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「え、見たかった」
「・・・・」
「見たかった」
「・・・・記録ビデオはあるかもしれねぇが、さすがに見せてもらえねぇだろ」
「・・・・」
「・・・・」
期末テストが終わった翌日、椿家の居間に来ていた。明日、七夕祭がおこなわれるため境内には町内会の人が集まっていた。七夕の儀式は儀式として、祭りは便乗してこの神社で行うらしく新零の手伝いはあくまで儀式だけで、特別忙しいわけではないらしい。
「実技の様子、見たかった」
「あきらめろ」
「・・・・・」
ヒーロー科の実技テストの話をしていたら、見てわかるくらいに新零が残念がり不服そうな顔をしていた。何を見たかったのか知らないが、さすがに映像の確認はできないだろう。
「八百万さんって、色々体から作れる子だよね?」
「あぁ」
「あの露出がすごい子だ」
「・・・・・」
「創造って、胸元からじゃないとできなかったけ?あのコスチューム戦闘中にちょっとドキドキしたの覚えてる」
「どこからもできたと思ったが」
「やっぱりそうだよね。物質量どうなってるの?あれだけ外に出しても、どうして胸は変わらないの?」
「・・・・・」
「個性って怖いね」
「・・・・・そうだな。そういえば、お前、相澤先生の後遺症のこと知ってたか?」
「うん、4月の怪我の後、聞いたよ・・・本当、あんな怪我、心臓に悪いよ」
「・・・・・」
「誰だって痛いのは嫌なのに、人を庇って敵の前に出るっていうのは意志が強くないとできないよね」
「あぁ、そうだな」
「でもやっぱり、自己犠牲は美談にしちゃいけないと思う。いくら理解があって覚悟してたって、その人が傷つくことで悲しむ人たちもいるんだよ・・・焦凍くんも、そういうの忘れちゃだめだよ。・・・こういうこと言われるのやっぱり嫌?」
「そんなことねぇよ。そりゃぁお節介だと思わないこともねぇけど、そうやって思ってくれる奴がいるから、ちゃんと帰らねぇとって思えるんだと思う」
「だといいな」
どこか不安げで、寂しそうに笑った。彼女自身、人を傷つけたことがあるからか、昔から相澤先生の傷が絶えないのかわからないが、そういう部分にひどく敏感になってしまったのだろう。これは、緑谷と親交を深めてしまったら彼女の心労は凄まじいものになりそうだ。実際、あいつの母親はとんでもなく心配しているのではないだろうか。
「お前自身は、怪我しないのか?」
「うーん微妙なところかなぁ。転んだ時にぶつかる物を拒絶できれば怪我は防げるよ。あと直接命に関わる場合とか、後ろから車が突っ込んできても怪我はしないと思う。ただ、自分で引っ*いたとか、紙で切ったとかそういう怪我はするよ」
「・・・なるほどな」
「死ぬのは嫌だっていうのがやっぱりあるからかな、制御装置していても根本的な部分は常に発動しているし、無意識に発動するんだと思う」
「弱点らしい弱点が見つからねぇ」
「・・・弱点?」
「あぁ、あるのか?」
「内緒ね」
「当然だな」
「うん。熱があるときは、個性が上手く発動しない」
「前にウイルス系も拒絶できるけどしねぇって言ってただろ。した方がいいんじねぇか」
「昔してたせいで、熱が出ると長引くの。だから今は少しずつ慣らしてるところ。そこは身体機能らしく顕著にでるんだよね・・・」
「そういうもんなんだな」
「そういうもんなんだよ・・・。熱出たら助けてね」
「見舞いくらい来てやるよ」
「よろしくお願いします」
翌日、聞いていた時間に神社に来てみれば思っていたよりも人であふれていた。確かにこれだけの人間が連なって階段を上がれば事故が起きかねない。早めに来た方がいいと言っていたのは、そういうことか。自分のペースで上れないためかいつもより疲れを感じる。日も落ちたころ、神楽が響き始めた。屋台の方にいた人たちも順に舞が行われる場所へ集まってきた。
「新零ちゃんも、もう高校生か。兄貴の方は、まだ大学から帰って来てなかったな」
「そうそう、子供の成長は早いもんだなぁ」
「そうだなぁ。しっかしまぁ新零ちゃんは昔から可愛かったが」
「最近、磨きがかかって来たな」
「だなぁ、もう5年もしたら、もっといい女になる」
「まだやっぱりあどけない感じがあるからな、もっとこう大人の色気が欲しいところだな」
うんうんと自分の後ろで話す地元のじいさんたちの話を耳に入れながら時間を確認する。後ろのじいさんたち以外にも、新零の話をしている近所の人たちは、口をそろえて彼女のことを良く言っていた。それがなんだか嬉しいと思った。もう一度時間を確認したところで、神楽が止まり、宮司が姿を現した。時がくれば、あの役を彼女の兄が正式に継ぐのだろう。
再び神楽が始まると、彼女が姿を現した。いつもとは違う装いに髪型も化粧も相応のものになっている。当然と言えば当然だが、周りから「綺麗」と感嘆の声が出ているのがすごく遠くで聞こえた気がした。昨日、居間でだらだらと話していた奴とは、到底思えない。目が離せなくなる感覚は2度目だ。彼女が、シャンと鈴を鳴らすたびに空気が澄み涼しさまで感じる。
「こりゃぁ・・・」
「1年で随分色っぽくなったなぁ」
「ありゃぁ、男を知ったな」
「いやいやぁ、色っぺぇっていっても残る清楚さがいいんだろ」
「あれがJKの本気か」
「若いっていいもんだな」