【佐久間視点】
珍しく部活のない休日。特にする事もなくその辺をぶらつく。
「暇だな…」
特にすることがない。こういうとき、何かこう…刺激的な、
「佐久間先輩!」
そう、鬱陶しいくらいに名前を呼んでくるアイツだとか。
「……あ、」
後ろを振り向けば見飽きた顔。何時の間にやってきたのかやたら嬉しそうに笑う。
「佐久間先輩、奇遇ですね!」
ああ、刺激的がどうとか思ったのが間違いだった。タイミングが良いのか悪いのか、現れたのは桜庭だった。
「なんで休日にまで顔合わせなきゃならないんだよ帰れ」
「やだ辛辣。まあ買うもの買ったので帰るところではあるんですけど」
そう話す桜庭の手元を見れば丁度ここの近所にあるコンビニの袋。
「…それ、」
俺はその袋を指さす。
「……コンビニのお弁当…です…」
不自然なくらいに視線を逸らされる。けれど直ぐにばっとこちらを見る。
「や、今日はたまたまなんです!今日は時間ないからいいかなって!これでも家事は一通りできるんですよ、先輩!」
焦ってわめくように声を上げる桜庭には普段に比べて少し珍しい姿だな、なんて思う。
俺はふと考える。
「桜庭、お前の家に食材あるか?」
「え、昨日使いきっちゃったのでお米くらい…?」
「じゃあ、なんか買いに行くぞ」
「へっ?」
桜庭が間抜けな声を出す。
「な、なぜ……?」
「今暇だからな。たまには後輩なお前に何か作ってやるよ」
同情からなのか、それとも他の何かか。きっと普段であったらありえないだろうけれど、そんな事を口走ってしまった。
「本当ですかっ!?」
そんな言葉に桜庭は顔を綻ばせる。相変わらず、こんな些細な事で一挙一動を見せる単純なやつ。
「わあ、じゃあ早速行きましょ!」
桜庭は俺の手をぐいぐいと引く。いつもだったら多分この手を振り払っただろうけど、そうしなかったのは、
「……いや、何でもないよなあ」
今の自分には知り得ないことだろう。