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「最近、椿と仲いいんだろ」
「・・・はい」
「あいつ、お前と俺の名前を間違えかけるんだが、お前にもか?」
「はい」
「・・・お互い苦労するな」
「そうですね」
「それだけだ、引き留めて悪かったな」
「いえ・・、先生1つ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「あいつは昔から個性制御装置を付けさせられてるんですか?」
「・・・・あぁ、俺が呼ばれた時にはな」
疲れた目を遠くに向けた担任に、色々あったんだろうなと察した。だからこそ、新零は懐いているのだろう。そんな話を帰りがけの人の少ない教室でしていた。先生が昔からの付き合い故に新零のことを気にかけるのか、それとも学校から指示があるのか・・・あるいはどちらもか。どちらにせよ、あの個性を持つ彼女を学校側が気にかけないというのは難しい話だ。
「・・・・・」
「おかえりなさい」
「おかえり、焦凍くん」
「なんで、新零がうちにいるんだ」
「スーパーで冬美さんに偶然会ったの」
「そうなの、お夕飯1人っていうから一緒にどうかなって誘ったの。2人とも仲良くしてるって聞いたからいいかなって」
「別にいいけど」
「けど、なぁに」
「そういうのは、先に連絡くれ」
「そう?わかった。じゃぁ次からそうするね」
先に台所に戻っていった姉の方を振り返っていた新零が、「そういえば焦凍くんの連絡先知らないや」とポケットからスマホを出して、俺に向けるので、玄関を上がって連絡先を交換した。普通科の土曜日は午前で終わりだったなと彼女の私服を見て思った。
制服から着替えて台所を覗けば、姉の手伝いをしている新零がいた。最近は新零の話をするのは俺ばかりで、姉は会っていなかったのだろう。積もる話もあるのか途切れない楽しそうな会話に、その場を離れた。
「あ、気づいた?」
「それ、新零ちゃんが作ったのよ。うちとは味付けが少し違うから気づくかなって」
「うまいな」
「お口に合って良かった」
新零を褒めちぎる姉にたじたじになっているものの、嬉しそうにしているので特に止めることもなく、いつもより少しだけ賑やかな夕食になった。男兄弟ばかり故に、新零は妹のような存在なのかもしれない。
「ごめんね、送ってもらっちゃって」
「別にいい、むしろ1人で帰らせる方が不安だろ」
「ありがと。最近、いっそう物騒になっちゃったね」
「そうだな」
「あんまり無茶しないでね。1-Aって怪我人多いって聞いたよ」
「ほとんど緑谷だろ」
「緑谷?」
「2回戦の対戦相手」
「あぁ、あの子。あの子が緑谷くん」
「今度会ったら紹介する」
「仲いいんだ」
「あぁ」
「・・・でも、怪我は良くないよ」
「・・・・」
「よくない」
「あ、あぁ・・・そうだな」
「私も癒し系の個性だったらいいのに」
「・・・・」
「そんなこと言っても、天からの授かりものだから、そんな風に言っちゃ駄目だよね」
「天からの授かりもの?」
「うちでは個性は、そうやって聞いてるよ?」
「・・・・・・」
「あ、疑ってる」
「知ってるだろ、俺が複合型なの」
「知ってるけど、それだって焦凍くんの個性でしょ」
「・・・・・・」
「うちは、みんな関係性のない個性ばっかりだから、血縁とか遺伝と無縁なの」
「・・・そんなこともあるんだな」
「うちが特別なのかもね・・・どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
「?」
俺の方を見上げて、ふんわりと笑った新零に少しつられた。神社の階段下で、ここまででいいという新零に無理やりついて家の前まで送り届けた。この階段を話しながら登っても息を切らさない彼女に驚いた、慣れというものは恐ろしいものだ。