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はたから見ても、あんな風に助けてもらったら少なからず意識してしまうものだと思う。少女漫画ではお決まりの展開で、少年漫画でもありがちな展開だ。ストーカーになんてできれば遭いたくない。それでも、少しだけ羨ましいと思ったのは、彼に守られたいなんていう欲なんだろうか。

「つまり、新零は乙女だったってことでしょう?」
「なにそれ・・・」
「対等でありたいとか、守ってあげたいとかじゃなくて、守って欲しいって思ったんだから」
「新零のタイプは、頼れる男だったってことで」
「王道だね」
「2人して真剣に聞いてるのに」
「だって、新零が心配してるそれってさ、単に嫉妬でしょう?荒北くんを他の誰かに盗られたくないっていうさ。前からそんなこと言ってたし、正式に付き合い始めてから初めてだったってだけじゃない」
「そうそう。でもまぁ、そういうの聞くたびに荒北くんが他になびくとは思えないから安心していいと思う」
「本当、新零の話し聞いてると荒北くんが見かけによらず色々持ってるんだって知れて面白いわ」

嫉妬と言われれば納得はできる。それに、思い返してみればおそらくあの言葉は自分を心配してのことだったのだろう。荒北靖友が男だということはもちろんわかっているけれど、力だったり仕草だったり、男の人なんだなって思う瞬間に心臓が音を立てるのだ。今日のもそう、私が投げ飛ばした男を地面に押さえつけているのも、きっと誰でもできるわけじゃない・・・

「新零―、顔赤いけど何思い出してんの」
「な、何にも思い出してないっ!!」
「そうだ、聞き忘れてたけどさ。冬休みに何か進展あったわけ?」
「進展?」
「そりゃぁ、実家に帰ってさぁ・・・ねぇ、百合さん」
「ねぇ?夏葵さん」
「寮じゃできないことってあるでしょうが、馬鹿新零」
「そんな純粋な子じゃないでしょう新零ちゃんは」
「あ・・・・」
「あーあ、さっきより顔赤いけど、何この子。ピュア気取っちゃって」
「別にそんなんじゃないっ!!」
「でも、その感じは何もしてないって感じだね」
「今は受験中で、それどころじゃないんだってば!!」



自室で見る鏡と、外で何気なく写った自分を見るのとは少しだけ見方が変わる。思ったより伸びていた髪に驚きつつ掃除を終えて教室に荷物を取りに行く途中だった。今日は、バレンタインなだけあって1,2年生はどこか浮かれていて、3年生も今年が最後だからと気合を入れている子もいた。

「!」
「靖友」
「新零、お前また学校に残って」
「掃除だったんだから仕方な・・・・・、それ何」
「・・・・・・・」
「貰ったの?」
「・・・・おう」
「・・・・・・へぇ、私からはいらないって言ったのにね?」

寮暮らしでは、手作りなんていうのは難しい。さらに時期的にも忙しいだろうから、いらないと本人から言われたのだ。だから用意なんてしていない。靖友の手にある小さな紙袋は明らかにその手のもので、別にもらうぐらいいいやと思う自分と、なんで受け取るの?と疑問を持つ自分がいる。怒ってるつもりはないけれど、面白くはない。

「礼だって言って、押し付けられた」
「礼?」
「ストーカーの時のやつ」
「・・・・やっぱり」
「これって、手作りとかか?」
「そうじゃない?」
「・・・・・・・・」

気まずいのか、わしゃわしゃと自分の髪をかき混ぜて低く唸っている。様子からして、受け取るつもりはなかったのだろうから押し付けられたというのは本当のことなのだろう。

「食べればいいんじゃない?」
「・・・勘違いすんなよ」
「何を?」

思ったよりも低い声が出たせいか、靖友の顔に焦りと“どうしよう”と書かれているのがよくわかった。手に飾られた袋をたくさん持った東堂くんすれ違いざまに軽く声をかけてきたけれど「しゅ・・・修羅場か?」とそろりと身を引いて行った。さすが忍者だけれど、修羅場というつもりはなく靖友が1人で絡まっているような状態なのでいっそ、茶化してやった方が良かったのではないかと思ってしまった。

「怒ってるつもりないから、普通に食べてあげたらいいと思うし。捨てるのはかわいそうだし、お礼って言われたならなおさらだし」
「・・・・新零」
「何?」
「・・・」
「・・・・?」
「お前、そう言ってる割に眉間に皺よってんだけどヨ」
「ごめん、そんなつもりはなかった」
「妬いてんの?」
「・・・・・妬いてないこともない」
「妬いてんじゃねぇかよ」
「悪かったわね、心が狭くて。怒ってないけど、面白くはない」
「そーかよ」
慣れてないことに対して、それも相手が女子で良い子そうな感じの子からだなんて、その場にいた靖友はどんなだったかなんて、少し考えればわかってしまう。

「ちょっと、なんで嬉しそうなのさ」
「べっつにぃ〜」
「何かむかつくんだけど」
「これ、新開んとこにでも混ぜときゃ勝手に食うだろ」
「・・・・」
「だから、終わったら寄こせよ」
「・・・・・うん」

額を指で弾かれて、通り過ぎて行った靖友は廊下の先にいた新開くんに「いらねぇからやる」と言って、それを投げた。あの子には悪いけれど、にやけてしまった口元はしばらくは戻らないかもしれない。




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