3 「お嬢さん、あそこで踊ってるの王子とニーナ嬢じゃない?」 「え?あ、本当だ」 「流石だねぇ」 「うん・・・綺麗」 「まぁ、そういうのを小さいときから叩き込まれてるんだろうね」 「私ももっと練習しないと」 「ははっ、そうだね。そうだ、さっきサカキさんに聞いたんだけどさ」 「サカキさんに?」 「そう。そしたらさ、やっぱりニーナ嬢は、ラジ王子の妃候補みたいだよ。本人も知ってるし、王子もそれは知ってるみたい。後は、当人次第。ニーナ嬢が妃なら、誰も文句言わないだろうし、言えないだろうってさ」 「・・・・」 「ニーナ嬢が来てからの王子の成長もすごいみたいだよ。それに把握しきれないくらい仲がいいってさ」 「うん、さっきニーナと話していた時に、たまに王子のことを名前で呼んでた。それに、すごくお似合いだと思う」 「お互い満更でもなさそうだったし、これは決まりかもねぇ」 「あ、でも喧嘩も多いみたい」と付け足したオビは、柵にもたれかかって口角を上げた。 ・・・・・・・ 挨拶も一通り終えてグラスを片手に壁際で息をついた。初めて会う方も多く、楽しさもあるが疲れも倍にかかる。1曲踊った際は、まだ途中だと言っていたがラジ王子の方は無事に終わったのだろうか? 人一倍向けられる視線には慣れたが、クラリネスでも変わらないのだなぁと休憩中のため、人とは目を合わせないように少し伏せていた。視界に入るドレスは、彼が選んだものだ。彼の髪や瞳、衣装に合わせたドレスなんて烏滸がましいからと避けていたのに、彼はわざわざこのドレスを選んだ。意味があるのかはわからない。・・・はっきりとした言葉はもらったことがない。側近として仕えていたが、この数か月のうちに側近の言葉で片付けられないほどに親しくなってしまった。妃候補の自分がそうすることが、あまり良くないことだとは分かっているつもりだった。場をわきまえるべきだった。そんなことはわかっている。 お互いそんなことはわかっている ラジ王子が私を側近とした時、その意味はなかった。私も、初めこそわからなかったが、その意味がないことは理解した。 でも友人というには、私と白雪とでは違うものが多すぎた。常にまとわりついた妃候補というレッテルは私をラジ王子の友人にしてくれなかった。ラジ王子と私の間には友人という言葉が不似合いすぎるのはなぜだろう。そんなことを思っていると、目の前で足音が止まった。 「どうかしたのか?」 「何でもない、少し休憩していただけ」 「そうか?思いつめているように見えたが」 「そんなことない。そうだ、さっき、イザナ陛下にきっちりクラリネスへって話はお断りしたわ」 「諦めてくれたのか?」 「嫌になったら、いつでも歓迎してくれるって」 「・・・・」 「前にも言った通り、私はタンバルンが好きなの。遊びに行くことはあるけど長居するつもりはないわ」 「あぁ」 「ラジ王子は挨拶終わりました?」 「うむ。おかげで疲れた・・・そろそろ座りたい」 「白雪が上にいたから、そこなら座れるかも」 「そうか。ニーナの方はどうなんだ?」 「ラジ王子と分かれてからも、色々な方と話をしていたけど、とても興味深かったわ。だから、もう少しここに残りたい」 「わかった。なら私は先に休むからな」 「うん」 「ニーナ」 「ん?」 「綺麗だ」 「・・・今更ですね」 「さっきは白雪どのがいたからな」 「ご友人なんでしょう?」 「だとしてもだ」 「ふふっ、そうですか。ありがとうございます。」 「うむ、では先に行くが、遅くならないうちに戻れ」 「はい、ラジ王子」 ←→ 目次 |