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「新零ちゃんに会ったの?!」
「あぁ」
姉の顔を見たタイミングで、そう伝えれば嬉しそうに笑った
「新零ちゃん、かわいかったでしょ」
「・・・・・」
「焦凍は、そういうのあんまり興味ないか」
特に答えなかったが、姉は彼女の話を少しして台所の方へ歩いて行った
「轟くん、おはよ」
「おはよ」
あれから1週間後、偶然廊下ですれ違った
まだ眠たそうで、髪に残る寝ぐせが寝坊したことを示していた
俺がそこを見たからか、慌てて手で押さえつけて少し恥ずかしそうに笑って廊下を走っていった
彼女が去った場所に転がっているポーチを見つけてしまい、ため息をつく
髪を押さえたときにした音はこれか
それを拾うのにやや抵抗があったのは、見た目に可愛らしすぎたからだろう
ポーチを手にとりあえず1-Aの教室へ戻ってきた。机に置いたそれを見て上鳴が興味津々に聞いてきたので、ついでに聞いてみることにした。
「椿新零って知ってるか?」
「・・椿、新零だと」
「あぁ」
「それ、椿さんのなのか?」
「あぁ、返したいがクラスがわから」
「D組だ」
言い終わる前に即答された。「わかった。助かる」と返したものの彼女は少なからず有名人らしい。さすがに何もない生徒のクラスのことまで覚えてはいないだろう。
「椿さんって言ったら、普通科の中でもトップクラスの人気女子だぞ」と峰田が横から入ってくる。震えながら伸ばしてきた手に掴まれる前にポーチを持ち上げた。
「す、少しくらいいいだろ?女子のポーチだ、中には、そりゃぁもう」
「・・・・・・」
「いや、さすがにそれは駄目だろ。返しに行くの轟だぞ。万が一、中見られたこと気づかれたらどうすんだよ」
「なら、お前が返しに行くか?」
「お前、椿さん売るなよ」
「?」
「轟くんいる?!」
ザッと開けられた扉にクラスメイトが一斉に目を向けた。爆豪がどうだったかは覚えてないが。上鳴と峰田が大袈裟に反応して、八百万の呆れた声が聞こえた。
扉を開けた本人は、朝の寝ぐせどころか慌てて走ったのか、髪の状態は悪化していた。
今にも教室に入りそうな椿のところへポーチを持って行ってやれば、「やっぱり、轟くんのところだった」と安心したように息を吐いた。そんなに大事なものが入っていたのなら、普通科とわかっていたのだからすぐに持っていけば良かったと少し申し訳なさがあった。
「椿、お前は1-Aじゃないだろ」
「しょ・・・相澤先生、すいません。すぐ戻ります」
「ありがと」と笑って自分のクラスへ走っていくのを見て「廊下は走るな」と相澤先生の声が飛んで行った。
休み時間に聞かされたのは、椿が一部男子注目女子であるという話の続きだった。そういえば、姉もそう言っていた。力説する峰田の言葉を聞き流しながら、まぁ、確かに思うところもある。あるが、やはり病院のことが引っかかった。あのポーチには薬でも入っていたんだろうか。