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「クッソ、どこ行きやがった」

戦闘訓練の敵役だった、犬面の女
身のこなしや、轟の時の違和感、隙を作れなかったとはいえあれはプロヒーローの動きではなかった。小柄な体型や反応からしても、生徒の可能性が高い。ことごとく自分の攻撃をはじいた個性が一体何なのかはっきりしなければ納得がいかない。バリア?カウンター?そんなもんではない。空気を蹴って進むことも、建物の崩壊だってそうだ。あの犬面の女を中心に吹き飛んでいた。大体影響範囲の広さもとんでもなく、予備動作さえ一切ない。“反発”という言葉は確かに的を得ているような気がしたが、必ずしも受けたものを返していたわけじゃない、流していることも多かった。
考えれば考えるほど疑問ばかりが浮かんで気持ちが悪い。どう動けば、どう反応すれば対応できた。

「・・・・・」

生徒というくくりにしてしまえば、上級生の可能性もある。ともすれば自分の考えは狭いのかもしれない。だが確かめるくらいはしてもいいはずだ。担任とよく一緒にいた、なんとかっていう女。顔はなんとなく覚えがあるが、名前も学科も知らない。廊下で出くわせば問い詰めてやる。









翌朝
職員室へ向かう廊下で犬面女(仮)を見つけた。どうせうちの担任に会いに行く途中だろうと後ろから声をかけた。

「おい!てめぇ、ちょっと面貸せ・・・っ?!あ゛?」
「びっくりした・・・何?」
「てめぇ、今何しやがった」
「何もしてない」
「してねぇわけねぇだろ。こちとら右手を弾かれてんだよ」
「・・・・」
「やっぱり昨日の戦闘訓練の敵は、てめぇだな犬面女」
「何の話?」
「しらばっくれてんじゃねぇ。てめぇの個性教えろ」
「嫌だ」

まただ、反発されるように伸ばした手が女に届かない

「ふざけやがって」
「急になんで絡んで来るの?!というか、離れてよ」
「うるせぇ、個性聞くまで・・・」

相手の両方を掴もうとして手に力を入れた瞬間、強い力で跳ね返される気がして身構えようとしたが、そうはならなかった。その前に目の前にあった反発力がなくなり覆いかぶさるように女の方に倒れこんだ。目の前にある女の目が大きく見開かれ、嫌そうに眉が顰められた。

「お前ら、朝からうるせぇぞ」
「・・・・・」
「・・・・・」

担任に睨みつけられ、このありさまということは今、下にいるこいつは自分に対して個性を使っていたということになる

「椿、お前、飲まずに来たな?」
「は?」
「爆豪くんに関係ない・・・・それより早くどいてよ」

こいつ本気で嫌そうな顔しやがった。個性を言わないてめぇが悪いんだろうが、そもそも校内で許可なく個性使ってんなよ。女の上から体を起こせば、担任と目があった。

「爆豪、何があった」
「昨日の戦闘訓練の敵役が、こいつだと思ったから聞いただけだ」
「・・・・それだけか?」
「こいつの個性が、はっきりしねぇから聞き出そうとした」
「・・・なるほどな」
「消太の馬鹿、最低」
「お前は、しばらく黙ってろ。あとさっさと飲め」
「・・・・・」
「爆豪、お前が言いたいことは分かったが、こちらもできることとできないことがある」
「?」
「昨日の戦闘訓練の敵役はあくまでゲストだ。それ以上は言えない」
「じゃぁ、先生。敵役がこいつじゃないとして、あの個性についてくらい聞かせてくれんだろ」
「・・・・余計な詮索するなよ」
「わかった」

担任に場所を変えると言われ大人しくついていった。この際、誰の部分はどっちだっていいと思っていたが「校長に確認取ってくるから待ってろよ」と言われ、予想外の展開に驚かざるをおえなかった。そんな大事なのか・・・?そういや、廊下に置き去りになってた、あの女はどうしたんだろうか。まぁ、どうでもいい。


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