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知らない女の告白なんて無駄な時間だと思った。しかも、俺が椿と付き合ってることを知ってる上で言ってきたのだ。あいつも先輩サンが付き合ってるって知ってる(実際は既に別れてたけど)のに告ったんだから何とも言えない気分だ。正直、興味ない・・・いや、それは嘘になる。そんな色恋沙汰に縁のなかったせいか緊張というか居心地の悪さは感じたし、相手を女と意識することはあった。あいつと違って小さくて小動物っぽくて、短すぎないスカートは真面目さを表すには十分で、きっと頭もいいんだろうと考えていれば、何も言わないのをどう受け取ったのか勝手にくっついて来た。すぐに引き離したし、椿以外に興味がないと言い切って、その場を離れた。その先で1年の時の担任に捕まり、部活があると言っているのにも関わらず強制連行で雑用係だ。恩があるから仕方がないと割り切ったけれど遠慮のなさに舌打ちをした。校内の人がだいぶ減ったころに転校生とすれ違った、椿は帰っただろうかと運べと言われた荷物片手に電話をかけたが出ることはなかった。

だから、電話が鳴った時は着歴を見てかけてきたのだと思った。ところが出たところで声はなく、話しかけても返事はない・・・何かあったのかと耳を澄ませて部活に向かう途中の足を止めて教室へ向かった。日直の仕事早く終わらせろと言ったのに何をしてるんだと携帯を耳に当てながら階段を上がる、微かに聞こえる声が男と女の声なことに気づき焦りを覚えたところで通話が切れた。

2度目が鳴ったのは、階段を上り終えて廊下に出ようとした時だった。見慣れた背中と、にこりと笑った転校生に毛が逆立つような感覚が一気に広がり、殴るなと自分に言い聞かせて口を開いた。

「てめぇ、喧嘩売ってんのか」
「いいや、君、喧嘩強そうだし」

ぱっと椿から体を離して横を過ぎていく転校生を睨みつけながら椿に触れた。言いたいことが口から止まらずに出る。もし自分が気づかなかったら、どうなっていたと思うんだ。あれだけ言っていたのにも関わらず避けられなかったことが腹立たしいというのに、椿の言葉に余計に腹が立つ。あいつが何を言ったのかわからないが、椿が自分を疑っていることは口調からわかる、さっきの自分と同じ責めるような話し方に次に出た言葉は、自分でも驚くほど低かった。ピクリと反応した体と静かになった椿に何があったかを全て話して、同じように聞きだせば、背に手が回るのが分かった。同じ男でも俺は触れてもいいという優越感と独占欲に支配されながら、そっと背から腰に手を滑らせたが椿は何も言わなかったし嫌がるそぶりも見せなかった。

気の抜けた椿の『・・・・・え』という声に、こいつも嫉妬していたのかと気づき、思わずにやけたのは腕の中にいた椿は知らないのだろう。



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