48 『夏葵さんや、貴方のクラスの転校生くんは、何者ですか。なにあのハイスペック』 「あーあ、やっぱりか。百合ともさ、新零が好きそうなやつが転校してきたねって話しててさ」 『・・・だって、黒髪メガネに文系だよ?』 「教室でいつも本読んでるよ」 『まじですか』 「って、あんた。まさか」 『そうじゃないよ。でも、かっこいいなっていうのあるでしょ、百合さんや』 「それは、わかるよ。あ、この人いいなぁって。まぁ私は浮気しませんけど。」 『ほらほら。夏葵とか東堂ファンの子が、きゃーかっこいいって言ってるのと一緒だって』 「あー・・・なるほど。それならわからんでもない」 『でしょ』 転校生がドストライクな容姿で思わず立ち止まってしまった。あれくらいは許してほしい、何ていうのは我儘だろうか。そうだ、荒北に眼鏡をかけてもらったらいいかもしれない・・・というか、個人的に見たい。眼鏡をして、本を持ってくれたら・・・それでいい、その様子が見たい。 前から、たまに買っていたメンズ雑誌をペラペラとめくって、色々と考え始めれば、参考書なんて目に入らなかった。 『荒北?どうかした』 「ンでもねぇよ」 『?』 今度、ロードレースがあると聞いて見に行きたいと言えば、どこか上の空でこちらの話しを聞いていないようだった。もう一度聞き直せば、来るなと機嫌悪く言われ、少しむっとする。 『どうして駄目なの?前のレースでも勝ったって聞いたよ』 「駄目だ、来るな」 『誰か誘っていくから』 「駄目」 『インハイはいいのに?』 「じゃぁインハイも来るな」 『なんでさ。今日、感じ悪い』 「っせ」 それが2日続いて、さすが自分の行動を改め始めた。何が原因だろう、私、何したかな・・・何だろう・・・授業中、あれこれ考えても思い浮かばない。それでも、お昼に誘いに来てくれるのでよくわからない。怒っているわけではないということだろうか・・・? 『夏葵、古文の教科書貸して』 「おー了解。ちょっと待って」 昨日、古文の予習をして教科書を置いてくるという初歩的なミスに項垂れながら夏葵にヘルプを求めに行った。夏葵が戻ってくるのを待っていると、あの転校生くんが目に入った・・・本当だ本読んでる。先輩と違って、物静かな感じだ。話してみると違うのかもしれないけれど、容姿は好みでも今までの面々とは少し違う気がした。 「はい、帰る前に返してね」 『了解』 「椿さん、やっぱ、あの転校生くん気になる?」 『新開くん?』 「どうなんだ?」 『正直、見た目はもろタイプですけども』 「これ助言だけど、あいつに俺が言ったって言わないでくれな」 『荒北の事?教えてくれるの?!』 「・・・余計な心配だったか。あいつ、最近不機嫌だから何かと思えば、あの転校生が椿さんの好みだって言って、ちょっと拗ねてたからさ」 『・・・私、あの人と話したこともないんだけど』 「ま、そういうことだから」 教室に入って行く新開くんを見ていると夏葵にさっさと教室戻れとせかされた。授業まで時間もないので荒北とは話さずに席に着いた。予習したノートに書き込みをしていく、途中、当てられた荒北がめんどくさそうに本文を読んでいるのを聞いて、どうやら拗ねているらしい彼をどうしたらいいのか考える。 『荒北』 「今度は、何だヨ」 『レース見に行きたい』 「・・・勝手にしろ」 『拗ねてる』 「・・・・・」 『転校生くん、』 「・・・・・」 分かりやすいくらい、ふいっと顔をそむけたので間違いないことを確信して言葉を続ける。 『荒北』 「・・・」 『約束、1個消そうよ』 「は?」 『私が他の人を好きになったらってやつ』 「・・・・」 『ならないから、約束消していい?』 「そんなもんわかんねぇだろ」 『なんで』 「なんで、ってお前、馬鹿じゃねぇの・・・」 『手放してほしくない』 「・・・・・・」 『正直、外見はタイプだったけど。荒北だって、黒髪なんだから眼鏡してみてよ』 「・・・・お前、本当馬鹿だろ。眼鏡してりゃぁ誰でもいいってか」 『そんなこと言ってないし。男は中身じゃないの?』 そこまで言って、耳が熱くなるのを感じた。4月の時は感情が高ぶって色々言ってしまったけど、素面の状態で手放してほしくないって私は何を言っているんだろう。恥ずかしいやつ・・・ 自分が居たたまれなくなって席に戻って伏せた。短い髪が耳を隠してくれることを祈る その日の夜に、今度あるというレースの詳細メールが送られてきたので、どうやら機嫌を直してくれたらしい。 ←→ 目次 |