65 色違いの猫が部屋に来た。自分が欲しかったというのがばれたんだろうか・・・こうしてみると、やっぱりかわいいと思う。ぎゅっと抱きしめてベッドに転がった。袋タイプの花瓶にひまわりを飾って、とりあえず勉強机の上に置いたけれど・・・少し縁起悪く見えたので後で移動させようと思った。後で写真も撮ろう・・“貴方だけを見つめる”とは、本当に・・・・・・私は、太陽でもなんでもないのに。しかし、本当に見かけによらずさりげない優しさが、かっこよくて仕方がないと思うのは、好きになった弱みなんだろうか。素直に、好きだなと言えてしまう自分の口が怖い。 3年の夏休みが終わってしまうと思うと淋しい。高校生活の残り時間は受験に費やされてしまうのか・・・まだイベントはあるけれど、進路から目を離せなくなる。実家から通えない大学に決まれば、1人暮らしになる。候補の大学には寮がないので、今のような共同生活はできないのだ。余計に淋しさを感じて、夏休みが終わらなければいいのにと思う。9月も8月と同じような暑さが続くというのに、この気分的な違いは、どこから来るのだろうか・・・ 「新零、やっぱり帰って来てた」 「夏葵、ただいま。でも、さっき帰って来たばっかりだよ?」 「そうなの?あ、何々、それ荒北くんに貰ったの?」 「うん。私が前に荒北に上げたぬいぐるみの色違い」 「・・・それもだけど、指の」 「うん。シンプルだけど、いいでしょ」 「あーあ、仲がよろしいことで・・・あの、ひまわりは?」 「荒北に貰った」 「へぇ・・・荒北くんが。ちょっと意外」 「だいぶ意外の間違いじゃない?」 「遠慮してあげたのに、どうして新零が言っちゃうのよ」 「前に、色々あったわけですよ」 「ふーん。まぁ、いいですよ。じゃぁ、私からも。誕生日おめでとう、新零」 夏葵からのプレゼントを受け取って、早速開けながら話をしていると、戻って来たばかりの百合からもプレゼントを貰った。久しぶりに会って話せたこともあって、長話になったけれど楽しくて仕方がなかった。 夏休み最終日に、みんなで夕飯後に花火をやることになった。女子寮だけかと思えば男子寮も一緒のようで、始めは夏葵や百合と一緒にやっていたけれど終盤には荒北と一緒にいた。 「ひまわり、ちゃんと調べた?」 「調べた。間違っちゃいねぇな」 「本当に、私でいいの?」 「その言い方気に入らねぇな。で、じゃねぇよ。お前がいいの」 「そう言われると照れるね」 「・・・もし、お前がバレーやめてなくて、俺が故障しなかったら、こうはならなかったかもな」 「そーでもないかもよ」 「?」 「実家近いんだから、遭うことはあったかもしれないし。会おうと思えば会えたんだし・・・荒北次第だったと思う」 「・・・・・」 「私がバレーやってて、荒北が野球してても、荒北が近づこうとしてくれたら私は荒北のこと見たかもしれない」 「俺次第ねぇ・・・」 「だって、そうでしょ?」 「・・・そーだね」 「どーしたの、荒北くんや」 「さぁな。・・・・なんつうかさ・・・やっぱ何でもねぇわ」 「そういうの狡い」 「何でもねぇよ」 「?」 何か言おうとしてやめたこと言葉がなんだったのか気になるけれど、満足そうに口角を上げた荒北を見て、彼の中で何かしら片付いたのならいいかと割り切ることにした。 「荒北のこと、好きだよ」 「・・・・・・どーしたの、急に」 「なんとなく、言いたくなった」 「そーかよ」 微妙に空いていた距離を詰めて自分たちの影になる場所で手を繋いだ。空いた手で頬をかく様子を眺めれば、こちらを向いた荒北が顔を近づけた。何をされるのかわかるけれど、ギリギリまで目を開け、じりじりと詰まって行く距離を待っていると、途中でバッと離れた。何かと思えば、東堂くんたちがこそこそと、こちらを見ていた。ちらりと荒北の方を見れば、不機嫌ですと顔に書いてあるくらいわかりやすくて、笑ってしまった。「しても良かったのに」と言えば、驚いた顔で振り返られたけれど本当なのにと笑っておいた。 ←→ 目次 |