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いつもの連中は、まだ来ていなかったので食堂の、なんとなく指定席となっている場所に先に座った。少しして向かえに新開が座った。相変わらずよく食べるやつだと思う。

「椿さん、今日いないのか?」
「兄貴の結婚式だとよ」
「あぁ、一番上のお兄さんだったけか」
「そうそう」
「写真とか来てねぇの?」
「別に、あいつの兄貴の写真見ても嬉しくねぇんだけど」
「そうじゃねぇよ。椿さんだって、パーティドレスとか着てんだろ?」
「・・・・・・・」
「見たいってメール送ればいいんじゃないか?」

にやにやする新開を前にメールを打ち始めれば福ちゃんと東堂もいつもの席についた。椿のいない理由を新開が説明しているのを聞きながら、簡潔に言いたいことだけ打って送った。当分、返事は来ないだろう。早くて部活が終わるころ・・・と思っていたのだが、食べ終わったころには携帯が震えた。

「返事来たのか?」
「来た」

自撮りかと思えば、誰かに撮ってもらったのかパーティドレスを着た椿が頭から足まで全部写っていた。・・・さすがというか、抜かりがないというか、かわいい、綺麗、かっこいいの3区分なら、かっこいいに当てはまるんじゃないだろうか。化粧のせいか大人びて見えるし、その分色気もはらんでいて、即画像を保存した。本人は嫌がりそうだが、もっと可愛らしい服装も見て見たいと思う。横から覗き込んできた東堂が、振り袖ではないのだなと言ったが、それも見て見たい。2年後には見れるか・・・学区も同じことだしと楽しみになる。そういえば、送られてきたメールには本文がなく添付ファイルのみだったので不思議に思っていれば携帯が振動を始めた。着信。

「靖友、今の画像保存したか?」
「・・・・・・」
「あー、新零じゃなくて残念だったな。俺、千昭な、3番目」
「あぁ・・・どうも」
「新零、今、あいさつ回りしてっからさ。朝撮った写真送った」
「妹の携帯勝手に見んのかよ」
「おう、見る見る。新零ちゃんばっちり決めてっから、こっちでも人気でさ。ちやほやされて、だいぶ顔が引きつってんの。だから、俺の携帯のやつ送ってやったってわけ。どうよ、かわいいだろ」
「もう切っていいっすか?」
「んだよ、お前が見たいって言うから送ってやったのに」
「それは、どうも。それじゃ」
『ちょっと、人の携帯で、誰に電話してんの?!』
「靖友」
『え?なんで』
「お前の写真欲しいって言うから送ってやった」
『人の携帯勝手に弄るな糞兄貴』
「披露宴で汚い言葉使うなよ、ほら」

電話の口塞げよ、全部こっちに聞こえてんだけど。つうか、こいつ酒入ってんだろ、兄妹喧嘩を電話越しに聞きながら、もう切ろうかと考えていると、椿の声が近づいた。

『荒北?』
「おう」
『なんか、ごめん。千昭兄が勝手に』
「いや、いいけどよ」
『しゃ、写真、どうでしたか・・・ちょっと、千昭兄近寄るなっ、この酔っぱらいが』
「・・・・新零チャン聞いてるゥ?」
『・・・・・聞いてる』
「もう、言った」
『え?ごめん、聞いてなかった』
「残念だったな。じゃぁ切る」

慌てた椿の声を遮るように通話を終了すれば、東堂に似合ってるだとか、かわいいだとか言えよと言ってくるが、そんなもん周りに他のやつがいる場所で言えるかよ。ふざけんなと思いながら適当に流した。昼からの授業が始まる前に携帯が短く振動した。メール、本文なし、添付ファイルのみということは椿本人ではないと思ってからファイルを開けば、上目使いでこちらに手を伸ばしている。上から撮られているということは、さっきの3番目に携帯を盗られたのだろう・・・上斜めからの角度のせいか、胸元が気になって仕方がない。なくはないと思っていたが実際どうなんだろうという疑問が頭をよぎる、確かに抱きついたときにあるのはわかるし、ベストやカーディガン越しでもあるのはわかるが・・・いや、忘れよう。何もなかった、俺はこれから静かに授業を受けるのだ。テストを乗り切らなければ部活には出られない、ましてやインハイを控えた今、こんなことを考えている場合ではない・・・・そう思いながら画像を保存した自分は馬鹿だと思う。



『それでね、この人が優月さん。こっちが秋都兄』
「おう」
『ブーケトスは、優月さんの友達が貰ってた。私は参加してなかったし』

結婚式の写真を早速持って来た椿が、説明しながらアルバムのページを捲って行く。中には、本人も写っているので、椿のカメラだけのデータではないのだろう。結婚かぁなんて、言いながらウエディングドレスを来た義姉を見ながら羨ましそうにしているのを複雑な心境で見ていると、視線に気づいた椿と目が合った

『ん?』
「何も言ってねぇ」
『そう?ほら、秋都兄かっこいい』
「そーだね」

ゆっくりとめくっていた椿が、1ページだけさっさとめくったのを不思議に思い、めくるのを防げば、そこは見なくていいと新しいページを広げようとする。

「今の新零チャンだろ」
『違う』
「違わねぇ・・つーか、俺さっきからお前の写真しか見てネェし」
『・・・・・電話、あの時なんて言ったの』
「さぁな」
『じゃぁだめ』
「言ったら、見せてくれんの?」
『・・・仕方ない』
「何も言ってない」
『え』
「ほら、言ったから早く見せろ」

そんなの狡いと言う椿をほってページを戻せば、妙に色っぽく写った椿の写真だった。視線も顔も違う方を見ていて、頬がほんのりと赤くなって見える。原因はわからないにしろ、いつもより露出しているだとか表情だとか、男心くすぐる1枚にドキリとする。
俺からアルバムを奪い返した椿がまたペラペラと説明しながらめくって行くけれど、目線はずっと椿を見たままだった。

『荒北、誕生日来てるし、結婚できるね』
「・・・・・・・・・お前、馬鹿だろ」
『なんだ、話ちゃんと聞いてたんだ』
「お前な、」

すっと目線を流した椿の頬にほんのりと色づいたのに気づいて、からかってやれば兄に散々冷やかされたらしく、むすっとしてアルバムを閉じた。

「椿」
『何』
「似合ってたヨ。ドレス」
『・・・・そうですか』


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