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「なんもされてねぇんだよな」
『うん』
「ったく、さっさと帰れつったろーが」
『・・うん』

彼が去ったあと、舌打ちしながら近寄ってきた荒北に抱きこまれた。怖かった、知らない匂いも触れてくる手も怖くて逃げたくて、それで。荒北のお小言を聞きながら、さっきまであんなに怖くて、荒北の声が聞こえた時は嬉しかった。最後にかかってきた電話が荒北で良かったって、そう思っていたのに・・・、違う匂いがする。ジャージにも着替えてないということは、授業が終わってからずっと校内にいたということになる。

『なんで、校内にいるの?部活は?』
「あ?」
『なんで、香水の匂いがするの?』
「・・・・・・」
『さっきまで、何してたの?』
「それは」
『告白してきた子、かわいかった?』
「なんで、知ってんだよ」
『クラスの子が見かけたって』
「・・・何もしてねぇヨ」
『本当に?』
「嘘つかねぇって約束したろ」
『じゃぁ、何もされてない?』
「・・・・」
『抱き着かれた?キスされた?』
「新零チャン、俺怒ってんのわかる?」
『私も怒ってる』
「・・・聞けよ」

いつもよりずっと低い声に口を閉じた。ため息が怖くて体に力が入った。

「キスはされてねぇけど、抱き着かれはした。それと」
『うん』
「ちゃんと断った。そんで、1年の時の担任に捕まって雑用手伝わされた」
『・・・・雑用?』
「1年の時、色々あったからヨ。貸しっつうの?やばい時に庇ってもらった借りがあってよ」
『・・・・』
「次、お前の番。全部言って」
『携帯、教室に忘れて・・・』

焦って動揺して、私何言ってんだろう。荒北のこと疑ったのか私、泣きそうになるのを必死で我慢して何があったのか全部荒北に話した。話している途中で、背中から腰に落ちた手については何も言わずにいたけれど、嫌じゃなかった。着信履歴の一番上が荒北だったのは、校内で転校生とすれ違ったから、もう寮に戻ったのかという確認のために電話をしたからだった。なんという過保護と言いたいところだけれど、実際、それで助けてもらったので何も言えない。

「着歴だけじゃねぇよ。そのリダイヤルも俺が出た」
『・・・・』
「だから、やべぇと思って教室まで戻って来たんだヨ」
『・・・・・っ』
「ほら、新零チャンやっぱ女の子じゃねぇか。怖かったんだろーが、泣いてもいいんだぜ」
『な、泣かない』
「涙声で言われても説得力ネェな」
『・・・荒北』
「ん?」
『ありがと』
「そういうの、いらねぇつってんだろ」
『照れるの?』
「っせ。てめぇも人の事言えねぇだろ。他の男の匂いさせやがって」
『じゃぁ、これはマーキング行為ってこと?』
「そーかもね」
『なら、もう少し大人しくしてる』
「・・・・・」
『疑って、ごめん』
「別にいい」
『私より背低い?』
「おう・・・ついでに言うけどよ。その香水の匂いっての、担任の方な」
『・・・・・え』



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