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荒北が箱学のジャージを着て走ってるのを見るのもこれが最後かなぁと思った。こっそり写真も撮れたので声はかけずに寮に戻るつもりだったのだけれど、後ろから名前を呼ばれて、少しだけ顔をだした。自転車部の人たちと話している荒北を見ていて、野球をしていたころの荒北を思い出した。嫌い嫌いと言いながら私もなんだかんだ荒北のことを気にしていたんだなと思う。好きの反対は無関心なんて言うのだから、そういうことなのだろう。色々あったんだろうなぁ・・・

「お前、何泣いてんのっ?!」
「泣いてないし」
「荒北、女子を泣かすなどいかんぞっ!」
「っせぇ、何もしてネェだろうが!!」

慌てている荒北が面白くて笑ってしまったけれど、少しうるっとしてしまっただけなのでほっておいて欲しかったのに、目敏く気づくとは・・・。

「別に悲しくて泣いてるわけじゃないから気にしないで」
「じゃぁ、何が嬉しくて泣いてんだよ」
「うん?荒北も大きくなったなぁ・・・って」
「お前は俺の母親かよ!!」
「せめて姉がいい!!」
「勝手に弟にするんじゃねぇよ!!」
「弟か妹が欲しかったんだから丁度良かった!!」
「靖友と結婚すれば、必然的に義妹ができるな!良かったな、椿さん」
「本当だ荒北、妹2人もいるし・・・って、新開くん変なこと言わないでよ!!」
「結婚式には俺たちも呼んでくれよ?」
「うちの旅館で結納なんてどうだ?」
「っせぇな!!適当な事言ってんじゃねぇよ!!」
「いかんいかん、下手に煽って思っていないことを口にしたりさせんようにしないとな!」
「まじで、口塞ぐぞ」
「荒北って、私のこと皆に話したりしてんの?なんか知ってるっぽいけど」

下手に煽ってというのを知っているということは、少なからず東堂くんは私と荒北の間に何があったかは知っているようだし、同じく話に乗っている新開くんも知っているようだった。流れからして福富くんも知っているのだろう。・・・そういえば私の上履きを片付けたのは新開くんだと言っていたなと思い出す。

「1年くらい前の時に靖友の様子がどうにもおかしかったから、色々とな」
「この男は本当に不器用だからな。もしも、泣かされたら遠慮なく俺たちに言ってくれていいからな。俺たちからきついお灸をすえてやる」
「しかし、あの時の沈みっぷりはすごかったな」
「もう、その話はいいだろうがっ」
「ちょっと荒北うるさい。それで?」
「あ゛?!」

私が、夏葵や百合に話していたのと同じように、荒北も新開くん達に話していたのかと思うと彼らには感謝しなければならない。荒北1人では、きっと何も解決しなかっただろうし、私1人でもそうだ。あれこれ教えてくれるのを聞きながら、なんだか嬉しかった。

「てめぇら、後で覚えとけよ」
「私が聞いたんだから、お咎めなしでしょう?」
「・・・じゃぁ、新零チャン。後で覚えてろよ」
「知らない、何も聞こえない。では、私は寮に戻ります」
「・・・新零」
「うん?」
「・・・その、なんだ」
「礼くらいさっさと言わんか」
「っせ、今言うんだよ!!邪魔すんなっての」

近寄ってきた荒北がぼそっと「あんがと・・・その来てくれヨ」と言って、つかつかとみんなの所に戻って行った。メールからが口からに進化していることを微笑ましく思ってしまうなんて本人に言ったら、きっと怒られるのだろう。寮に戻って、インハイの時の写真と今日の走行会の写真を見返して、何気ないしぐさだったり、みんなといる時の表情の変化だったりを見て、やっぱりかっこいいと思った。小さいころの写真と比べても、変わらないはずなのに知らないうちに男の人になったんだなぁ・・・もし戻れるのなら、中学生から荒北とやり直せたらと思う。でもどうだろうか、あの荒れていたころの荒北と上手くやれただろうか?もし喧嘩になって、私は、ちゃんと謝れるだろうか・・・

「強いなぁ・・・本当」

私にはできそうもないよ



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