04



体育祭が終わって母に会った
これから何かが変わっていくのがわかる

病院の帰りに椿の神社に手を合わせに行くことにした。体育祭前に、ここに来た時感じた、あの空気を吸いたかったのと、礼を込めて、もう一度手を合わせたいと思ったのだ。椿はいるだろうか?

「椿」
「轟くんだ」
「今日は、私服なんだな」
「・・・見たかった?」
「そういうつもりはなかった」

残念そうに見えたんだろうか・・・?

「轟くん、体育祭お疲れ様」
「あぁ」
「雰囲気変わったね」
「そうか?」
「うん、今の方がいいよ」
「・・・・そうか」
「そうだよ」
「椿は、体育祭どうだったんだ?」
「私?私は、さっさと棄権したよ?争い事にはあんまり興味ないの」
「へぇ」
「そういえば、ヒーロー科は職業訓練あるんだよね?指名とか来るんでしょ?」
「まぁな、」
「轟くん多そう。1番だった爆豪くんより多いんじゃない?」
「どうしてそう思うんだ?」
「あの表彰式の爆豪くんすごかったから、好き嫌いが分かれそうだなぁって」
「なるほどな」
「ずっと客席で見てたけど、みんなすごいよね。あんな風に個性が使えて、かっこいい」
「そうだ。椿の個性、聞いてもいいか?」
「・・・・・うーん、どうしようかなぁ」
「言いたくないなら別にいい」
「轟くんには嫌われたくないから、言うか迷う」
「・・・・個性が理由で嫌ったりしないぞ?」
「本当に?」
「あぁ」

にこにこしていた椿の表情が一瞬冷え切ったように見えた
そんなに個性を言いたくないのだろうか?それとも無個性、いやそんなことはないだろう。思い当たる理由は浮かばないが、自分が嫌だと思うことがあるように彼女にも嫌なことがあるのだろう。それを無理強いはできない

「轟くんが、何か私に自分のこと話してくれたら教えてあげる」
「交換条件か」
「うん、何でもいいよ?昨日の夕飯は何だったとか」
「さっき病院で、母親に会ってきた」

椿の目が大きく見開かれて、ぱちぱちと瞬きされた。睫毛長いな

「そっか、お母さんに」
「椿?」
「良かった・・・本当に良かった」
「・・・・・」

泣かせるようなことは言ったつもりはなかったが、じわじわと椿の目に涙が溜まっていくのに驚いて、慌てる

「ごめん急に、少なからず事情知ってたから。良かったなぁって」
「・・・・・・」
「私の個性ね、学校では反発って言ってるの。触れたものを少しだけ跳ね返す個性」
「同極みたいなもんか?」
「うん。でも本当は違う」
「?」
「私の個性は、拒絶。私が嫌だと思ったものをはねのける個性」
「・・・・・そりゃまた」
「人に言わないでね」
「あぁ、約束する」
「ありがと。一部の先生は知ってるみたい。相澤先生も」
「・・・仲いいのか?この前、名前で呼びかけただろ」
「うっ・・・聞いてたの」
「まぁな」
「・・・個性のことで、小さいときからお世話になってるの」
「それでか」
「まだ慣れなくて、つい間違えちゃって」
「向こうも名前で呼んでただろ」
「そうだっけ?まぁいいや。ま、そういうことなのでよろしくお願いします」

俺が頷くと椿は、また笑顔を向けて来た

「ここは、いいな」
「ん?」
「静かで、風の通りもいい」
「うん、高台だしね」
「それに空気もいい。やっぱり神様を祀ってるところは違うんだな」
「まぁ、そうだね。私がいるからっていうのもあるけど」
「ん?」
「私がいる間は、邪は寄せ付けないから」
「・・・すげぇ個性だな」
「でしょう?1つ間違えたら空気ごと全部ふっとばしちゃうから、難しいんだけどね」

さらりと怖いことを言った椿は、何ということもなく笑って「そうだ」と切り出して、俺のことを名前で呼ぶようになった。自分にも同じように求めて来たので応じれば、思いのほか抵抗もなかったしむしろ馴染んだのは、姉がいつもそう呼んでいたからだろう。
ただ、問題があるとすれば新零が、俺と相澤先生の名前を逆に呼びかけて恥ずかしそうに顔を覆うことが、この先続いたことくらいだろう。そのたびに慌てて顔を赤くする様子が面白くて笑えば、「意地悪」と頬を膨らませた。



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