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明日、寮に戻ってくると聞いていた。塾の関係で誕生日当日に寮に戻ってくる新零にと、プレゼントをそろえた。何を喜ぶなんてわからなくて、唸っていれば、東堂にお前が選んだものなら何でもいいだろうなんて言われて、ため息をついた。自分のセンスなんてたかが知れている。それでも買い物に出かければ自然と同じものに目がいった。真似とはいえ結局似たそれを買って、今は自室の黒猫の隣にラッピングされて置かれている。
祭りの日から新零との予定が合わず連絡はとっても会ってはいない。今考えれば、場所とシチュレーションというものの大切さがわかった気がした。あの場がなければ、あんな大胆にキスなんてできなかった気がする。思い出せば、ただでさえ暑いというのに余計に汗をかいた。久しぶりに会うことに気恥ずかしさを感じてはいるものの、正式に付き合い始めたという事実に口角が上がる。にやけずにいられるというのだろうか、地元の連中をざまぁみろと笑ってやりたい。

新零の乗った電車の時間から、だいたい到着時間を考えて寮を出た。

「なんだ荒北、こんな暑い中出かけるのか?」
「新零が戻ってくるから迎えに行ってくんだよ」
「ほう・・今日が誕生日だったか」
「っせぇ、てめぇに関係ねぇだろ」
「今日の椿さんは、ちゃんと携帯を持っているのか?」
「持ってるヨ、さっき連絡来たしな」

廊下で東堂とすれ違って時間ロスしたけれど問題はないだろう。花屋なんて自分には不釣り合い過ぎて入りづらいことこの上ないけれど、その羞恥を対価に新零が喜ぶのなら、と思ってしまうあたりが惚れた弱みというやつなのだろう。店員に彼女さんにプレゼントですか?なんて言われたが、余計なことを言わずにさっさとラッピングを済ませろと内心毒を吐いた。ただ店員が男なだけ良かったかもしれない

時間を確認しながら駅に向かえば、ほぼ丁度のタイミングで駅に着いた。この荷物を持った状態で長時間は待ちたくない。名前で呼んでくれねぇかなぁなんて思いつつ、呼ばれた声に振り返ればリゾート帰りみたいな新零がいた。白いふんわりとしたワンピースに上着を羽織っていてヒールのせいか目線が同じくらいになった。こういう服も着るのかと思いつつ名前を呼べば、いつものように笑った。

「暑いのにごめんね、わざわざ」
「別にいいつーか、寮の方じゃ色んな奴に見られるから丁度いいんだよ」
「ん?」
「誕生日だろ」

新零の手にある荷物を自分の方に引き寄せて、代わりにひまわりを押し付けた。驚いた何度か瞬きをして、嬉しそうに笑った新零に、自分もにやけるのがわかる。

「荒北が買ってきたの?」
「おう」
「ありがと。話、覚えてたんだ」
「まぁな」

にこにこと両手でひまわりを抱えている新零が眩しい・・・なんだこれ、思わず顔を片手で隠した。身長差のない現状、熱の集まった顔も、その仕草を隠す場所などなくて、照れてるとにやけると新零から顔をそむけた。

「7年分かと思うと、やっぱりすごいね」
「喧嘩してから?」
「ひまわりの花言葉聞きたい?」
「・・・あんま聞きたくねぇ」

意地悪くにやにやと笑った新零に嫌な予感しかしなくて、置かれたままのキャリーケースを引きずって先を歩いた。「あ、逃げた」なんて言われても、すぐに追いついて来た新零を反対側に追いやって自分が車道側を歩いた。

「ひまわりの花言葉はねぇ」
「言うな、後で自分で調べっから」
「本当に?」
「・・・・おう」
「じゃぁ、次会ったときに聞くから。宿題」
「・・・・」
「自分の荷物くらい持つよ?」
「別に重くネェし、こーいうでかい荷物は男が持つもんなんだよ」
「誰が決めたわけ?」
「知らネ」
「にしても、立派なひまわりだね」
「何だよ、その辺で毟って来たやつが良かったか?」
「荒北から貰えるなら、どっちでも嬉しいよ?でも、グレードアップした感じがいいよね」
「そーかよ」

椿が肩にかけている鞄から、おそらく日傘らしいものが見えているので別に差してもいいと言ったけれど、「荒北も入るなら差すけど?」なんていうので断った。「差したら隣歩けないし」と新零に荷物を持っていた手に力を入れた。渡すものはまだあるわけで、それこそどこで渡すべきだろうか、今渡せば新零の荷物が増えるだけだ。学校の敷地に入れば少なからず人の目を気にすることになる・・・と思ったが、春のことを思い出して今更かと思った。

敷地内に入ってから、セミのいない静かな日陰を探して少し歩いたところで足を止めた。普段だらっと立っているけれど、新零の前だと見栄だか緊張だかわからないけれど背が伸びる気がする。

「これ部屋戻ってから開けろよ」
「・・・うん。ありがと」
「そんで・・・」
「?」
「あと、こーいうのもあんだけど」
「・・・指輪」
「サイズとかわかんねぇから、勘だけどよ、左手の薬指にはすんな」
「なんで?彼氏いますよって証明じゃないの?」
「そこは、違う指輪するところつーか・・・そんな安いやつする場所じゃねぇだろ」
「・・・了解。じゃぁ右手の薬指にする。ありがと、大事にするね」
「おう・・」
「左手は将来的にとっておけってことだよね。楽しみにしてる」
「・・・・・・・それは、俺に言ってんの?」
「・・・・・・・・・」

ぽかんとしたまま顔を赤くした新零の額を弾いて、自分の顔を見られたくないこともあって、そのままキスしてやった。

「誕生日おめでと」
「ありがと」
「新零、顔真っ赤」
「だって、・・・キスとか、まだ恥ずかしいし」
「この前、自分からしたくせに、そう言うこと言うのォ?」
「あれは、ノリとかそういうので」
「へぇ?」
「もう、その顔ムカツクっ!!」


女子寮の前まで新零を送って、自室に戻った。自分にしては上出来だ。・・・少し伸びていた髪が短くなっていたので戻る前に美容院で整えてもらったのだろう。長髪の新零も見てみたいと思う。
・・・そうだ、ひまわりの花言葉調べるんだったか、と携帯を取り出して検索をかける。あまり見たくないが、全く気にならないわけではない。柄ではないけれど、言われると気になるのだと自分に言い聞かせてページを開いた。

「・・・・・・・間違っちゃいねぇな」

なんだこのむずがゆさは。それで、7年と言ったのか・・・と少しだけ納得した。喧嘩以降とすれば、それくらいの年数だ。それより前はガキ過ぎて記憶も薄いうえに、色恋沙汰なんて気にもしなかったゆえに気づいていないだけかもしれないと思うと、自分はいつから新零のことを好きだったんだろうか。自然と特別視せざる負えない状況だったとはいえ、決定打は間違いなくあの時だった。今でも変わらない笑顔に惹かれては、触りたくて仕方がないのだ。しかし、あれだ・・・あの場で聞かなくて良かった。



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