊下ですれ違う
翌日、食堂へ向かう途中、あの転校生とすれ違った
案の定、椿の視線がソイツを追っていて眠そうにしていた目がわずかにだが開かれ自然と足が止まった。どうかしたのかと声をかければ何事もなかったように振る舞っていたけれど、どこかふわふわとしていて、ため息をつきたくなる。


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