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朝起きてすぐに倦怠感に襲われる。体を起こすのが嫌になる。消太と一緒にいない限りこれは一生続くのかもしれない。起きたら支度を整えて洗面所へ向かい身だしなみを整える。居間に来たら昨日準備しておいた朝食を温めて口に運ぶ。朝食を終えたら薬を飲んで家を出る。兄が継ぐまで代行をしてくれている神社の関係者の人に挨拶をして階段の前に立つ。本当は怒られるけれど、自分の重力拒絶を調整して階段の上から飛び降りる。数回足をついて1番下まで降りて来る。これが1番最短で無理なく降りられたのだ。毎朝これを律儀にちゃんと降りていたら遅刻ギリギリの電車に間に合わない。

電車についている小さな鏡で髪の毛を整えると同時に耳のカフスを確認する。まず取れることはないが、それでもついていることを確認する。もし万が一左足のアンクレットが壊れても、こっちが無事なら最低限言うことは聞いてくれる。どちらも、消太がプレゼントしてくれたものだ。アンクレットは伸縮自在らしく子供の時から変わらないものを使っているが、耳のカフスは高校の入学祝いとしてシンプルで大人っぽいデザインのものを新しくつけてくれた。見た目に反して、センスは悪くないし、さすが長年面倒を見てくれてるだけあって私の好みをわかってくれている。

学校前の坂道を駆け上がって、ギリギリ正門をくぐる。次は予鈴の前に教室に滑り込む。週3回は遅刻ギリギリだ。今日は、運よく1つ前の電車に乗れたため、比較的時間に余裕があった。教室に入って友達に挨拶をする。

「新零、ここ寝癖酷いよ」
「そうなんだよ・・・朝鏡見て気づいたんだけどね、学校で直せばいいやって」
「じゃぁさっさと直してきなよ。あんまり時間ないよ」
「うん」

ポーチ片手に教室を出て廊下を進めば、この前初めて会った轟焦凍くんが前から歩いてきたので軽く挨拶をした。無表情で少し怖いけれど、私の方を見て返って来た挨拶に安心したのもつかの間、明らかに寝ぐせのある場所に視線が動いたことに気付いて、そこを押さえて走り去った。
トイレまで来てポーチがないことに気付いたのは間抜けすぎる。とりあえず水を付けて馴染ませてみたがどうにもならず、来た道を戻ったがポーチは見当たらずに、慌てて心当たりのある人を求めて1-Aの教室に向かった。扉を開けた瞬間、視線が自分の方に向いた。さすがヒーロー科なだけあって、みんな目力がすごかった。

「やっぱり、轟くんのところだった」
「すぐに返しに行かなくて悪かったな。中は見てねぇ」
「うん、ありがとう」

さぁ、自分の教室に戻ろうと思ったところで、消太の声が聞こえた。こうして教室に入るところを見ると、やっぱり先生なんだなぁと思ってしまう。あの人が先生をしていることは、いまだに目新しく感じる。“相澤先生”と呼ぶのもなかなか難しい。顔を見てしまうと“消太”と言ってしまいそうになる。何度も、「俺とお前は、4月からは教師と生徒だ、呼び方気を付けろよ」と念を押されたが難しいものは難しい。


結局、寝癖は直せないまま1限が始まった。ポーチを鞄にしまって、筆箱を机の上に置いた。
轟家のことは、冬美さんが焦凍くんとお母さんの関係を小さいときにしてくれたので、なんとなく覚えている。その意味をちゃんと理解したのは、もう少し大きくなってからだったけれど。どうして冬美さんは私に話してくれたんだろう。と、たまに思う。向こうも私のこと、何か知っているんだろうか。
ポーチを返してくれた時も、初めて会った時も無表情で怖いイメージはあったけれど、悪い子ではけしてなさそうで、せっかくなら、もう少しお近づきになりたいなぁ・・・なんて、ただのわがままなんだろうか。

怖いのに、会ったのも最近なのに、知らない男の子ではないからなのか、そんなことを思った。消太も愛想がいいわけじゃないけれど色々知っているから怖くないのだろう。



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